表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハチミツ狩りのクマキラー  作者: 花庭ソウ
第1章 赤い靴団
30/59

未来の行方

生存者がいるという一報が入り、樹海の上は慌ただしくなっていた。


ナーシャは生存者をすぐに運べるように樹海盤の側に待機していた。

上空のアウル隊は付近を熱源探知して、他にも生存者がいないか念のため確認している。

RBでは生存者の受け入れ準備が進んでいるはずだ。

団長だけが変わらず、さっきと同じ場所で待機している。

景色でも眺めているのだろうか。

さっきから遠くの方をじっと見ている。


『こちらキンダリー。浮遊ポイントまで、残り50メトル。』


隊長の声がシーバから聞こえるが、どうもさっきから調子が悪いようだ。

こちらの声はかなり聞き取りづらいようで、今は一方的に隊長達が連絡をよこしている。


『ランナ。こちらRB。他に生存者はいた?』

『こちら、ランナ。リリパイセン、いないよー。3人以外にそれらしい熱源なし。なんか変なものは沈んでたけどね。』

『変なもの?』

『なんだろ。エンジン?みたいな。まだ動いていて熱を持ってる機械的な何か?』

『何それ。どこらへんにあるの?』

『こっから10キロ北西。広域でしか見てないから、それ以上はよくわからないや。』

『了解。それは今は無視しましょ。熊の方は?』

『そっちも、今のところ気配なし。ただ、たまーにすごく弱い反応があるんだよね。なんだろ、これ。遠くの熊の反応を拾ってるだけかな?』

『センサーが効きすぎてるんじゃない?前も同じようなことなかったっけ。』

『あった。やっぱりそうなのかなぁ。さっきは問題なかったんだけどな。帰ったらまた調整しなきゃ。』

『ナーシャ。そっちはどう?』

『こちらナーシャ。樹海盤付近は異常ありません。』


リリの質問にナーシャは、即座に答える。


『了解。キンダリー達が上がって来たらフォローお願いね。』


そう言ってリリの通信が切れる。

先程の緊張感とは違い、一仕事終えそうな雰囲気を皆の会話から感じた。


空は青く澄んでいる。

降り注ぐ日差しは少し暑いくらいだ。

あ。日焼け止め塗るの忘れてるじゃん。


ナーシャは失敗したと、内心舌打ちをしつつ、ウルフに覆い被さる格好になって、ハンドルに肘を預ける。


赤い靴に来て2年かー。


ナーシャは何となく昔の事を思い出す。

百人旅団に憧れ、将来は百人旅団に入ると決め、厳しい親の反対を押し切って熊狩団の養成所に入り、トップで卒業間近のところで、人生の目標としていた百人旅団が解散。

目標を見失い、この先の人生に悲観していた時に、百人旅団の元団長が団員を募集しているという話を聞いて、すぐに片道5日かかる審査会場まで行った。

募集1名に対して300人くらいの応募者が殺到し、ナーシャは絶望した。

それでも奇跡的に試験に受かり、赤い靴に入団した。

自分でもできすぎだろって思うくらいに、できた話だ。

何で自分を選んだのか聞きましたが、未だによくわからない。

それでも、この団は居心地もいいし、自分の成長も実感している。


じゃあ、この先は?


そんな問いが、団に慣れた1年前くらいから、今みたいな暇な時間に自分の頭の中にぽっと浮かび上がる。

団の先輩達はみんな在籍歴が3年以上と長いが、熊狩団では珍しい部類だ。

普通の熊狩団はもっとドライで、いい条件があればすぐに移籍するという話も聞くし、実際ナーシャもいろんな団から勧誘の手紙が来ていて、内容を読むと今の給料より高い条件を提示してきている団は多い。

ただ、ナーシャはこの赤い靴団を離れようとは今のところ微塵も思っていない。

この団は居心地がいいし、皆との相性も合っている感じがするからだ。


でもこの先、熊狩業を引退したらどうするの?


そんな浮かび上がった問いにナーシャは即答できない。

この漠然とした問いは常に心の端っこに身を隠している。

普段は考えもしないが、不意に姿を現してきて、ナーシャの心を揺さぶろうとする。


あまり先のことは想像はつかない。

けど、ずっと今の体力が続くわけではないから、どこかのタイミングで引退はしなくてはいけないだろう。

じゃあその先は?といわれると考えてしまう。

熊狩団に憧れてここまで来たのに、その熊狩団を去る時、私は次に何を目標にすればいいんだろうか。


昔の友人の中には結婚して子供ができたという子もいる。

手紙と共に同封された写真には、友人と旦那さん、そして友人の腕の中に小さい赤ちゃんがいる仲睦まじい家族の姿が写っている。

それを見た時は何とも思わなかったが、時折、その写真のことを思い出すようになっていて、それに自分で驚いたこともある。


あーだめだ。思考がマイナスになってる。

今は何も考えずに集中だ。集中。


ナーシャは起き上がって首を左右に振ると、気を取りなおす。

将来、未来なんてものは今の生き方次第で変わるもの。

今は今日を精一杯生きることを考えよう。


ナーシャは気分を変えるように、ウルフを操作して樹海盤を一周する。


よし。ウルフの調子もいい。

体力も万全だ。

あとはキンダリー達が上がってきたら、生存者を乗せてRBに戻って作戦修理だ。


ナーシャは深呼吸をして気持ちを切り替える。

シーバから団長の声が聞こえたのは、その時だった。


『全員すぐに逃げろ!RBに戻れ!』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ