表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/24

第4話『天候術師の桜花乱舞』


 「これより儀式を執り行う。妖狐族イズナそのオークと契りを交わせ!」


 「嫌です!離せです!私は奴隷じゃないです!」


 晴れ間が差しているにも関わらず、雨が降っている。


 あまり見ない天候です。


 妖狐の里では、よく起こることなんでしょうか。僕とテラスは禁忌に触れて、儀式に乗り込み状況を確認する。


 儀式の真っ最中で、奴隷としての契約を結ぼうと、オークが妖狐の娘を掴み上げ、唇を奪おうとしているが、イズナは悲痛な叫びをあげて抵抗しています。


 これ以上、黙ったままでは居られませんよね。


 僕は、その奴隷契約に待ったをかけた。


 「──彼女の婚約は認められません。だって、ただの奴隷契約なのですから。そうですよね、小悪党の村長さん?」


 「何故、あなた方がいるのですか?早朝に帰った筈でしょう。話しをしましたよね、邪魔したら殺すと言ったのですが」


 僕とテラスの急な登場により、キュウビの態度が著しく激変した。冷静さをかいて、丁寧であった口調は荒々しくなったんだ。


 本性を現したというか、開き直ったと取るべきか、キュウビは激しい威嚇を僕達に向けている。


 何かを隠していると初対面の時に思ったけれど、化けの皮が剥がれると、本能を剥き出しにするのですね。


 僕の直感は正しかったんだと、つくづく思います。


 「おやおや、あなた方のせいで式は滅茶苦茶だ。オーク共もお怒りだぞ。その責任は、お前の命で償って貰うぞ」


 「同族を奴隷として売り払っているあなたが、言って良いセリフではないと思いますけどね。別に僕の命なら好きにして構いませんが、その妖狐のお嬢様は返して頂きたい」


 「無理な相談だ。まだ、婚約は終わっていない。この雨が降り止まぬ限りはな」


 この特殊な天候をどうにかしなければ、オーク共も引き下がらないのだろう。奴らからしてみれば、とんでもない上玉だ。


 そう簡単に諦められるものではない。だったら、式そのものを僕がブチ壊してやる。


 天候さえ、どうにかしてしまえば、オーク共だって話しが違うと怒りだし帰っていくだろう。


 約束には、従順な生き物だからね。裏切りを受けたと知れば、この式は破綻する。


 出来うる最高の術を、僕はキュウビに披露しよう。


 「もし……この雨を晴らすことが出来たなら、キュウビさんには大変都合が悪いのではないんですか?」


 「確かに……裏切り行為と見なされてオークはこの場から立ち去り、この式は破綻するだろう。だが、不可能だな。どんな魔術を使おうが、天候を操作出来る魔術師なんて存在しないからだ」


 「出来ますよ。だって僕は……天候術師ですからね」


 この会場の誰しもが、僕を嘲笑った。そんなことを、出来る筈がないとね。


 この世界での認知は、重々分かってはいたけれど、こんなにも馬鹿にされると僕だってムカつくのです。


 キュウビも緊張の顔が解れ、僕に指を差し、嘲笑っていたのでした。


 「冗談でしょ。魔力量が全くないと思っていたのですが、まさか魔術とも程遠いものが、よく恥ずかしがりもせず言えたものですね。それは、誰かが妄想した架空の魔術だ。存在しないのだよ!」


 その発言が、テラスの怒りに触れてしまった。テラスは僕以上に天候術を信じているからね。


 それを馬鹿にされると、僕以上に怒ってしまうんだ。こうなったら、彼女は誰にも止められない。


 テラスは、ありったけの思いを村長にぶつけていた。


 「天候術師を……私の最高の魔術師を馬鹿にするなぁー!」


 全く……テラスには励まされてばかりだね。


 傷ついたのが馬鹿らしく思うよ。


 「……ところで、妖狐のお嬢様。君はどうして欲しいのかな」


 「……魔術師のお兄ちゃん。助けて欲しいのです。奴隷としての一生なんて……真っ平ごめんです!」


 「分かったよ!お嬢様。それで君の心が晴れるなら」


 出し惜しみは、この際無しでいこう。彼女が助けを求めていて、その救いの手を僕は差し伸べることが出来るんだ。


 僕は、天候術師クウ・スコライズ。


 僕のような……辛い思いをする者を救済する魔術師だ。


 「僕が求める全ての空よ。その雨を消し去り、幸福を彼女に降り注げ」


 ───天候術式・風雅。


 「雨が……止んだ!?もしやこれは……」


 雨は綺麗サッパリと止み、快晴が広がる。狙って起きたことではないんだけど、近くに咲く薄紅色の花びらが宙に舞っていた。


 雨の代わりと言わんばかりの一面の花吹雪は、その美しさを妖狐のお嬢様に見てつけるように、華麗に僕達を包み込んでくれたのです。


 「雨のち快晴。この花吹雪は彼女の心を癒すでしょう」


 「──こんな、デタラメがあるものかぁー!」


 誰しもが、あり得ないと思っていた光景が広がっているのですから、無理もありませんよね。


 キュウビは、この異常事態に絶句している。


 式の裏切り行為であるとオークが怒り狂う始末だ。


 結局は、破談となりオーク共は一旦、巣へと帰り始めた。


 「妖狐の娘の婚約は、この僕が破棄させて貰った。ところでキュウビ……これが初めてじゃないのでしょ?」


 「やってくれたな……ペテン師が!勿論、これが初めてではない。若い娘は良く売れるからな。どのくらい売ったかなんて忘れたわ。まぁよいわ、貴様は殺すだけじゃ足りん。我が妖狐の技で苦しみながら死ぬがよい」


 「へぇ〜でも君、弱いじゃん。あなたでは、僕を殺せやしないと思いますよ。臆病者のキツネさん?」


 情状酌量の余地は、ございませんでした。この際、理由なんてどうでもよいことですね。村長なのだから、この村の妖狐達を護る為に行動するべきだったんだ。


 奴隷にされた、その全ての妖狐を僕は救うことなど出来ないけれど、せめてもの懺悔ぐらいはさせてあげられます。


 ──妖狐の里、村長キュウビ。これ以上、あなたのせいで涙を流す者を生み出さない為にも、僕はお前を決して許さない。

お読みいただき、ありがとうございました!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、『ブックマーク』と下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


評価ボタンは、モチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!


※感想、レビュー等、お気軽にお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

↑の☆☆☆☆☆を押して頂けると執筆の励みになります!!!

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ