表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/46

5-2 公爵様の重い片思い

 その頃、エリサはガーデンでお茶を飲みながら、昨夜のことを考えていた。


「昨夜のキス、みんな見てたわよね……最悪。私、人前ではキスできないのに」


 そんな主人のつぶやきに、イヴリンがダラダラと冷や汗をかく。


「お、奥様、声が漏れてますよ」

「え、あ、あははは! あー……もう死にたいかも」

「奥様!? やだ、死なないでくださいぃ~!」


 エリサの情緒不安定に振り回されるイヴリンは、いちいち本気に捉える。

 しかしエリサはあまり構わず、頬杖をついて呆けていた。


(でも、なーんか怪しいのよね。あの怪我もわざとなんじゃないかって。私のこと、どこまで知ってるのかな。私が回復薬生成のスキルを持ってるのを知ってて、その力を試したかったとか? いや、でもそうだと私をまず最初に叩き起こさないとだよね。うーん……?)


 どうにもアベルの思考が分からない。


「とにかく、ヤンデレはダメよ。なんでもかんでも破滅的な思考回路になるんだから、ああいうタイプは。しかも魔法も暴走しがちだし」


 そう言って立ち上がる。ほだされてはならないと胸に誓い、お茶をぐいっと一気に飲み干した。


「愛情に飢えてて、家柄という呪いに縛られた孤高……なのに、なぜかほぼ庶民の私に執着して独占しようとする。ここが謎なのよ。本人に訊くのは早いけど、でも極力会いたくないし、本人も話さないだろうし。あれ? そう言えば、今日はアベル様もウィルフレッドも見てないわね」


 独り言から質問に変えると、イヴリンが一歩遅れて反応した。


「旦那様は早朝より、王宮で国王陛下と謁見のためお出かけなさいました」

「あぁ、どうりで。昨日の討伐からすぐに謁見だなんて、公爵様のお仕事は大変ね……」


 ここから王都までは馬車で四時間かかる。日帰りで行ける距離だとしても、馬車での移動はそう楽ではない。


「じゃあ、まだ帰ってこないわよね」


 エリサは静かに言った。後ろでイヴリンが察したように「え」と声を漏らす。エリサは満面の笑みで振り返り、腰に手を当てた。


「町へ行きましょう!」


(こうなったら気分転換にお出かけよ!)


 エリサはすぐにティーセットを片付け、イヴリンを伴って屋敷へ入った。

 当然、人の目を盗み、コソコソと入る。どこにアベルやウィルフレッドの手先がいるかわからないからだ。

 正面玄関はもってのほか。メイドたちが出入りする扉や裏口もダメ。

 庭師のホルストが出入りする通路もあるが、彼の口の軽さを考慮し、こちらも使えない。

 今回はしかたなく、中庭の渡り廊下から出入りしたが、吹き抜けになっているこの空間も安全とは言い切れない。


「早いとこ、外へ出る抜け道も探さないとね……あ、そうだわ、イブリン」

「はい、なんでしょう、奥様」


 おどおどしながら周囲を見ていたイヴリンが返事する。

 エリサは思いつきを口にした。


「あなたの服を貸してもらえない?」

「えっ……」


 イヴリンの顔がさらに青くなる。

 しかし、ここで引くわけにいかない。彼女が何を危惧しているかはなんとなく想像はつくが、この絶好のチャンスを逃すのは惜しい。


「お願い! お願い! おねが〜〜〜〜〜い!」


 三回拝み、しまいにはすがりついた。


「どうか! 私に御慈悲をください! イヴリン様ぁ!」

「ひぃぃっ! おやめください! 奥様! わ、わかりましたからぁ!」


 そうして、イヴリンの部屋に入り、なんとか私服を貸してもらうことに成功した。


「これなんていいわね! 素敵だわ!」


 エリサはイヴリンが出してきた私服をいくつか見た。

 主に灰色や茶、ボルドーなどのくすんだカラーのドレスが多い。どれもワンピーススタイルになっており、イヴリンの髪色によく似合うものばかりだ。


「これにするわ!」


 エリサはウキウキと手を伸ばし、地味なボルドーのドレスを取る。


 ちょうどふたりとも服のサイズが同じだったのでピッタリだった。コルセットも簡単なものだったので、緩めに締める。スカーフを巻き、変装完了。

 だが、イヴリンは気が気でなく、常に冷や汗をかいて「いいのかなぁ、大丈夫かなぁ」と不安げだった。


「だって、アベル様からいただいた服はどれも派手なんだもの。黄色とかピンクとかアイスブルーとかね。確かに私の見た目には合うかもしれないけど、私の趣味はこうじゃないのよ」


 それから、イブリンも着替えさせられ、ブラウスと深緑色のスカートになった。

 イヴリンの頭にもスカーフを巻き、二人でコソコソとメイド用の扉から屋敷を抜け出す。

 幸い、メイドたちはその場にいなかったので、誰にも見つかることはなかった。

ブクマ、評価などの応援、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ