4
「独り……?」
独り、という言葉に反応する。自分は、檻の中は一人でも、檻の外にたくさん仲間がいた。みんな閉じ込められているが、檻越しにたくさんの話をした。
見る限り、この檻の外には、他の檻はない。この少女は、話し相手さえもなく、ずっと孤独だったというのか。
「私はね、生まれてすぐここに来たの。だから、ずっとずっと独りだったのよ」
「キキ……」
「だから、よろしくね?セイ」
その微笑みがあまりにも寂しそうで、セイは辛くなった。それを見ていたくなくて、無理矢理話題を変える。
「ねえ、僕が眠っているとき、聞いたことのない音が聞こえてきたんだ。あれは何?」
「音?」
そうだ、自分はあの音に導かれて目を覚ましたのだ。
何のことか分からないという風なキキに、セイは聞こえた音を精一杯真似た。音の高さ、規則性、音質を思い起こし、それを再現する。すると、キキは驚いた顔をした。
「すごい。あなた、真似ることがとても上手なのね。その音は『歌』と言うの。さっきは私が歌っていたのよ」
歌。初めて聞く響きの単語だった。あの独特な音はそれだったのか。
「歌……」
「そう、歌よ。私、歌がとても得意なの」
そう言ってキキは、嬉しそうに笑った。
「キキ。歌、もっと聞かせて。とても綺麗だったから。もっと聞きたい」
キキはまた嬉しそうに、けれど少しだけ恥ずかしそうに笑った。