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「キキー、セイー、ご飯だよー」
少女は鳥用の餌を片手に、鳥籠へと近づく。そして、その中の様子がいつもと違うことに気が付いた。
「嘘……!」
少女は目を見開いて、部屋を飛び出した。
「お母さん!どうしよう、キキ死んでる!」
「えっ!」
少女は母親を連れ、再び鳥籠のある部屋へと駆け込んだ。
「本当だ、これはもう駄目ね……」
母親は、鳥籠から一羽の横たわる鳥を取り出し、肩を落とした。少女はそれを見て涙を流した。
「最近、ちょっと鳴き声おかしかったもんね……」
そう呟くと、少女はあることに気が付いた。
「ねえお母さん、セイ、ずっとキキの鳴き声真似してない……?」
それは、少し前にペットショップで買ったオウムだった。人間にはあまり懐かなかったが、ずっと前からいるカナリアとは相性が良いらしかった。母親は少女の背に手を添え、言った。
「きっとセイは、キキが死んだことを分かってて、私達が寂しくないようにキキの真似をしてるのよ」
「セイ……」
「セイが寂しくならないように、また新しい鳥を買ってきましょう」
「うん……」
そう言って、少女と母親はカナリアの亡骸を手に、部屋を後にした。