他力本願
「エリート2体の反応、消えました!」
「何!?」
しばらく不自然な動きをしていたが、ここにきて突然消滅とは……。
「落ち着け。大方、退避機か何か使っただけだろう」
そうだ。
相手は知性を持った者たちだ。ただの動物とはワケが違う。
「つまり、もうエリートの心配はしなくていいってことかな?」
「いや、警戒は続けろ。援軍が到着した時点で勝負をかける」
だが彼にも分かっているだろう。
万に一つの可能性で彼らが留まっていたとしても、無視すればいいだけだ、と。
少なくとも、あのエリートは敵ではないのだから。
他を全滅させても最後に残ったエリート1人に全て食われるという話は珍しくない。
だが、今回はそのエリートが味方側になってくれた。
いや、正確には味方側ではないが、結果として我が方の利益になることをして去って行ったのは間違いない。
久しぶりに勝機ある戦いだな、と思う。
エリートが出てくればそれだけで壊滅的な被害が出る。
今回はそれが無い。それどころか、敵戦力もほとんど残っていない。
圧勝はもう目前だった。
「帰ったら、一杯やろうか」
「ふ、いいだろう、私のおごりだ」
援軍到着まであと4時間を切った。
もう少しで、この街は奪還できる。
日はすでに傾き、美しい夕焼けが全てを赤く、朱く染めていた。
援軍の到着時間を考えると、夜になるまでにこの街を解放はできない。
けれど、明日の夜明け前までに、この街は彼らの手によって解放されるだろう。ほぼ間違いなく。
しかし、と副隊長は思う。奪還したとして、この街はもう、使い物にならないだろう。
機動装甲やエリートが散々暴れ回った後なのだから。
送力線――送電線のようなもの、電気だけではなく、様々なエネルギーを伝達する――も引き直さなければならないだろうし、まず建物の被害が甚大だ。
復興計画は、大変なものになるだろうな。
「ま、僕には関係ないか」
そんなことは政治屋が決めればいい。
兵隊屋には関係ない。
――――そして、この日の夜、制圧地区の敵はすべて駆逐され、我が方の小さな勝利が記録に刻まれた。
これで第1章終わりです。
よくもまあ、ここまで続いたものです。
正直、途中で投げ出してると思ってました。マジで。
この先しばらくは、ラノベお約束なストーリーが展開する予定です。
頑張りますよ。そこそこに。