比翼
「ナクア!」
「レイト!」
どちらからともなく抱き合い、無事を確認する。
「早いところ脱出しよう。収穫は?」
「上々。レイトが引きつけてくれたおかげ」
札束を見せびらかしてくれるナクア。
確かにこれだけあれば当面の生活には困らないだろう。
「古着も充分に確保したし、大丈夫だね」
後は退路を切り開くのみ。
空を見上げれば、第2派と思われる砲弾の数々が……。
「もう、しつこいっ! こんなの何発撃ったって、きかないんだから!」
ナクアがGr‐Tを振るう。
それだけで宙を泳ぐ砲弾はすべて爆散した。
――――何か、違和感がある。
Gr‐Tの威力が高いことは充分承知しているが、これほどの威力が出るものだっただろうか?
こんな砲弾ごときに高出力駆動を使うとは考えづらい。
思えば、初めて会った時も、ナクアのGr‐Tはビルを湾曲させるほどの威力を誇っていた。
ひとつふたつのレベルじゃない――その程度なら僕にも余裕でできる――大通りに沿っていた大量のビルを、通常稼働状態で、だ。
ナクアは……何かが違う?
違うとしたら、何が違う?
違わないとしたら、どうして違わない?
「いこ、レイト」
ナクアが僕の手を引く。
体だけが反射的にそれに従って、彼女の背中を追う。
「退避機の場所までの敵は? 大丈夫?」
彼女が急に振り返って、質問を飛ばしてくる。
僕は咄嗟に対応できずに情報素子の入力ミスを繰り返してしまう。
くそ―――と胸の中で悪態をつく。
「レイト? 敵は?」
再びナクアが振り返った時、僕の目は捉えた。
――――敵の姿を。
おそらく、生体反応を感知して、待ち伏せしていたのだろう。
僕らが気づかないかもしれない。――――そんなわずかな可能性に賭けて。
そして、その目論見は見事に成功していた。
携行型電磁波砲から打ち出された砲弾は疾走していたナクアの胸部に命中し、砕ける。
強烈な衝撃でナクアが後方に吹き飛ばされた。
ナクアと手を繋いでいた僕も、引っぱられ、バランスを崩して倒れる。
僕は状況を確認する。
砲弾程度でどうにかなるナクアではないが、今のはかなりの痛打だったはずだ。
不意打ちの直撃だったのだから。
事実、彼女はすぐに立ち上がったものの、もう一撃をGr‐T無しの掌で受ける羽目になった。
しかし、さすがはナクアと言うべきか。
きちんと踏ん張り、さっきのように吹き飛ばされるようなことはない。
それにならうように僕も立ち上がり、ナクアと同様、砲弾を掌で受ける羽目になる。
さほど難しくはなかった。
手の中で金属がひしゃげる慣れない感触と共に、砲弾が無力化される。
「――――消えて」
ナクアがDn‐Sを構える。
迷うことなく落とされた引鉄に呼応し、砲弾が射出される。
Dn‐Sの砲弾は迫りくる携行型電磁波砲の砲弾を全て撃ち落とし、その向こう側のノーマルも1人残らず滅殺して見せた。
「……いこ」
周囲の敵が消えたことを確認してから、ナクアは再び僕の手を取り、駆け出す。
彼女の掌はとても、とても暖かかったが、それと対照的に僕の心の中はドライアイスでも突っ込まれたかのように冷え切っていた。