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世界のだれかが紡いだもの  作者: 新巻鮭
4章・鏡の中身
41/54

私は味方、彼は敵、敵は敵

 スレーヴァは、解せなかった。

 進化した者であるはずの、あまつさえエリートが自分たちに反旗を翻すことに。


 人類を殺すことに、何の疑問点があるのか、彼には理解できなかった。

 人類を殺し尽くし、進化した者のみで治められる世界を作る。

 そのことへの疑問が、齟齬が、なぜ生じたのか。


 スレーヴァは考えた。

 彼は、『教育』が不完全だったのではないか、と。

 何らかの手違いで知識が充分に入れられていなかったから、このようになっているのではないか、と。


「『排除』が必要だな」


 捕獲し、送還し、再教育するのは手間がかかる。

『排除』がスレーヴァの中で採用された。


 だが今彼の手にRp-Tは無い。

 今頃、地中奥深くに潜航していることだろう。

 回収は困難。使用限界を待って自動回収を待つしかない。


 100万℃の刃を持つRp-Tは事実上最強の支給品。

 ドロドロと溶けてゆく暇などなく、どんなものでも一瞬で断ち切ってしまう。

 もっとも、100万℃でも固体状態を保っていられるこの刃と言う唯一の矛盾はあるが…………。


 どのような技術で成し遂げられているかは、スレーヴァの興味の外だった。


 今の彼の興味は、目の前の、先ほどまで自分の仲間だった男。

 ただそれだけに向けられていた。


 彼の手はRp‐Tを執っていた。

 接近戦になればスレーヴァが不利なのは、火を見るより明らかだ。


「…………そうとも限らないか」


 思わず漏れた呟きは、誰の耳に届くことも無く、霧散した。

 呟き終えると、スレーヴァは一歩踏み出した。

 前へ、敵へ。

 探るように、試すように。


 敵は、迷いのためにスレーヴァを排除しようとしていた。

 迷いこそが、彼の信念だ。

 それが晴れることが無ければ、彼に真の信念は持てない。


 ――――自分は違う。

 スレーヴァはそう考えていた。

 自分は、確たる理念、確たる大義を持っていた。


 スレーヴァはこのような精神論は好きではなかったが、実力がほぼ同等なのであれば、後はコンディションだと考えていた。

 迷いは、コンディションを低下させる。

 彼は迷っている。自分は迷っていない。

 この考えが確かなら、排除されるのは自分ではない。


《Rp‐T使用限界到達。強制武装解除》


 Rp‐Tが戻ってくる。

 だが、スレーヴァはすぐに展開するわけにはいかなかった。

 使用限界に到達した支給品をすぐに再展開しても、満足な性能が発揮できないからだ。

 それに、彼は、仮に使える状態まで回復していたとしても、Rp‐Tを使うつもりはなかった。


()()を確認。固有兵装―――――を起動、限界稼働時間まで――》


 これは手加減をするつもりであるということを意味しない。

 あくまで彼は本気であった。


 相手が動いたことを、スレーヴァは確認する。

 Rp‐Tを正眼に構え、ゆっくりと一歩を踏み出してくる。

 その余裕ある動作は、排除と言うより、決闘を意識したものであった。

 愚かしい、とスレーヴァは思う。


 ここにきて遅れた者たちの真似事か、と。

 ()を望むのか、と。


 スレーヴァは失望を隠せなかった。

 付き合う気はもとより無い。


 スレーヴァは()()に取り掛かった。

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