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世界のだれかが紡いだもの  作者: 新巻鮭
1章・記憶の枷
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電撃雷撃砲撃思考

 僕が引鉄を落とすと同時、待っていましたと言わんばかりに、猛烈な速度で弾丸が装填されてゆく。

 装填される端から、銃口へと誘導され、吐き出される。


 電磁式のこの機関銃は発射音はほとんど無いに等しい。

 装填されるたび、ローレンツ力ですっ飛んでゆく、ただそれだけ。

 薬莢すら排出されない。

 攻撃しているという実感はほとんど残らなかった。


 そんな実感の無い状態の僕に無理やり実感を与えたのは、最初に放たれた弾丸だった。

 弾丸は瞬く間に眼前の集団――2キロほど先だろうけど――と距離を詰め、着弾した。

 それと同時に爆発、それと同時に僕は認識する。


 ――――これは、機関銃じゃない!

 機関『砲』だ。発射されてるのは()じゃなく、()だ。

 しかし、僕がいま手にしている武器、そのデザインは間違いなく歩兵の用いる機関銃のそれなのである。


 驚きで僕は引鉄を戻した。

 装弾システムがやる気をなくしたように止まり、砲弾の発射も止まる。


 しかし、放たれた砲弾が戻ってくることはない。

 次々と着弾、火柱が上がる。


 何発命中しているのかは、分からない。

 けれど、今あそこはこの世の地獄と化しているであろうことは、火柱の大きさから容易に想像できる。


 最後に発射された砲弾が着弾するまでしばらく(2秒ほど)かかった。

 そして、火柱、土煙共に消え失せた頃には、何も残っていなかった。

 敵の姿も、道路の舗装も――――あるのはぺんぺん草も生えそうにない荒地だ。


「うんうん、いいよ。この調子で全部使いこなせるようになろうね」


 僕が唖然とする中、ナクアだけが飛び跳ねそうなくらい喜んでいた。


   ▼


「変わり種、さらに1体が消滅しました。エリートの方へ向かっていたものです」


 副隊長は、報告に驚いた。

 エリートが変わり種を攻撃したのは、あくまで裏切り者の排除だと思っていたからだ。

 なぜならば、エリートは2人、常識的に考えれば裏切り者は少数の方だ。


 だが、報告によると、どうも違うらしい。

 裏切っていたのは、変わり種でなく、エリートのようだ。


 エリート2人が離反?


 可能性としてあり得なくないことは話にも聞いていた。

 エリートの中にも裏切り者がいると。


 最初にその事態に遭遇したとき、その判断が信じられなかった我が方の指揮官は、その裏切ったエリートを排除しようとしたらしい。

 結果は惨憺たるもので、その隊は1人残らず死亡した。脱出できた者はいなかった。データが残っただけだ。


 そのエリートは度々戦場に現れては、敵を蹴散らし、帰ってゆく。

 露骨に手を出せば、その部隊は残らず平らげられる。

 そんな話は、前々から聞いていた。噂レベルで。


 それが、このエリートだとすると、話が合わない。

 なぜ2人なのだ?

 自分の持ちうる思考能力で可能性を羅列してみた。


・噂が誤っていた。

・新たに1人離反した。

・まったく関係の無い2人組。


 ここまで考えた時点で、今はそんなことは問題ではないだろう、と思う。

 今、彼らはここにいて、我々の利益になることをしてくれている。


 それでいいではないか。

 手出しされない限り、放っておけばいいではないか。

 どうせ彼らへの攻撃指示は無いのだから…………。

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