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ハチミツ狩りのクマキラー  作者: 花庭ソウ
第1章 赤い靴団
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我らは熊切り

ダウリンはツバメで勢いよく駆けると、シャルフジーマとRBのちょうど中間あたりの空を高く登り、そこで一度ツバメを止めて、シャルフジーマを見下ろす。


シャルフジーマの胸元に葡萄の房のように連なっている顔が全てダウリンを凝視している。

シャルフジーマの後ろにある腕の壁も、そのどれもが全てダウリンの方へ向けられている。


シャルフジーマはこれまでとは違う敵の存在を確実に警戒していた。

ダウリンはそのシャルフジーマの様子を見ながら、顎をさする。


ふむ。あの程度の結界の反撃で様子見しているようじゃ、まだまだか。

まぁ、200年以上隠れて、勝てる相手にだけ糧にしてきた奴だからな。

こんなあからさま反撃を喰らったのは初めてだろう。


ダウリンは左手で刀の鞘と鍔を持つと、鯉口を切る。


「いくぞ、華断はなたち。久しぶりの戦だ。」


ダウリンが右手で刀の柄を握ると、刀をスラリと抜いた。

ダウリンの愛刀「華断」の刀身は美しく磨かれており、指を触れただけで切れそうなほど鋭利に研がれていた。

そして、その刀身を緑色の光がまるで炎のようにうねりながら包んでいる。


ダウリンは目を閉じると、戦いの前のお決まりの言葉を紡ぐ。


我らは熊切り。

我らは熊斬り。

我らが策で熊を捕り、

我らが剣で熊を薙ぎ、

我らが命で熊を討つ。

我らの先に阻むものなし。

我らの後に熊はなし。


忘れられた国の忘れられた戦歌。

必勝祈願の幟旗。

篝火の煙の匂い。

戦太鼓の低い打音。

隊長を中心に組まれる幾つもの円。

野太い声の合唱。


この歌を歌う時、ダウリンは一瞬遠い過去の自分になる。

初陣の緊張と興奮の感覚が、風のように体を駆け抜けて消えていく。


ダウリンは目を開けた。


そして次の瞬間、一気にシャルフジーマ本体の右腕目掛けて、ツバメを加速させる。

ダウリンの動きに応じるように、シャルフジーマも動く。

本体の右腕と腕の壁、さらには新たに樹海面から飛び出した腕とを合わせた何百本もの巨大の腕と手が、ダウリンに次々と襲いかかる。

ダウリンはツバメを足だけで操り、人間離れした軌道で襲いかかるシャルフジーマの腕達を潜り抜け、そのまま一度上空へと上昇する。

その後を腕たちがお互いを絡ませて大蛇のようにうねりながら、追いかける。

ダウリンはそれを確認すると、上空で捻りを加えながら真逆に反転し、真下の地面を見るような形にする。

目の前に大蛇の腕がものすごい速度で突っ込んで来る。

ダウリンは刀を構えると小声で呟く。


「藤宮一陣 紫風」


次の瞬間、大蛇となった腕がダウリンを飲み込んだ。

しかし、その手はダウリンを掴むことなくダウリンに触れた途端に裂けていく。

まるで麺を作る機械のように、太い一本の腕がダウリンに触れただけで細くれ長く裂け、そのまま空中に分解していく。

最後の腕が裂け、腕たちの猛攻が終わったところで、ダウリンは刀の構えを解いた。


シャルフジーマを見ると、右手側の腕はほとんどが消えてなくなり、様子見をしていた何本かの腕が樹海面に消えていくのが見える。


ダウリンは次に自分の右、シャルフジーマの左手側を見据える。

左側の腕はすぐに襲いかかるでもなく、ダウリンへの攻撃をどうすれば良いか決めかねているように見える。


そっちが来ないなら、こっちから行くぞ。


ダウリンはツバメを真下、樹海面すれすれのところまで下ろすと、そこで静止する。

華断を一度鞘に納めてからまた左手で鯉口を切る。

シャルフジーマの腕と手がダウリンを見下ろしている。


「藤宮六陣 紫草」


ダウリンがつぶやいた途端、ダウリンはシャルフジーマの左手側後方にいた。

先ほどまでダウリンを見上げていた腕たちは、今はダウリンの背中越しに見える。

先ほどまでうねりながら様子を見ていた腕たちはピクリとも動かず、しばらくして根元からばらばらと破片が崩れるように腕が空中へと溶けていった。


ダウリンは華断を鞘に納めるとまたシャルフジーマの方へとツバメを向ける。

そして自分の成果に驚いた。


え!?うわ。あそこきり漏らしてる。

あぁ。切り幅も揃ってない。

これは鍛え直さないといかんな。

いくらなんでも切り方が雑すぎる。


ダウリンは頭を掻きつつ自分の成果に反省していると、シャルフジーマがダウリンの方へと振り返る。

その顔は先ほどまでの余裕はなく、明らかな殺意をむき出しにしている。


ほう。ようやく本気出してきたのね。

よしよし。


「それじゃ、新人。お前の力、見せてくれよ。」


ダウリンはシャルフジーマへ向かって駆け出した。

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