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世界のだれかが紡いだもの  作者: 新巻鮭
3章・底無し沼の中の片足
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破壊者

 ナクアは対峙した。

 レイトを吹き飛ばした相手に。


「レイトをどうしたの?」


 知っているが、一応訊ねてやる。

 さあ答えろ。答えた瞬間からお前の死への転落劇が始まる。


「俺が《()()を確認。Gr‐T高出力状態で起動》


 回答の全容を聞き取る必要も、義理もない。

 衝撃力場を叩きつける。

 遠慮容赦なし、全力のGr‐T高出力起動だ。


 予想通り、放物線と言わず一直線に吹っ飛ぶ敵。

 ビルを打ち貫き、打ち貫き、破壊し、家屋を倒壊させ、粉砕し、それでもなお勢いは衰えない。


 だが私は知っている。この程度でエリートは死んだりしない。


()()を確認。Dn‐S高出力状態で起動》


 私はまず自分に衝撃力場をぶつけ、一気に加速、先ほどエリートが通った経路で追いすがる。

 いかにエリートと言えど、自分の認識できる領域にとらえなければ、攻撃は不可能だからだ。


 そして今、とらえた。


 無数の建物、その名残である瓦礫の山を豪奢な敷物にしていたエリートは、彼女の眼前で、砂埃を払いながら今、立ち上がろうとしていた。

 のんきなことだ、とナクアは思う。


 人類を相手にし続けたエリートによくある傾向だ。

 自分が一番強いと勘違いし、無意識に動きに無駄を取り入れてしまう。


 ――――何でこんなのに、レイトが負けなきゃいけないの!?


 恐らく、固有武装を使ったのだろう。

 なるほど固有武装を持たないレイトにしてみれば、脅威以外の何者でもない。

 だが、発動しなければ、どんなに強力でも、武装はただの装飾でしかない。


 そのことを教え忘れていた。

 エリートには、一気に畳み掛け、攻撃の隙も与えず、倒すのがセオリーだ。と。


 おそらく、そのことを知らないレイトは、自分が到着するまでの持久戦と考えていたのだろう。


 すなわち、レイトが負けたのは自分のせいだ。

 レイトを探して、謝らなければならない。

 そのためにも早く、早く目の前の敵を倒さなければならない。


 ナクアは自分の腕に力場をかけた。

 Dn‐Sの長い銃身の先端、銃口がエリートの鼻っ面を殴りつけた。


 ナクアはそのまま前のめりに倒れ込み、エリートを押し倒し、下敷きにする。

 彼女が持つ運動エネルギーは凄まじく、そのままの勢いで2人は滑り続ける。

 下にされたエリートの背中側、装甲服と地面が摩擦で火花を上げているのが、ナクアの目に映った。


 だが、エリートは腐ってもエリートだ。


 ナクアの目に、エリートがGr‐Tを展開するのが見えた。

 力場で吹き飛ばすなり、捻り潰すなり、痛打を与えることをあきらめていないのだろう。


 しかし、ナクアは思う。

 ――――すでに勝負はついている。と。


 Dn‐Sの銃口は、エリートの頭部を正確にとらえている。

 ゼロ距離。外すはずがない。


 こんな形での機関砲の使用は、どんな軍事教本にも書いていないことだろう。

 だが、銃口の前に敵がいるとき、引鉄を引くのに躊躇はしない。

 それが、ナクアと言う人間だった。


 高出力状態のDn‐Sから放たれた砲弾は、エリートの強靭な皮膚を突き破り、頭蓋を破壊し、爆発した。


 脳漿が飛び散り、濃厚な死の臭いが立ち込める。


 脳と血の入り混じった赤線を路面に残しつつ、しばらくして、2人は止まった。


 ――――レイト、レイトを迎えに行かないと。


 正面の死体に目もくれず、彼女はおぼつかない足取りで立ち上がり、歩きだした。

 自分のたった1人のパートナーを探すために…………。

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