第19話『天候術師とゴブリン・ロード襲来』
「やり過ぎだよシズク……。まさかこれ程の魔法だなんてね。正直、僕も驚きを隠せないよ」
「違うんですよ!?普段は失敗するしこんなに強い魔法じゃないんです!師匠がやったんじゃないですか!」
確かに支援したけど、予想斜め上過ぎたんです。きっとシズクは賢者クラスの魔術師になりそうだね。なんて皮肉を言ってみせた。
今後の事を考えたいんだけど、そんな悠長にしてる場合じゃないのも事実。避難させていたテラスやイズナと早く合流して、ゴブリン共の強襲から身構える準備が必要です。
何処へ避難したかまでは聞いていなかったけど、僕やシズクの元へ戻ってくるのは比較的早かった。
すんなりと合流出来たことを喜ぼうとしたんだけど、テラスは大変ご立腹だ。こりゃまた、ご機嫌取りでもしなければいけませんかね……。
「ちょっと!まだ避難途中だったのに溺死させられそうになったじゃない!何をどうしたらあんな津波起こせるのよ!はっきり言って災害より酷いわ……」
「えへへ、二人の成せる技ですな!」
「クウ!何ふざけてんのよ!褒めてないんですけど!?」
おどけてみる作戦は、テラスには通用しなかったらしくシズクと僕はこっ酷く叱られてしまいました。
イズナはっていうと、とても気持ち良さそうにスヤスヤとお眠り状態だ。こんな状況でも寝れるなんて流石妖狐族、肝が据わってるなと怒られながらも関心してしまう。
暫く説教は続いたけれど、長居すればゴブリン共に勘付かれてしまいます。身を隠しながら更なる迎撃をしたいところだけど、どうやらそれを許してはくれないらしい。
──ズドンッ……!ズドンッ……!
重圧のある足音が地面を鳴らし僕達の前に姿を現したそいつは、霧雨の影響で大きな巨人の影を映し出す。
やっと認識出来たと思えば、あの陰は幻影だったのかと思う程の、たくましい肉体を持つゴブリンが立ちはだかったんだ。
「何だこの騒ぎは。貴様らの仕業か?我の仲間は一体どうしたのだ。誰一匹もいないではないか」
「……君はゴブリン・ロードかい?残念だったね。君の可愛い下っ端共は、さっき津波に流されてしまったよ」
変異種ってのは、エルフのシルファから聞いていたけど規格外ってもんじゃない。その上を行く存在だろうと確信した。
まずゴブリンなんてのは、人の言葉なんか喋らない。
話せる以上は、それなりの知性を兼ね揃えているんだろう。
極め付けは、この膨大な魔力量にある。
魔法が使える種族ではないことは、誰もが知ることであろうがこれは僕とシズクにしか分かりませんね。
──確実に水の都で戦闘した皇女殿下より格上の魔術を行使出来るほどの魔力を保有しているのを察知してしまったんだ。
「ただの上位種ではなさそうだ。一体誰に魔術を教わったんだい?」
「教えてやる必要がある訳ないだろ小童が!やりたい放題してくれた礼だ。貴様らを殺した後でエルフ族を蹂躙してやろう」
「僕達のことは好きなようにすればいいさ。出来るものならね。捕虜のエルフ達は無事なんだろうな?」
「まだ手出しはしてないさ。これからするつもりだ!」
「──それを僕がさせるとでも?」
「ならば、死ね!」
あの巨大を軽やかな体使いで僕に強襲してきた。だけど僕は、その全ての打撃を全て受け流す。
並の人ならば、まず回避は不可能だろうけどね。僕は眼の方も鍛えているし、その攻撃がヒットするなんて万に一つも無い。
それよりも、心配しなければいけないことある。それは、戦闘に向かないテラスやイズナを狙われると、防御が手薄になってしまうことだ。
あのゴブリンには知性がある。
僕に攻撃するのが悪手だと気づいたんだろうね。
僕から矛先を変えて、テラスにゴブリンが拳を掲げ、迫ってしまう隙を作ってしまった。
「──しまっ……」
「ラチがあかん!この小娘から始末してくれるわ!」
僕がテラスの盾となり、ゴブリンの重い一撃を受けて身を飛ばしてしまう。本当に油断したよ、頭まで良いゴブリンなんて初めてだ。
騙すスキルに高い戦闘能力を保有した、魔術が使えるゴブリンなんてもはやゴブリンではない。人そのものだ。
こりゃ、エルフ族だって太刀打ち出来なかったのだろうと納得してしまいます。
「……ゲホッ……ゲホッ……」
「何だ……騙し打ちは効くんだな。骨の何本かは折れたか?」
「……骨の数本ぐらい覚悟したさ。それよりも、もっと君は周りを見た方がいい」
「何だと?死に行く者の戯言にしか聞こえんな」
「──何も魔術師は一人じゃないんでね。シズク……天候はまだ変えていない!上級魔法をくれてやれ!」
「はい、師匠!魔力を最大解放します。離れて下さい」
────ハイブラスト・ウォーター!
砲撃にも似た、直線を描く水撃がゴブリン・ロードに放たれた。奇襲には奇襲だ。背後からの攻撃。
まず回避なんて出来やしないだろう。
──シズクが勝つか、ゴブリンが耐えるか、それ次第で戦況がガラリと激変する。
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