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世界のだれかが紡いだもの  作者: 新巻鮭
3章・底無し沼の中の片足
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予習授業復習試験

 君がその手に持つものは何?

 君がその手に執りたいものは何?

 君がその手でしたいことは何?

 君がその手で捨てたものは何?




「1週間前戦ってたところ、もう帰り始めてる人がいるみたいだね」


 僕は情報素子で得たニュースの内容をかいつまんで読み上げる。


「そろそろ来るよ」


「え?」


「フォマルティアの侵攻。今日の夕方くらいかな」


 それを聞き、僕の背筋に緊張が走る。


「どこに?」


「それが分かれば苦労しないよ。だけど、この国の中……だと思う」


 それはつまり、前回の報復、と言ったところだろうか。


「規模は推測できそう?」


「少なくとも、前回よりは多いと思う。エリートも投入されるはず」


 僕はまだ、戦闘経験も浅い。

 エリートと相対して、勝てる自信は無い。


「でも大丈夫だよ。今回から2人だから」


 …………そうだ。僕にはナクアがいる。ナクアには僕がいる。

 勝てる自信は無くとも、負ける心配なんて無い。


「その前に、支給品の内容、一通り確認しておかなきゃね」


 午前は支給品の確認、及びその運用思想の講義に充てられることになった。


 ただ、人目につかないよう、支給品の起動も室内で行わなければならないのだけれど。


「Gr‐TとDn‐Sはいいよね」


「うん」


 あれの出し方は、もう充分に分かった。


「じゃ、今度は、スナイパーライフルをイメージしてみて」


 言われるまま、僕は想像してみた。

 スナイパーライフル――――スナイパーライフル……。


「…………うまくいかないや」


 前は、「何でもいい」って言われた後、すんなりできたのになあ…………。

 今回条件まで付いて何でできないかなあ?


「じゃ、見本見せるね」


()()を確認。Dn‐Tディント機能制限状態で起動》


 瞬間的に、ナクアの手に握られる対物狙撃銃。

 僕がイメージしてたのとは全然違うデザインだ。

 僕が想像してたのは、ここまで大型ではなかった。

 そもそも、ナクアの話で僕が想像してたのは、対人サイズの代物で、こんな戦車だろうと機動装甲だろうとぶち貫けそうな化け物サイズの銃じゃなかった。

 呼び出せなかったのも頷ける。


「出せる?」


「やるだけやってみるよ」


 ナクアのDn‐Tが掻き消えたことを確認してから、僕は右手を突出し、イメージする。


 ――――対物狙撃銃、対物狙撃銃、対物狙撃銃…………。


()()を確認。Dn‐T通常起動》


 よかった、大丈夫だ。

 組み上がったDn‐Tを眺め、僕は安堵のため息を漏らしてから、この場から送り返す。


「うん、いい感じだね。じゃあ、次に近接兵装の説明をしたいんだけど…………その前に、『機能制限状態』を使えるようになってほしいかも」


「何それ?」


 文字から察するに、機能を制限するんだろうけど、何か意味あるのかな?


「効果は読んで字のごとくの、機能制限なんだけど、その前に説明しておきたいのが、支給品の『使用限界』」


 …………なんとなく話が読めてきた。

 そして、そこからはおおむね、僕の予想通りの話が展開され始めた。


 まず、支給品には、『使用限界』があり、それを超えての連続使用ができない。

『機能制限状態』では、使用時の負荷が軽減されるため『使用限界』に近づきにくくなる。

 使用時にかかった負荷は使用していない間に修復される。


 彼女の話をまとめるとこんなところだろうか。


「じゃあ、試しにDn‐SかDn‐Tでやってみて」


「……むむむ…………」


()()を確認。Dn‐S機能制限状態で起動》


 よし、できた!

 間違いない。確かな実感がある。


 瞬く間にDn‐Sが組み上がる。


「…………機能制限って言うけど、具体的に何が制限されてるの?」


 率直に言って、気になった。

 Gr‐Tとかなら、威力が下がるんだろうけど、銃器にそんなの関係ないのではなかろうか。


「引鉄引いてみて」


「はい?」


 引鉄引けとおっしゃいましたか?

 いやいや、室内でぶっ放すのはマズイよ?


「いいから」


「う、うん」


 促されるまま、僕はためらいつつも引鉄を落とした。


「…………。……………………?」


 何も起きない。

 引きが足りなかったかな?


 もう一度引いてみる。

 今度はしっかり、深く。


「…………。………………何も起きないね」


 彼女が「引鉄引け」と言った理由が分かった。


「うん、今のDn‐Sは鈍器にしか使えないよ」


 機能制限って言うのは、武装本来の機能が完全に消失している状態らしい。


 とりあえず単なる棒切れと化しているDn‐Sを送還する。


「じゃ、次は、近接兵装だね。見本見せるからやってみて。けど、に通常起動しないで」


 ナクアがこれまでにないほど、『絶対』を強調している。

 何かは分からないけれど、従った方がよさそうだ。


()()を確認。Rp‐Tラプト機能制限状態で起動》


 ナクアの手が剣を執った。

 切っ先が平らになっている、奇妙な剣だ。


「これが『Rp‐T』。通常起動したら刀身が100万℃にまで達するから、ここでは絶対しないで」


 ひゃくまん…………。

 そんなもの、近くにあるだけで死んじゃうよ。常識で考えるなら。


 そもそも、100万℃もあったら、プラズマ化してるだろう、って思っても、フォマルティアのテクノロジーなら何とかなってしまうんだろうなあ、いや、事実なってるみたいだけど。


 とりあえず、僕もナクアに続いて出してみる。


()()を確認。Rp‐T機能制限状態で起動》


 僕の右手が切っ先の無い剣を執る。

 うまくいったことを確認し、安堵を覚える。


「うん、とりあえずここでひと段落だね。お茶でも飲もっか」


 無駄に緊張した数十分間だった…………。

3章突入です。

初っ端から説明ばっかです。

でも、説明しないとややこしくなるのです。

説明されてもややこしいと思いますが。

説明要らずのシナリオが書ける人がうらやましいです。

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