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世界のだれかが紡いだもの  作者: 新巻鮭
4章・鏡の中身
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夢/現

 なんで、僕は、まだ生きている?

 腹……いや、胸か。

 胴体でいいや、に大穴空けて、何で生きてんだよ…………。


 空を見上げてみる。

 曇った空だ。夕日も沈みかけて、立派な闇色に染まっている。


 貧相な風景だ――――。


 貧相ではあるが、どこかで見たことがあるような気がする。

 ひどく懐かしい感じがした。


 バカなことを考えているな、と思う。

 記憶を失う前の時間はそれこそ10何年とあるのだ。

 空を見上げた記憶も1度や2度ではないに決まっている。


 だが、この空模様は、何か特別な意味を持っていたような…………そんな気がする。


 それが何なのかは思い出せず、思い出す必要もないであろうことは分かる。

 けれど、思い出したいと思える、不思議な魅力があった。


 ――――思い出そうか?

 そう思うものの、思い出し方が分かるはずなどない。

 早々に諦めてしまう。


 戦況はどうなっているだろう?

 ナクアが負けるとは思えないけど、彼女の手助けをしなければ。


 情報素子のディスプレイを展開。

 周囲の生体情報を検索する。


 うぇ…………たくさんいる。


 こちらは左腕が無く、支給品もまともに作動するのはDn‐Tくらいのものだ。

 ああ、あとZs‐Iも動くな。


 装甲服の仕込みはほとんど使い切ってしまった。

 さてどうしたものか……。


 せめて、左腕くらいはまともにあればなあ…………。

 僕は元あった傷の無い腕をイメージしてみた。


()()を確認。S/N:000014580の復元開始》


 ――――ッ!?


 体から力が抜けた。

 いや――――違う。僕が、身体を動かせなくなった……?

 身体を動かせなくなっている僕を僕とするなら、カギカッコつきの『僕』が身体を奪い取った。そんな感じ。憑依された、という表現が正しいかもしれない。


 胸から何かが引きずり出される感触。

 いや、引きずり出されてるんじゃない、僕が()()()んだ。

 筆舌に尽くしがたい強烈な痛みに意識が飛びそうになるが、忌々しいことにエリートの強靭な体はこれほどの痛みにも一瞬で慣れてみせた。


 そして、引き抜いた瞬間、僕は視界をよぎる一瞬だけ、『それ』を見た。

 やはり、透明な刃だ。

 透明ではあったが、血にまみれたおかげで視認が可能だ。

 形状はナイフのようであったが、大きさが半端じゃなく大きい。

 大形のサバイバルナイフよりも大きいだろう。

 どうやって投擲してきたのかは分からなかったが、なるほどこんなものが刺されば痛いだろう。


 分析をしている間にとめどなく流れ出していた血は止まっていた。

 ()で触って確かめても、血こそ残っているものの、傷口らしいものは全く残っておらず、痛みもない。


「…………あれ、左手?」


 いつの間にか自分の身体が動くようになって、左腕まで再生していることに気づく。

 全身血まみれなのを除けば、身体機能は完全に正常だ。


 ――――エリートの機能のひとつ、なのかな?


 これほどの再生能力があるなら、脳でも潰されない限りはまず死なないだろう。


 しかし…………ナクアと合流するために無数のノーマルを限界ギリギリのGr‐TとDn‐Tで踏み越えなきゃならない。あまり思わしくない状況だ。


 跳躍してしまえばすぐだが、再生したばかりの身体にあまり負荷はかけたくない。

 何か装備が欲しい。

 そう、目的地まで安全かつスピーディにたどり着ける…………。


「あ、いいの見っけ」

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