12-3 甘くなれない二人
翌日、アベルとウィルフレッドが出かけた後、エリサはいつものように町へ出て、商人ギルドへ向かう。
商人ギルドは町の中心に位置しているので、顔見知りの顧客に会うとつい話をしてしまった。そうしてなんとかたどり着き、町でも大きな建物に入った。
そして商人ギルドマスターと話し、今回の依頼について詳しく聞く。終わったのは二時間後だった。
「……つまり、ここ最近の王都では妙な病が出てきたから、回復薬が効くか試したいという話だったわね」
商人ギルドから出て、イヴリンと屋敷へ戻る際、エリサは神妙な顔で言った。
「そういうことですね」
「まさか病が流行ってきてるなんてね」
「でも、こちらに病はきませんよ。旦那様のご加護がありますし、奥様の回復薬もありますからね」
イヴリンが笑顔を見せながら言った。しかし、どこか元気がない。
「イヴリン、どうかしたの?」
「いいえ! なんでもございません」
イヴリンは慌てて答え、時空穴を見つけて入っていった。
(あの子の故郷って、確か田舎だって言ってたよね……病は王都で流行ってるって言ってたし、もしイヴリンの家族に何かあったらって、考えすぎかな)
そんなことを考えていると、背後が何やら騒がしくなった。
「おい、誰か、回復魔法使えるやついないか!」
「こんなときに限って、エリーの店が閉まってる! 誰か、ポーションを持ってないか!?」
そんな声が聞こえ、エリサは時空穴を閉じて騒ぎに駆けつけた。
「どうしたの?」
「おお、エリー! 助けてくれ。森に兵士が倒れてるんだ!」
男たちの声に、エリサは「なんですって!」と驚いた。ちょうど籠に入れていた薬草があるので、その場にいた年配の女性にカップを借りて男たちと一緒に助けへ走る。
兵士が倒れているというのはノルデン・フェルトの北西に位置する森の中だった。森に続く一本道の脇にいるというので向かうと、鎧から大量に出血した若い兵士がぐったりと木にもたれていた。
「大変! 急いで助けないと!」
薬草を急いで千切り、回復薬を生成する。カップに波々出来上がり、すぐさま兵士の口にそそぐ。すると彼は苦悶の表情を浮かべた。しかし痛みは一瞬だったのか、すぐに険しかった顔が和らいでいく。
「もし、あなた、大丈夫?」
声をかけて頬を叩く。すると、兵士はゆっくりと目を開けた。
金色の眉が眩しそうに動き、青い瞳が覗いた。なんとなくウィルフレッドと系統が同じ甘い顔立ちだ。
彼はエリサを見ると、弱々しい声でつぶいた。
「せ、聖女、様……?」
「え? 違うわ」
すぐさま答えるが、兵士はだんだん意識がはっきりしたのか目を覚ましてエリサをじっと見た。
「体の具合はどう? どこか痛む?」
「大丈夫。魔獣にやられて、命からがらここまで逃げ延びたんだけど、もうすっかり」
兵士は素直に答えた。周囲にいた人々が同時に安堵する。エリサもホッと一息ついた。
「良かったわ。でも安静にしてね。きっと大怪我だったんだわ。みんな、彼を診療所へ運んでちょうだい」
そう言うと周囲の男たちが兵士を抱えて、町の中心にある診療所運んでいく。
しかし兵士はエリサの方ばかり見ており、手を伸ばしてきた。
「あなたのお名前を教えてください!」
「私はエリーよ」
すぐに答えてあげると、兵士はうっとりとした目でエリサを見つめ、手を握ってきた。
「エリー、ありがとう。結婚しよう」
「は? 嫌です」
間髪容れずに一刀両断した。
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