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だいぶ昔にSNSでちまちま上げていたものです。
pixivにも上げましたが少し修正しながら投稿して行きます。
少年は、いつかこの檻の中から抜け出せることを夢見て、毎日を過ごしてきた。定期的に与えられる豪華な食事も、自らを害するものを阻む無機質な金属も、少年にはただ息苦しく感じられるだけだった。無機質な金属の檻から見えるものは、好奇心に満ちたたくさんの目。毎日毎日、それらは少年を射抜く。
檻に入れられているのはその少年だけではなかった。少年の住む檻の外に続くものは、別の檻。更にその先には、また別の檻が延々と続いていく。少年や少女、生まれたばかりの赤子さえもがみな檻に閉じこめられている。そしてどの檻でも、決まって定期的に豪華な食事が与えられるのだ。
いつだったか、少年は隣の檻に住む、少し年上の少年から聞いたことがあった。この檻は、更に巨大な檻の中にあるのだと。そしてその巨大な檻の外には、美しい青の世界が広がっているのだと。更に年上の少年は言った。運が良ければ、この檻から出られることがあるらしい。
隣の檻の少年は、少年ではなくなって行った。檻の中で成長していき、やがて青年になった。青年は変わらず少年に色々な話を聞かせてくれたが、ある日突然、青年はいなくなった。そして、青年がいた檻には生まれて間もない赤子が入れられた。少年は思った。青年は、青の世界に出られたのだろうと。
少年は強く願った。自分もこの檻を出て、美しい青の世界を見てみたい、と。毎晩毎晩、それだけを願いながら眠りにつく。次に目を開けたその時、この檻から出られていますように──。