降る雨の色は
彼女が見た先を、僕も見る。
さっきまでそこには小さくなったフォマルティアがあった。
今は、鉛色の何かで埋め尽くされていた。
どうやら僕は視力も異様によくなっていたらしい。
その鉛色の何かのひとつひとつの形状、質量、軌道までもが手に取るようにわかる。
どう考えても街の外――すなわち人類の勢力圏内――から放たれていて、しかもそのほとんどが僕らのいる地点を狙っていた。
「ね?」
ナクアは絶望するどころか、むしろ楽しそうに僕の顔を覗き込む。
「な、ななな…………」
僕は動揺のあまり、まともな返事すら返せない状態だ。
「こっち」
ナクアが僕の手を掴む。
そして、彼女に手を引かれるまま、僕は裏路地へと入り込む。
弾着、そして爆発。
さっきの仮面集団の弾幕がお遊びのように思える威力だった。
僕らが隠れ蓑に使う建物と言う建物すべてが破壊され、しかも、その攻撃は当分休まりそうもない。
「これでも弱い方だよ」
唖然とする僕を諭すように、彼女は事実を突き付ける。
あまり知りたくない事実だった。
▼
人類側の陣営では、街全体の生体反応がレーダーで監視されていた。
「エリートの動きは?」
「おおむね予想通りの動きですが……マズイですよ。変わり種の方が接近をはじめてます」
「合流されると厄介だねえ。どうされます、参謀殿?」
まるで「その時は責任取りたまえよ、キミ」とでも言いたげなイントネーションで、この参謀殿に訊ねるのはこの隊の副隊長だ。
「作戦続行だ。砲撃継続。エリートは無視、変わり種を叩け。アレが無くなるだけでも後は随分楽になる」
彼は終始落ち着いた口調で、参謀として、隊長として、指示を飛ばす。
この小説の1話分、少し短いかも。とか思い始めました。
増やした方がいいのでしょうか?