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世界のだれかが紡いだもの  作者: 新巻鮭
1章・記憶の枷
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金属製の兵士

 巨人が屠られる瞬間は生体レーダーで観測されていた。


「変わり種1体の反応、消失しました。エリートと交戦していたものです」


 CP内部では、誰もが「予想通りだよ」とでも言い出しそうな表情で事実を受け止めていた。


「こちらの部隊は?」


「レーフェル隊は一般部隊と交戦、24体を撃破、被撃墜は無し。弾薬消耗率は12パーセント。オブリデアノ隊は変わり種と交戦中。被撃墜2、パイロットは離脱しました」


 副隊長は芳しくない状況だ、と思う。

 小隊は4機編成。2個小隊だから、こちらの戦力は残り6機。

 レーフェル隊がほぼ無傷なのが救いか、と思うものの、楽観はできない。


 ――――何せ、敵は怪しげな技術を持った、謎の部隊なのだ。


 その所属も、目的も、技術の出所も、何もかもが不明。

 突然現れたかと思えば、何の躊躇もなしに街を破壊するどもだ。


 敵戦力は仮面を被った『一般』、規格外の力を備えた『エリート』、そして、地球上の生命体か疑わせるような外見の『変わり種』。この3種類だ。

 なぜエリートだけ外国語を用いるのだろう? という疑問は部隊内部でも後を絶たないが、そう決められてしまった以上仕方のないことだ。それに、別にそれで実害が出るワケでもない。


「オブリデアノ隊、変わり種を撃破しました。被撃墜2、中破1、撤退申請が出ています」


「申請を受理。撤退させろ。レーフェル隊は?」


「一般と交戦中のようです。27を撃破、被撃墜無し」


「下がらせろ。オブリデアノ隊のケツを守ってやれ」


「了解、下がらせます」


「エリートへの砲撃再開はもう必要ない。準備している部隊に通達しろ」


「了解」


 指示を出し終えるのを見計らって、副隊長が声をかける。


「新型の感想は? 評価出さないといけないだろう?」


「ダメだな。あんなモノではエリートに敵うまい」


 無茶な注文だ、と副隊長は思う。

 だが、その注文を満たすモノを配備してもらえなければ、自分たちは遠からず死んでしまうということも、彼は分かっているつもりだった。


「今回は仲間割れに助けられたが、本来ならレーフェル隊は壊滅だぞ?」


   ▼


「――――っはあぁぁあああ…………!」


 僕は大きく息を吐いた。


 脚と、左腕だけになってしまった、巨人()()を一瞬見やる。

 音はなく、ただ静かに、地面に血を吸われていた。


「よくできたね。でも、まだまだこれからだよ」


 ナクアは、うれしそうに、笑みを浮かべながら、僕の頭を撫でてくれる。

 子ども扱いされてるみたいだったけれど、不思議と嫌ではなかった。


「レイトはこれから、もっともっと、もっともーっと、強くなってくれないと」


 彼女のにこやかな笑顔は、およそ、これから底なしの戦いに出向く者とは思えないような笑みだった。


 しばらくして、僕が落ち着くのを見計らって、彼女は言葉を紡ぐ。


「そのためにはとりあえず、支給品の使い方、知っとかないとね」


 Gr‐Tとかいうもの以外にも、まだまだあるらしい。


「……説明は後回しでもでいっか。実践する相手には困らないし、使ってみよ」


 ナクアが振り向く。

 その先には、仮面を被った一団と、巨大な…………トラ? ライオン? とにかくネコ科らしき姿をしたものが、規格外のサイズをもって迫って来ていた。


「Gr‐Tは遠方の雑魚を一掃するには充分だけど、距離を置いた『ミュータント』には効かないわ」


 ミュータント、と言うのが、例の巨大な連中の総称なんだろう。


「じゃ、どうするの?」


「Gr‐T装備状態の腕を突きだして」


 言われるがまま、僕は右腕を突きだす。


「何でもいいわ、遠距離を攻撃できそうなものをイメージして」


 何とはなしに、僕は長大な機関銃を想像していた。


呼び出しアクセスを確認。Dn‐Sディンス通常起動》


 どうやら成功らしい。

 何かが組み上がるあの感覚が、成功したというあの実感が、再び身体を駆け巡る。


 そこには、僕が想像したモノとは少し違うデザインの機関銃が、二脚をたわませながら、僕の掌にグリップを握らせていた。


「成功ね。使ってみれば、威力も分かるわ。やってみて」


 僕は、迫りくる一団に照準を合わせ、引鉄を落とした…………。

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