電撃雷撃砲撃思考
僕が引鉄を落とすと同時、待っていましたと言わんばかりに、猛烈な速度で弾丸が装填されてゆく。
装填される端から、銃口へと誘導され、吐き出される。
電磁式のこの機関銃は発射音はほとんど無いに等しい。
装填されるたび、ローレンツ力ですっ飛んでゆく、ただそれだけ。
薬莢すら排出されない。
攻撃しているという実感はほとんど残らなかった。
そんな実感の無い状態の僕に無理やり実感を与えたのは、最初に放たれた弾丸だった。
弾丸は瞬く間に眼前の集団――2キロほど先だろうけど――と距離を詰め、着弾した。
それと同時に爆発、それと同時に僕は認識する。
――――これは、機関銃じゃない!
機関『砲』だ。発射されてるのは弾丸じゃなく、砲弾だ。
しかし、僕がいま手にしている武器、そのデザインは間違いなく歩兵の用いる機関銃のそれなのである。
驚きで僕は引鉄を戻した。
装弾システムがやる気をなくしたように止まり、砲弾の発射も止まる。
しかし、放たれた砲弾が戻ってくることはない。
次々と着弾、火柱が上がる。
何発命中しているのかは、分からない。
けれど、今あそこはこの世の地獄と化しているであろうことは、火柱の大きさから容易に想像できる。
最後に発射された砲弾が着弾するまでしばらくかかった。
そして、火柱、土煙共に消え失せた頃には、何も残っていなかった。
敵の姿も、道路の舗装も――――あるのはぺんぺん草も生えそうにない荒地だ。
「うんうん、いいよ。この調子で全部使いこなせるようになろうね」
僕が唖然とする中、ナクアだけが飛び跳ねそうなくらい喜んでいた。
▼
「変わり種、さらに1体が消滅しました。エリートの方へ向かっていたものです」
副隊長は、報告に驚いた。
エリートが変わり種を攻撃したのは、あくまで裏切り者の排除だと思っていたからだ。
なぜならば、エリートは2人、常識的に考えれば裏切り者は少数の方だ。
だが、報告によると、どうも違うらしい。
裏切っていたのは、変わり種でなく、エリートのようだ。
エリート2人が離反?
可能性としてあり得なくないことは話にも聞いていた。
エリートの中にも裏切り者がいると。
最初にその事態に遭遇したとき、その判断が信じられなかった我が方の指揮官は、その裏切ったエリートを排除しようとしたらしい。
結果は惨憺たるもので、その隊は1人残らず死亡した。脱出できた者はいなかった。データが残っただけだ。
そのエリートは度々戦場に現れては、敵を蹴散らし、帰ってゆく。
露骨に手を出せば、その部隊は残らず平らげられる。
そんな話は、前々から聞いていた。噂レベルで。
それが、このエリートだとすると、話が合わない。
なぜ2人なのだ?
自分の持ちうる思考能力で可能性を羅列してみた。
・噂が誤っていた。
・新たに1人離反した。
・まったく関係の無い2人組。
ここまで考えた時点で、今はそんなことは問題ではないだろう、と思う。
今、彼らはここにいて、我々の利益になることをしてくれている。
それでいいではないか。
手出しされない限り、放っておけばいいではないか。
どうせ彼らへの攻撃指示は無いのだから…………。