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檻の中  作者: 水上夕羅
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「独り……?」

 独り、という言葉に反応する。自分は、檻の中は一人でも、檻の外にたくさん仲間がいた。みんな閉じ込められているが、檻越しにたくさんの話をした。

 見る限り、この檻の外には、他の檻はない。この少女は、話し相手さえもなく、ずっと孤独だったというのか。

「私はね、生まれてすぐここに来たの。だから、ずっとずっと独りだったのよ」

「キキ……」

「だから、よろしくね?セイ」

 その微笑みがあまりにも寂しそうで、セイは辛くなった。それを見ていたくなくて、無理矢理話題を変える。

「ねえ、僕が眠っているとき、聞いたことのない音が聞こえてきたんだ。あれは何?」

「音?」

 そうだ、自分はあの音に導かれて目を覚ましたのだ。

 何のことか分からないという風なキキに、セイは聞こえた音を精一杯真似た。音の高さ、規則性、音質を思い起こし、それを再現する。すると、キキは驚いた顔をした。

「すごい。あなた、真似ることがとても上手なのね。その音は『歌』と言うの。さっきは私が歌っていたのよ」

 歌。初めて聞く響きの単語だった。あの独特な音はそれだったのか。

「歌……」

「そう、歌よ。私、歌がとても得意なの」

 そう言ってキキは、嬉しそうに笑った。

「キキ。歌、もっと聞かせて。とても綺麗だったから。もっと聞きたい」

 キキはまた嬉しそうに、けれど少しだけ恥ずかしそうに笑った。


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