踊る人形の群れ
飛びかかったナクアに対する仮面連中の対応は早かった。
統率のとれた動きで、火線をナクアの華奢な体に集中させる。
《呼び出しを確認。Gr‐T通常起動》
しかし、彼女の力はそれの遥か上を行っていた。
弾が放たれる直前、ナクアが立ち止ると同時、彼女の手が鋼鉄のグローブに覆われる。
弾着直前に、彼女が右腕を突きだす。
――――そこからは何が起きたか、認識できなかった。
強烈な風と、大量の砂埃が舞い上げられたことは理解できたが、それだけだ。
砂煙が収まった時、僕は結果だけを知る。
弾丸、砲弾は彼女にただの1発も命中しておらず、仮面の連中は消え失せていた。
そして、何かの衝撃にやられたのか、僕から見て、ナクアから向こう、道路は弓なりに陥没し、道路両脇のビルはあり得ない形にひしゃげていた。
――――およそ、人間業とは思えなかった……。
「分かってもらえた?」
「う…………うん」
彼女が何をしていたのか、それはとても単純だった。
彼女は戦っていたのだ。自分の同類と。
「君は……人類を守るために、戦ってるんだね……」
「え…………?」
僕がそう言うと、彼女は大層意外そうな顔をした。
まるで、「どうして人類なんかを守らなきゃいけないのか」とでも言い出しそうな表情だ。
「違うよ、人類のためじゃない。ただの私怨」
彼女は自嘲気味に言う。
「自分はそんな高尚な人間じゃない」とでも言いたげに。
「ただ、フォマルティアの思い通りにさせたくないだけ。アレの邪魔をしたいだけ。それにね…………」
ナクアは突然、空を仰ぎ見て、言葉を続ける。
「人類が、私に友好的だなんて言った覚え、無いよ?」
ナクアさんのキャラがいまひとつ定まらない今日この頃。