二人三脚の相手
「レイト! レイトレイトレイトレイトレイトー!」
ナクアは着地するなり、破顔一笑。僕に抱きついてくる。
その表情は、これでもかと言うくらい喜びの感情で構成されていた。
「レイトだ……」
僕の胸に顔をうずめて、すっかりご満悦なナクア。
頼りにされるのは悪い気はしない――――が。
「あの、ちょっと、人来るかも」
もし誰かに見られたらあんまり気分の良いモノじゃない。
いっそのこと、こういう社会常識は記憶と一緒に消えてしまってたら面倒無いのになあ…………。
「んー」
そして、ナクアは当分離れてくれそうにない。
天国と地獄を両方味わう。
いつぞやの夜の出来事を思い出していた。
精神ダメージの性質は違うけど。
数分間にわたる、拷問もどきから解放されてから、ナクアに切り出す。
「…………帰ろっか」
「うん」
特に何もしてないはずなのに、相当疲れつつ帰路につくことになった。
話したいことは山ほどあるけれど、落ち着ける場所――要は家だけど――に着いてから話すことにした。
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「それじゃ、まず僕から話した方がいいかな」
ナクアの足取りは大体予想できるし。
と、言うワケで、事のあらましを説明した。
負けたこと。
友達に拾われたこと。
リアのこと。
リアのことを耳にした時のナクアの驚きようはなかなかのものだった。
「レイト、友達できてたんだ…………」って。
いや、確かに記憶も無くしてからそんなに日は経ってないし、僕も友達できなさそうなのかもだけど。
だからって、その反応はどうかと思いますよ?
「ナクアの方は?」
訊ねて、返ってきた答えは、おおむね予想通りのものだった。
情報素子からの信号が途絶えたこと。
例のエリートを倒したこと。
僕を探していたこと。
「本当に、よかった…………」
ナクアのサファイアのような瞳に、涙が蓄えられてるのが見えた。
僕の手は無意識のうちに、彼女を抱き寄せ、その頭をそっと撫でていた。
「――――いいものだね。運命共同体って」
「そうだね」
でも、ともだちには、普通キスとかしないような気がするよ。