誰が敵で誰が敵で誰が敵?
自分はなぜ戦っているのか?
そんな疑問を持ったことはなかった。
そもそも、戦っている、という認識自体が、自分には無かった。
人類を殺す。
それが至上命題であり、邪魔するものは排除していた。
ただそれだけだ。
だから、今しがた殺した人間――機動装甲のコクピットから引きずり出して頭から落とした――が言っていた言葉も理解できなかった。
――――なぜ、戦う!?
彼はこう言っていた。
分からなかった。自分は邪魔をどかし、人間を殺そうとしただけだ。
それだけで、なぜ戦っていると言われなければならない?
知っている。知識としてだけだが。
『戦い』・『戦争』は人類のもっとも愚かしい行動のひとつだと。
しかし、自分たちは『進化した存在』だ。人類とは違う。
だから、自分が戦うことはありえない。
だから、自分が戦っているとは、思っていない。
自分はただ殺すだけ。
では、自分はなぜ殺すのか?
殺して、何をなすんだ?
「なぜ、殺した?」
さっき殺した男が、フラッシュバックして自分を責め立てた。
なぜそんなことが起こるのか、理解できなかった。
「なあ、スレーヴァ」
理解に苦しんだ自分は、隣にいる男――スレーヴァと言う、エリート。自分もエリートではあるが――に訊ねることにした。
「俺たち、何で人類殺してるんだっけ?」
次の瞬間、自分の首が胴から離れた。
「はへ?」
首を切り離された程度で、エリートは死なない。
脳さえ生きていれば――厳密には違うものの――再生が可能だった。
「下らん質問をするな、潰すぞ」
通常起動状態のRp‐Tをもぎたての生首に突き付けられる。
鼻先の感覚が無くなった。蒸発したのだろう。
この時になってようやく気づいた。
自分はRp‐Tで首を切られたのだと。
急いで身体を再生させる。
「人類を滅亡させることが、我ら進化した者の使命。そう、使命だ」
スレーヴァは自分の再生を見届けてもなお、Rp‐Tを突き付けていた。
「その使命に疑問を抱くのか?」
自分はいま、言い知れぬ不安に襲われていることを認めた。
レールはある。目的地へと一直線に向かうレールだ。
ただ、その目的地を示す、標識の文字だけが、どうしようもなく不鮮明だった。
このレールは、明るい未来へ続いているのか?
途中で途切れていたり、暗黒時代へと続いていたりはしないだろうか?
目的地への方角は定められて、それに抗えないことも分かっている。
けれど、その方角が正しいものと、信じきることができなかった。
それは大海のただ中で、波に揺られながらどこへともなく流されているような気分に似ていた。
自分は耐えられなかった。
だから…………。
「俺は、俺が今やってることが正しいかどうか確かめたい」
「へえ? どうやって?」
スレーヴァの声の調子は露骨に嘲りを含んでいた。
だから俺は、逆に自信満々な調子で応えてやる。
「…………お前を殺してみようと思う」
Gr‐TがスレーヴァのRp‐Tを弾き飛ばした。
すみません。
中途半端なところではありますが、更新一旦止めます。
再開は未定となりますが、ご理解のほど、よろしくお願いします。