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エピローグ

ああ。

儂の子供たちはきちんとあの娘たちの手に渡っただろうか。

儂の孫の友人たちに。

儂は孫に何もしてやることができなんだ。

その報いにとあの時計を作ったが、孫は喜んでいるだろうか。

孫の絆が途絶えなければそれでよい。

儂と孫の絆はとうに切れてしまっている。

だから、せめて新たに繋がれる孫との絆は守ってやりたい。

儂の代わりに儂の子供たちが、孫の絆の証になってくれる。

孫の絆になることはできんかもしれん。

しかし、孫を見守ってくれるだろう。

あの時計たちはそのために作ったのだから。

あの時計たちに自我を持たせたのは、自分で思考し、絆を保たせるため。

絆は機械的であってはならん。

絆は人間的でなければならない。

人間的でない絆は絆とは言わん。

それはもうただの導線だ。

そうなってはいかんのだ。

儂と孫の間には、いや儂と家族の間には導線しかありはしなかった。

儂は時計をつくることに躍起になって、家族を顧みなかった。

だから、孫の存在も知らなかった。

時計を作れないようになってから知った。

その時にはもう孫は十歳だった。

十年もの時間が空いてしまえば、絆を紡ぐことなどできん。

だから、儂は絆を紡ぐつもりでまた時計を作った。

人生で最高の五つの懐中時計を。

一つ一つに儂の魂を込めた。

この時計たちが孫を、その友人たちを見守ってくれるだろう。

もう、儂に思い残すことはない。

だが、未練はある。

孫を抱き締めたかった。

孫と話がしたかった。

孫と笑いあいたかった。

だが、それが叶うことはない。

この時計屋には誰もいないのだから。

妻も、息子も、娘も、息子の嫁も、娘の婿も、孫も。

全員がこの家を出て行った。

この時計屋には儂一人。

いや、儂と儂の作った時計たちだけ。

儂は一人、この時計たちに囲まれて逝こう。

孫の事を思いながら。

孫に、家族に謝りながら。

儂が静かにまぶたを下ろそうとした時、誰かが店に入ってきた。

ああ。

孫の友人たち。

そして、愛しい孫。

最後にその姿を見ることができてよかった。

どうか、時計たちが彼女たちの手に渡ることを願う。

どうか、彼女たちが笑い続けることを願う。

どうか、彼女たちが幸福であることを。

ただただ願う。

もうすぐ消える儂にはそれくらいしかできん。

ああ。

時計たちよ。

孫たちの時を刻んでおくれ。

儂の叶うことのなかった時間をお前たちが叶えておくれ。

あの娘たちの絆になっておくれ。


「どうか・・・彼女たちに時の祝福を・・・」


これで完結になります。

読んでいただいてありがとうございました。

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