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園田明日美の場合

彼女は小さなことで悩み、苦労するが、大きなことの前では悩まない。

大胆にかつ単純にこなす。

彼女には友達が多い。

話せる人が多い。

だが、顔が引きつっていたり、声が逃げたそうにしている。

それをもったいないと思わないのだろうか。

他人と仲良くなれるというのは一つの才能だ。

それを生かせばどの社会でも生き残れるだろう。

だが、彼女は小心者。

それがもったいない。

悩みを己の内に閉じ込める。

吐き出したかと思えば、自分自身が殻から出ていない。

彼女の周りにはたくさんの友が居る。

親友と呼べるものもいる。

なのになぜ、頼らない。



頼れば悩みなど吹き飛ぶだろうに。

将来、私を手にする者のことを考えていた。

一人の時計屋が作り出した懐中時計。

彼は彼女のことをもったいないといつものようにぼやく。

主の好きな形をとる懐中時計は、主のことを大切に思っている。

彼女はもっと他人を、己を信じるべきだ。

さすれば、おのずと道が開け、一層輝くだろうに。

私が彼女手に渡るのは彼女の十八歳の誕生日。

友人から送られる。

悲しき記憶など、悩み苦しんだ記憶など刻みたくないと私は思う。

その願望を新しき主は叶えてくれるだろうか。

友に向ける笑顔を絶やさずにいられるだろうか。

私は心配に思いながら、彼女の手に渡る。

私はおそらく、彼女の手の中で安らぎ安堵するのだろう。

それが私には愛しいと思えた。

私を贈る彼女の友人たちには感謝したい。

だが、それと同時に恨めしい。

もっと早くに彼女の元に来たかった。

彼女と同じ時を紡ぎたい。

それが一番の願いだ。

彼女の笑顔が一番の安らぎだ。

ああ、早く主に会いたい。

主に会って大切にしてもらおう。

そして、同じ時を生きるんだ。

私の主は謙虚だが、心根は優しい。

そんな主の元に・・・

ああ。彼女の元に来れてよかった。

これで、物語を刻むことができる。

これで、私の意義が証明される。

主、私のほうこそ・・・


『ありがとう・・・!』


私は主に優しく微笑んだ。

そして、彼女の元に心優しき懐中時計が届けられた。

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