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18-3 ヤンデレの執着愛が止まらない

 そのとき、エリサの背後から大きな風が巻き起こった。木々をなぎ倒す勢いで風は増し、徐々に熱を帯びてきた。

 クラレンスは風の勢いに驚き、バランスを崩す。そしてエリサの腕を離した。

 エリサも急に離されたことでバランスを崩し、その場に崩れる。


 バキバキと木の枝が折れ、木の根が浮き上がる。青い炎があたり一面を舐め、アベルのマントがヒラリと揺れるのが見えた。


「アベル・アンベール公爵……!」


 転げたクラレンスが顔を上げ、驚愕する。


「なぜだ……貴様はまだ都で……」


 しかし言い終わらないうちにアベルはクラレンスに青い炎を向けた。冷たく凍てつく瞳は怒りに満ちており、青く危なげに光っている。


 クラレンスは青い炎を浴び、火だるまになった。

 しかしすぐに魔法で防御し、アベルから距離を取る。


「この……! 死神め!」


 魔法陣で攻撃する。しかし、アベルはそれを片手で払いのけた。

 青い炎をクラレンスの周囲に投げつけ、火柱の中に追いやる。


「我が妻をさらい、狼藉を働いたこと、許さない──死ね!」

「待って! 待て待て、アベル!」


 風をかきわけてやってきたウィルフレッドが止めに入る。


「そいつは殺しちゃいけない! 重要参考人だ! 陛下からそう言われただろ!」

「構うもんか! こやつは俺の妻にひどい仕打ちをした! 生かしておけるか!」

「その気持ちはよく分かる! 分かるけど……まぁいいや、じゃあ死なない程度に焼いとけ」

「ウィルフレッド! 諦めないでよ!」


 エリサは思わず間に入った。ドレスをつかんで、アベルがまとう炎の中に飛び込む。

 熱がまとわりつくが、それでも彼を止めたい気持ちが強く、痛みも熱さもいとわない。

 そして、不思議と炎はエリサを焼くことはなかった。


「アベル様が人殺しになるのはいけません! 私のために、そんなことさせられない!」


 エリサはアベルの腰に手を回し、ギュッと抱きしめた。背中に顔をうずめ、必死に止める。


「お願いです、アベル様!」


 アベルは怒りがこもった目のまま振り返った。その目は徐々に冷静になっていき、彼の魔法が薄まっていく。クラレンスはすでに気を失っていた。


 炎が完全に消えていく。それでもエリサはアベルを抱きしめたままでいる。


「エリサ……」


 アベルは正面を向いたまま、口を開いた。


「エリサ、すまない。君を一人にするんじゃなかった」

「いいえ! 全部私が悪いんです……私が勝手に、全部やったことだもの」


 そうつぶやくと、エリサはゆっくりとアベルから離れた。

 体の震えが今になって出てくる。顔をうつむけ、震える腕を抱く。


「私……アベル様を裏切って、怒らせて……自業自得なんです。だから、これも報いなんだわ。私が全部悪い……」

「そんなことはない」


 アベルは静かに否定した。エリサはムキになって言い返す。


「そんなことあります!」

「ない!」

「あるってば!」


 だんだん強い応酬となり、アベルは勢いよく振り返った。そして、エリサに覆いかぶさるように強く抱きしめた。


「ないと言ってるだろ。君は変なところで意地を張る。こういうときくらい、俺に甘えろ」

「でも……あなたを傷つけたのには変わりないです」

「こんなことで傷ついてたら、君の夫なんて務まらないだろ」


 アベルはエリサを見つめた。エリサの涙を優しく指ですくい取ると、額にキスをした。

 エリサは目を見開いて固まった。だんだん体が熱くなる。


「涙も震えも止まったな」

「え、あ……あぁっ、うぅ」


 恥ずかしさと驚きとときめきが一気に全身を巡り、言葉にならない。

 そんなエリサにアベルは小さく笑うと、我慢していたのか涙が溢れた。


「アベル様……?」

「すまない。君を失うかと思って……」


 そう言うと彼はエリサの肩に顔をうずめ、顔を隠した。


「君を離したくないんだ。どこにも行かないでくれ」

「はい……」


 くぐもった声で言われ、エリサも言葉に詰まり、優しく答える。


「君がいない世界なんて考えられない。だから、ずっとそばにいたい」

「はい……」


 彼の背中に手を回し、優しく撫でるとアベルはそのまま首筋へキスした。


「エリサ……!」


 それはまるで子どものように甘える。そんな彼にエリサはもう意地を張って突っぱねることはできなかった。自分を必要としてくれる人を前にして拒むことはできない。


「アベル様、大丈夫です。無事でしたから」

「うん」

「ありがとうございました。あなたのおかげで、私は生きてます」


 そう言って、エリサはアベルの顔を両手ではさんで笑う。

 アベルも愛しげに笑うと、エリサの唇へためらうようにそっとキスした。


 その甘い時間は長引き、どのくらい時間が経ったか分からない。


 ひと心地つき、二人で顔を見合わせて笑っていると、ようやくウィルフレッドが声をかけてきた。彼はイヴリンと一緒にクラレンスを拘束していた。


「……そういや、アベル」

「なんだ」

「エリサ様に触れても暴走しないな」

「ん?」


 アベルは目を丸くした。赤く頬を染めたエリサを見る。


 その一秒後、アベルも顔を真っ赤にし、直後に大地が揺れた。拘束されたクラレンスが大地の揺れで思いきり空中へ放り出される。


 その大きな地鳴りに、町の人達が天変地異の前触れだと噂するのも時間の問題だった。

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