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世界のだれかが紡いだもの  作者: 新巻鮭
1章・記憶の枷
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香りと臭い

「今日はこんなところかな。帰ろっか」


 気が付くと、Gr‐TもDn‐Sも消え失せていた。

 どうやら、使ってる本人が『必要ない』と考えた時点で消える仕組みらしい。


「レイトも来るよね?」


 ナクアの青い瞳が僕の顔を覗き込む。

 一瞬僕は迷ってしまう。

 つまりこれは……その…………女の子の部屋に泊まり込むってことになるワケで。


「う……うん…………」


 けれど、他に行くアテなんか無い。

 戸惑いつつも、僕は彼女の申し出を受けた。


「でも、どうやって帰るの?」


 それは気になった。

 たぶん、このあたり一帯は、軍隊に包囲されていることだろう。

 人類側が僕らに友好的でない以上、まともに出してもらえるとは考えづらい。


「こうするの」


 彼女は手近にあったマンホールのフタをこじ開けた。

 そして、ためらうことなく中へ飛び込んだ。


「え、ええっ?」


 中からはものすごい臭いが漂ってくる。

 こんな中を平気で進めるのか、彼女は。


「うぅ…………えいっ!」


 意を決して、僕も飛び込んだ。


 …………中に入ってしまうと、一転、臭いが消え去った。


「遅かったね」


 ナクアが笑みを浮かべつつ、ランタンを掲げ、僕の顔を照らす。


「それは?」


 どこから出したのだろう?


Zs‐Iゼスィ。支給品。明るくするだけじゃなくって、身体に有害なガスを取り除く効果があるの。臭い含めて、ね」


 なるほど、それで臭いが消え去ったんだ。

 僕は自分でもランタンを想像してみる。


呼び出しアクセスを確認。Zs‐I通常起動》


 僕の左手にランタンがどこからともなく出てくる。


「うまいうまい。レイト、才能あるよ」


 また頭を撫でられる。

 嫌じゃないんだけど、何だか気恥ずかしい。


「い、行こっか」


 気恥ずかしさのあまり、僕は彼女よりも前に出てしまう。

 道分かんないのに……。


「そっちじゃないよ。こっち、こっち」


 気づけば、予想通りの失敗をかましてしまっていた。


「これ、これだよ」


 そう言って、彼女が指差すのはケープ状の……退避機かな。


「はい」


 手渡されるけれども、ここには1着しかない。

 このままじゃ2人で帰れない。


「じゃ、もう1着探さないとね」


「ううん、大丈夫」


 ナクアは、僕にケープを着せると、下から自分の頭を突っ込んだ。


「こうすれば、2人一緒に使える」


 胸が異様に膨らんだケープを着た少年が誕生した。


「行き先の座標は設定してあるから、すぐ使えるはずだよ」


 言われるがまま、起動。

 彼女の言った通りだった。すぐに景色が変わる。

 薄汚い下水道から、殺風景な寝室へと、景色が変わる…………。

『かおり』って言ったらいいイメージがありますけど、『におい』って言ったら何だか悪いイメージがありますよね。

いいにおい、とか言うのに。

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