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第10話『天候術師と滴る雨』

 

 「だったらやってみろ。どのみち何もしなけりゃ、この村はお終いなんだ。ダメ元でも試す価値がある。村の希望を君に託す」


 「その命……確かに受け取りました。必ずやり遂げてみせましょう。この地の復興に尽力致します」


 シズクには試されていて、村長アレイには希望を託された。


 不条理を打ち消す希望の光。僕は、そんななれるのかも怪しい存在になりたいのだ。


 必ず、村人の明日を取り返す。今日という絶望を払い退けて、僕は苦しむ民を未来に進ませよう。


 この想いを杖に込めて、僕は天候術を行使した。


 「僕が求める全ての空よ。枯れた大地を蘇らせる為、その麗しき雨水を降り注げよ」


 ────天候術式・五月雨。


 ────ポタッ……。


 ────ポタッ……。


 勢いを増していく雨水は、枯れた大地を麗していく。


 僕にとっては当たり前のことですが、村長達はこの異質な状況に困惑しています。出来る筈がないと思っていたのでしょう。


 その認識は、間違っていないんです。


 ただ、僕にはそれが出来てしまうっていうだけの話しなんですから。


 「私達は……奇跡を……見ているの?」


 「あり得ないだろこんなこと。天候を操作する魔術師が存在するなんてな。これではクウ・スコライズを信用しない訳には、いかなくなったな」


 「そりゃあどうも。暫くはこの雨で様子を見ましょう。信じてくれて手っ取り早いです。早速、本題に入りましょうか」


 シズクは、軽く放心状態でうわの空だったけど、とりあえずは、上手くいってくれて良かったよ。


 無事に信頼も得ることが出来たし、皇女殿下から水源を取り返す為の計画でも立てておこう。


 暫くして、シズクが放心状態から正常に戻った頃、皇女殿下のことについて話し合っていた最中だった。


 僕達は、何にも情報がないからね。シズクが詳しそうだし、知っている事を語って貰うとするかな。勘違いで、誤った情報を話さなければ良いけれど……。


 「ただの貴族って感じじゃないよね。シズクはどう思ってるんだい?」


 「どう思うも何も知らないの?皇女殿下ではあるけれど、超有名な水魔法を使う魔術師なんだから。私も水魔法を使う魔術師だけど正直言って桁違いだわ」


 なるほど、知らなかったのは僕だけらしい。


 テラスですら知っていることを僕が知らないのは、少し恥ずかしい気もします。あまり、世間とやらに無関心ですみません。


 そんな名家の魔術師相手にシズクは、正面から喧嘩を売りに行っていたんだと思うと、相当、切羽詰まっていたんだろうね。


 ある程度は事も知れたし、今夜中にでも水の都アトランティアの城へ突入してやろうかと思います。


 「……どこに行くつもり?」


 「そりゃ……皇女殿下の元だよ」


 「辞めた方がいいわよ。さすがにクウじゃ皇女殿下には勝てないわよ」


 すぐにでも出たかったんだけど、シズクに引き留められてしまった。シズクだって、昨日の夜は無謀にも城へ突入するつもりだったじゃないか。


 人のこと言えないんじゃないかな。そうまでして、止める理由でもあるのか僕には分からなかった。


 「水魔法に関しては、だいぶ熟練された魔術師よ。宮廷魔術師のクウでも、きっと歯が立たない。この村のことは助かったけど、それだけで充分。後は私達がどうにかするから」


 どうやら、僕じゃ敵わないと思われているみたいですね。


 僕も大体は予想出来ているし、恐らく皇女殿下はそれほど強くない。本当に強いのであれば、城に引き篭もったり、兵士を構えたりするものか。


 だけど、それ以前なんです。


 僕は、絶対に負けないんだ。


 見習い魔術師のシズクに、魔術の何たるかをしかと見せつけてやりますか。


 「言ったでしょ。僕が皇女殿下の悪事を砕き、この村の水源を取り戻すとね。言った以上は、やり遂げますよ。僕は魔術師ですから……」


 「……はぁ、分かったわ。私がサポートするからクウはやれることをしてちょうだい」


 テラスとイズナは、僕の実力を知っているから一切の口出しをしなかった。まぁ、そんなに実力をひけらかしても、返って村人やシズクが混乱するだけだ。


 このまま黙って、テキトーに従っているフリでもしておきます。


 シズクと皇女殿下、お互いに水の魔術師だが、何か因縁でもあるのだろうか。必要以上に躍起になっているし、戦闘に影響しなければいいんだけどね。


 例えそうだとしても、僕達は最後まで見届けてやろう。


 シズク自身との葛藤に決着が着いた時、僕が手を差し伸べればよいだけだし、自分自身そうしてやりたい。


 いつか国王が僕にそうしたように、今度は僕がシズクを導いてみせる。


 「さぁ、行こう。この村の尊厳とこれまで護って来たこの村の平和の象徴をね。貴族に好き勝手されるのは、今日で終わりにしましょう」


 「意気込み充分ね。いいわ、私が許可する。クウ……全力を持ってこの戦い、勝ち取りなさい!」


 「凄いです!クウ様がまた一段とカッコいいのです!」


 村人全員とシズクを含めた僕達は、これから水の都アトランティアの化けの皮を剥ぎ取る為、村から出発した。


 全力を出せってテラスは言うけれど、難しいんだよな。


 上手いこと調整出来るなら、僕だって苦労しない。なるべく加減する方向性で今回もやり切ろう。


 ──目的遂行以外は、僕達の敗北となる。そうならない為に、僕は可能な限りのサポートをしておきます。

 

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