第21話『天候術師とエルフ族の同盟条約』
「全部で三十四名……無事に救出完了だ。妖狐族の鼻は良く効くね。ゴブリンの巣は迷宮みたいなのに全く道に迷わなかったよ」
「えっへんです。クウ様の訳に立って良かったのですよー」
どうにか、捕虜のエルフ達の救出に成功した。
みんな無傷だったけど、衰弱していて喋る元気もなさそうだ。
早く村に連れて帰らなくちゃね。これで誰一人、欠ける事なくみんなを連れて帰れるよ。
捕虜の救出も出来たし、泉の汚染原因もゴブリンのせいだと分かったんだ。その脅威を取り除いたのだから、エルフ族のシルファの同盟条件もしっかりと満たしている。
早く報告して、シルファ達を安心させてやりたい。
その期待を抱えて僕達は、エルフの森へと帰還した。
♦︎♦︎♦︎♦︎
「あのゴブリン・ロードを撃破なされたのですか!?その……お怪我の方が酷いみたいですが……」
「えぇ、気にしないで下さい。もの凄ーく痛いですが気にしないで下さい。慣れてますから」
エルフの森へ捕虜と共に帰還した僕達だけれど、すぐさまシルファがお出迎えをしてくれた。
申し訳なさそうに謝罪はしてくれるけども、ちょっとだけ意地悪したくもなりますよね。
どれだけ痛かろうが助けると言った以上、大丈夫だとしか言えないじゃないですか。冗談の一つも言いたくなります。
テラスにその辺にしろよと咳払いの合図を受けて、冗談を取り繕う事を辞めた。後で何されるか分からないからね。ここは素直に従っておこう。
「シルファ様お約束通りエルフの捕虜達を救出し、天敵とも言えるゴブリン・ロードを国王であるクウが討伐致しました。どうか我々と同盟を結んで頂きたいのですが……」
「ここまで助けて貰って断る理由はございませんわ。この御恩一生忘れません。本日付で我々エルフ族は、合衆国サンライザの後ろ盾となりその守護に勤めさせて頂きます」
「そう言って頂けるなんて光栄でございます。我々もエルフ族の困り事がございましたら尽力致します。では、末永く協力関係を築きましょう!」
【同盟条項】
一、エルフの森の泉へ定期的に聖水を供給すること。尚、供給でなくとも、泉を浄化出来る者が派遣することも良しとする。
二、エルフ族が再び窮地に迫った時、合衆国サンライザは迅速な避難誘導とその解決を図ること。
三、エルフ族は、合衆国サンライザの後ろ盾となり、貿易に不利となる状況。
或いは民の者の危機が発生した場合、その障害を排除する。
四、悲劇によって誰も失われない世の中にしましょう。
以上が、同盟条項である。
最後の一文は、テラスが勝手に書いたものだ。
そうですよね、僕もそんな世の中にしていきたい。その信念があったからこそ、僕達はエルフ族の者達を救うことが出来たんだ。
本来なら必要の無い条文。
そんなのはシルファだって分かっていたはずだ。同盟の内容とは、これっぽっちもかけ離れているのだからね。
だが、シルファはその条文を受け入れたんです。
一切の躊躇いもなく、この条件で同盟条約が締結された。テラスと気持ちは同じだったのでしょうね。
それに共感してくれるって、テラスは分かっていたんだ。だからこそ、わざと同盟に関係ない条文を増やしたのだろう。
テラスさんは、どこまで策士なんでしょう。こんなにもあっさりと決めちゃって良いのかって程、同盟の話しはスムーズに終わりを向かいつつあった。
つくづく思う。テラスは、同じ信念を持つ仲間を手に入れただけでなく、大事なことはしっかりと抑えていたんだ。
僕達が重きを置いていた条文は、三である。
これで、様々な取引が楽になりますね。
エルフが後ろ盾になってくれれば、我が国サンライザは国としての信用を増すだろう。
それでいて、この条約によりエルフ族が不利になることはほとんどと言っていいほど無いのです。
僕には真似出来ないことだったから……。
本当に助かったよ。
「どんな時でもクウ様の……いや、合衆国サンライザのお力になりますよ。是非頼って下さいね。最強の天候術師様」
「いやいや、最強は余計ですよシルファ。テラスにとっての最高の魔術師であろうとは思っていますけどね」
「テラス様はクウ様に愛されておられるのですね。妬いてしまいますわ」
「ちょ、ちょっとクウ!急に変なこと言わないで。恥ずかしくて死にそうよ!」
「なんでだよ、いつも言ってるじゃないか。僕もそうありたいだけなのに……」
テラスは、顔を赤らめていて頬を膨らませている。
何これ、可愛いんですけど。
怒っているようで、恥ずかしさを誤魔化してるのが何とも言えない魅力を引き出していて、それがまた良いですね。
なんて、考えておくのはよそう。
イズナとシズクが拗ねるといけないし、今の貴重はデレってやつを見ないフリすることにした。
テラスやシズクの頑張りにより、エルフ族と無事に同盟を結ぶことが出来た訳だけど、よくやってくれた褒めてやりたいぐらいだ。
僕は戦い、護ることしか出来ないから、彼女達の頑張りはとても素晴らしいと感じてしまう。心からテラスやイズナ、弟子のシズクと出会えて良かったと思います。
──雪の冷たさが掻き切れる頃、僕達は我が国サンライザの発展に繋がる第一歩として、エルフ族との同盟を正式に結ぶことが出来ました。
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