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少年は、深い眠りについていた。毎日変わらず願っても、目を覚ました時に見える景色は何も変わらない。無機質な金属と、好奇に満ちた目。そんな毎日に、少年はいささか疲れていた。現実から目を背けるように、頑なに眠りにつく。
深く深く落ちていく意識の片隅で、聞いたことのない音が聞こえてきた。意識を手繰り寄せ、その音を追う。それは不思議な音だった。喧騒でもなく、語る声でもない。ある一定の長さを、繰り返し繰り返し刻んでいる。その音はあまりにも澄みきっていて、少年はそのまま意識に蓋をすることができなかった。
ゆっくりと、目を開ける。広がっていたのは、檻。しかしそこは今までいた檻とは違う、見覚えのない檻だった。檻、なのだと思う。形状はよく似ている。しかし、その檻は無機質な金属ではなく、青色の檻だった。そう、青色。
少年は青の世界の話を思い出す。これが、自分が求めていた青い世界なのか。だとしたら、これは、こんなのは──。
「目が覚めたの?」
突然、背後から高く涼やかな声が聞こえた。誰もいないものと思っていた少年は、驚いて勢い良く振り向いた。そこにいたのは、木の椅子に座る、金髪の美しい少女──。少女はクスクスと笑いながら、少年へと歩み寄った。
「私に全然気付いてなかったのね?」
「きみ、は……」
驚きのあまり、口が上手く回らない。少女の方はというと、余裕な様子で微笑んでいる。
「私、キキっていうの。よろしくね」