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世界のだれかが紡いだもの  作者: 新巻鮭
4章・鏡の中身
43/54

鏡面

「…………こんなものか」


 とても簡単だった。とスレーヴァは思った。

 エリートと言っても、コイツは人間と何も変わらなかった。


 固有兵装の一発でさえ、受け止められなかった。

 ほぼ万全な状態であったにもかかわらず、だ。

 ――――弱い、弱すぎる。


 Gr‐Tで、頭蓋を握り潰し、とどめをさす。

 くだらない時間だった。とスレーヴァは思った。


 こんなくだらない時間は、いつまで続くのだろう。

 戯れに神を呪ってみる。返答などあるはずがない。

 まったくだしぬけに、ある人間がこんなことを言っていたのを思い出した。


 ――――いつか天罰が下るぞ。


 天罰が何なのか、スレーヴァは知っている。

 だが、いまだかつてそれらしい出来事に遭遇したことは無い。


 ――――天罰とやらを見せてくれよ。


 神がスレーヴァの願いを聞き届けたのか、はたまた、ただの偶然か。

 スレーヴァの正面に誰かが立っていた。

 しかも、顔が自分と瓜二つの。


「…………へえ」


 神様も粋な計らいをするものだ。とスレーヴァは冗談混じりに思う。

 事前の顔合わせの際、あんなそっくりのエリートを見かけた記憶は無い。


 つまるところ―――――。


「お前は敵だな」


 スレーヴァは展開したままのGr‐Tで軽く空を殴りつけた。

 人間ならひき肉になるぐらいの出力だ。


「何すんだ……よっ!」


 しかし、その者はひき肉になるどころか、元気に反撃までしてきていた。


 飛来する弾丸をとっさに躱すスレーヴァ。

 着弾地点が爆発。爆風に煽られ、思わずのけぞる。


 そこへすかさず次弾が叩き込まれる。


 Gr‐Tで防ぐ。

 ここにきてスレーヴァは思い至る。


「…………お前、エリートだな!」


 今射かけてきたのはDn‐Sに違いない、とスレーヴァは判断する。


「ああ、そうだ。僕は、お前を殺すエリートだ」


 真っ向からの抹殺宣言。

 スレーヴァは実感する。敵だ。

 ()する。()()べき。敵だ。


 くっくっく、とスレーヴァは笑う。

 今さっきの裏切り者などとは比べ物にならない。

 面白い。面白すぎる。


 スレーヴァは乾ききった喉に、水がしみこむような、そんな気分になる。

 自分の渇望してやまなかったもの。

 退屈を吹き飛ばすものは、今目の前にある。


 スレーヴァは実感する。

 人間が戦いを止めない理由を。曲解して、理解した。

 ああ、戦う前からのこの昂揚感。

 これで戦い始めたら、どんな心地がするのだろう。


 ――――神様、アンタサイコーだ!


 これが天罰? いや、天の恵み、干天の慈雨だった。


 世界広しと言えど、自分とそっくりな者を殺すものはそうはいまい。

『自分とそっくりな者を殺そうとする者』を殺そうと思う者もそうはいるまい。


 かつてない昂揚感を噛みしめながら、スレーヴァは()へと、身を投じた。

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