甘ったるいミルクティー
夏乃は美形が嫌い。
一緒にいるだけでやっかみの対象になるし、基本的にもてはやされているから自己中なやつが多い。
例えば、寄ってくるのが悪いとでもいうかのようにおもちゃのように扱い、飽きたら捨てる。
それを繰り返してるにも関わらず、周りはまぁ美形だからと暗黙のうちに容認している。
これが醜い人だったり、平凡な容姿の人ならばすぐたたきつぶされるだろう。
なんて理不尽な世の中。
生まれもった才能は越えられない。
才能を凌駕するには多大な努力と膨大な時間が必要とされる。それでも越えられないが才能。
なんでこんな偏見といっていい考えを述べてるのかというと、身近にいるのだ。
こんな悪魔が。
すっげぇムカつく。
心の中で思ってたことが顔に出ていたのか、親友の直がすごくあきれた顔で軽く注意してくる。
「かぁ~のちゃ~ん。お顔が般若のようになってるわよ。」
「うるさいなぁ。そら般若のようにもなるわ。またよ、また!!またあいつのせいで無関係なトラブルに巻き込まれたのよ!?一体何回目になるのよ。もぉやになるわ」
「そら皆のアイドルの西條結城と仲の良い女友達だから、仕方ないんじゃないの?まぁ周りは女友達とは思ってなさそうだけどね~」
「大きな勘違い!あいつと私がどうにかなるわけないじゃない!!確かに、あいつはそこらの芸能人より顔がいいし、いいとこのおぼっちゃまだし、成績優秀、スポーツ万能だけどね!!」
一気にまくしたてて息が苦しくなった私は、一番叫びたい言葉を言うために大きく息を吸い込んだ。元凶が近づいているとも気が付かずに。
「夏乃ちゃんvvなに力いっぱい俺のことほめちぎってんの??」
ひぃゃぁっ、と驚いて変な声が出た。耳元で声が聞こえたうえに、肩に何かが乗ってるのだ。
「結城!!いい加減にして!!」
こいつはまた私の肩に顎乗っけて、私の反応を楽しんでるんだ。
結城は無邪気な笑顔を浮かべていた。
白々しい!!
「自分の影響力ってものを自覚しなさいよ。おかげで、私は不当な嫉妬をうけまくってるの。私とあんたがありもしない関係と誤解した女の子がわんさかいるのよ。その子達から散々陰口をたたかれ、呼び出され、酷い時には虐めにあうんだから!!」
あー…言ってて余計腹がたってくる。
私がこんなに憤りを感じてる中、元凶の結城は爽やかな笑顔で火に油をそそいでくれた。
結城は性格が破綻している。
「知ってるよ。だから出来る限りフォローしてるじゃん。呼び出されたら助けに行くし、イタズラされたらした子にそれ相応のことはしてるよ?それに女の子には夏乃は特別だからって言ってるのに」
結城が楽しそうに笑っている。さも私の味方だからとおんつけがましく笑っている。私をからかいたいがために私を特別扱いする。
まさに悪魔だ。
「特別なのは、ただ単に幼なじみだからでしょうが。結城が紛らわしい行動するから誤解が深まっていくんでしょ。だいたい、結城みたいな最低男を彼氏になんかするわけないじゃない」
「う-わ-俺ひどい言われよう」
「だいた…」
「ストップ」
これまで大人しく展開を見守っていたらしい直が、口をはさんできた。止めるならもうちょっと早くとめて。てか結城が来た時点でフォローいれてよ。
「結城君、夏乃で遊ぶのはいいけどほどほどにね。」
結城は直が言うならしかたないなというように苦笑した。
本当に私と直では態度が違いすぎる。
「わかりました。今度からは上手くやるよ」
言い争いが一段落した所で昼休みが終了のチャイムがなる。
「じゃあ、お邪魔しました。」
結城は爽やかな笑顔で言って、自分の教室に戻っていった。
昼休憩は結城のせいでいつも騒々しい。
その日の夜、私は結城にメールを送った。
‐直のこと、いつまでも見ているだけで満足しないように‐
メールは送ってすぐ返事がきた。
‐今は見ているだけで満足なんだよ。もう少し付き合え‐
なんて馬鹿なんだろう。
直は結城のことが好きなのに。
行動を起こせばハッピーエンド。
シンデレラだってガラスの靴を落とした後、王子様が迎えにきてくれなければ二人が結ばれることはない。
「まぁ、一番馬鹿なのは私なんだけどね…」
直が結城の事を好きなのは知っているし、臆病者の結城は好きだと伝えられずにいることも知っている。
いつまでこのままなのか。
苦い思いを誤魔化すため、砂糖とミルクをいっぱい入れたミルクティーを一口飲んだ。




