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ハチミツ狩りのクマキラー  作者: 花庭ソウ
第1章 赤い靴団
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生存者の救出

「・・・おい。今の聞こえたか?」

「え?なんすか?」


イコリスには聞こえなかったようだ。

キンダリーはドアを叩きながら、叫んだ。


「中に誰かいるのか!いるならドアをノックしてくれ!」


キンダリーはドアにヘルメットを押し当てる。

すると、しばらくして微かだがトントンと弱々しい音がした。


「生存者がいるぞ。」


キンダリーがイコリスの方を向くと、イコリスも同じようにドアにヘルメットを押し当て、その音を聞いていたようで、深く頷いた。


『こちらイコリス。生存者がいます!ランナ先輩、熱源探知できますか。俺たちの横に部屋があるんですけど、その中っす。』

『ちょ・・待っ・・・て!』


さっきから何故かシーバの調子が悪いが、こちらの声は向こうには届いているようだ。

キンダリーはドアの中の生存者に話かける。


「俺たちは熊狩団の赤い靴だ!依頼でこの船を捜索しにきた!中の状況を教えてくれ!」


そう言ってまたドアにヘルメットを押し当てるが、今度は何も反応がなかった。

分厚い扉のせいもあるが、衰弱していて大きな声が出せないのかもしれない。


『たぃ・ょう、イコ・ぅ。はっき・出てな・ど、多分・・に1人・・・る。』


シーバーからのランナの声は途切れ途切れだ。


『こっちはそっちの声が聞き取りづらい。1人いるってことだな?』

『そ・。1人い・・』

『了解』


キンダリーはシーバに応答すると、中にいる生存者に呼びかける。


「今からいくつか質問するからノックで答えてくれ!Yesが1回、Noが2回だ!中の人数は1人か!?」


トン、と音が1回する。


「怪我はしているか!?」


トントンと、音が2回する。


「・・・潜樹服は着ているか!?」


キンダリーが一番気にしている質問をする。

通常の船であれば墜落用にいくつか潜樹服が置いてあるが、死ぬまでの時間が長くなるだけの気休めだと、置いていない船も多くある。

ここで2回ノックをされたら、たまたまこの部屋が気密性が良くてここまで生きていられているだけで、中の人間はいずれにしろ死ぬ運命である。

果たして、どちらか。


ノックが1回した。


キンダリーはその音を聞いて内心、安堵した。


『生存者1名確認。怪我なし。潜樹服装備。ただし衰弱している模様。救出後、すぐに現場から離脱する。』

『りょ・・い。レネ。う・・・れ準備ぃ・・・がい。』

『りょうか・。』


シーバの音からおそらく伝わっただろうことはわかった。


「さて、そうなると、この扉を早く開けないとだな。」

「でも隊長。どうやって開けるんですか?このドア蹴り破れなさそうっすけど。」

「それは、これを使う。」


キンダリーはポーチから四角い箱のようなものを取り出す。


「なんすか?これ?」

「団長とニルクが作ったハッキングツールだ。」


そう言いながら、四角い箱をスイッチの上の壁につける。


「え。それで開くんですか?」

「そうらしい。俺も詳しいことは知らんが、団長からはそう言われた。」


そう話しているうちに、四角い箱からピーという音がする。


「開いたぞ。」

「え。はや。」


キンダリーはツールをしまい、扉の前で中の人に呼びかける。


「今から扉を開けるぞ!」


そう言って、キンダリーは扉の横のスイッチを押すが、カチャという音が聞こえるだけで、ドアは動かなかった。

キンダリーはドアに手をかけて、左にスライドしていく。

すると徐々にドアが開き始めた。

イコリスもキンダリーと一緒に扉に手をかけて、扉を開けていく。


「おっも!」


イコリスは扉の重さに思わず声を出す。

キンダリーとイコリスの2人の力で、重い扉が徐々に開いていき、中の部屋の様子が見えるようになってきた。

扉が半分くらい開いたところで、キンダリーは背中を扉に押し当てて、さらに押し込み、ドアを開き切る。

部屋の中を見ると、ドアの手前に潜樹服を着込んだ男性が仰向けに倒れていた。


「おい!大丈夫か!」


キンダリーが倒れている男性の側に行くと、男性はキンダリーの照明に目を細めて眩しそうにしながらも、少し手を挙げてキンダリーの声に応える。


「イコリス。この人を頼む。」


キンダリーは立ち上がると、部屋の中に積荷らしきものはないか、手早くチェックしはじめる。


どこにある?書簡か小箱のようなものらしいが。


キンダリーは作戦会議の内容を思い出しながら、部屋を探す。

しかし、部屋はベッドと椅子しかない作りで、棚や収納といったものもほとんどなく、そもそも荷物らしい荷物もなかった。

ベッドの下も覗いてみたが、男性が着ている潜樹服の空箱があるだけだった。


空振りか。

墜落の前にどこかに移動して、燃えてしまったか。

もしくは、あの生存者が持っているか。


キンダリーはイコリスと生存者の元に戻る。


「どうだ?いけそうか?」


キンダリーの問いかけに、イコリスはキンダリーの方を見て一度深く頷く。

イコリスの見立てでは、まだ生存者の体力は残っていそうだ。

であれば、彼を無事に救出できれば、色々と聞き出せるはずだ。


『生存者を発見。それ以外で特にそれらしい積荷はない。これから生存者を連れて戻る。』

『りょ・・い。』


キンダリーは男性を抱えているイコリスの元に戻る。

イコリスは男性の潜樹服の浮遊機能を強めに設定し、男性を浮かせると肩に担ぐ。


「隊長。こっちはOKです。」

「よし。じゃあさっさと戻ろう。ここは居心地が悪すぎる。」

「同感っす。早く帰ってシャワー浴びて、キンキンに冷えた麦酒で乾杯しましょう。絶対美味いっすよ。」


イコリスの返事にキンダリーは思わず笑ってしまう。


「そうだな。だが、イコリス。一つ忠告をしておく。樹海の底で地上の話はしないほうがいいぞ。」

「え。なんでっすか?」

「地上に戻れなくなる。」

「え?」

「昔からの言い伝えだ。樹海の底には大精霊の楽園にいけず、彷徨っている死者達の幽霊が山ほどいると言われている。そいつらは樹海から出られないもんだから、樹海の底で樹海の外の話をする奴がいると、そいつを妬んで樹海の奥深くにまで引きずり込むと言われている。」

「えぇ。急に怖いこと言わないでくださいよ。俺そういうの苦手なんですよ。」


イコリスが急に天敵を警戒する小動物のように、キョロキョロと辺りを見回す。


「ははは。そんな怖がるなよ、イコリス。この話は教訓みたいなもんだ。作戦の終わりが見えると、気が緩む。気が緩むと地上の話、ようは作戦が終わった後の話をする。そうなると事故が起きやすくなる。だから、これは最後まで気を緩めるなって話だ。」

「・・・了解っす。上に上がるまで気をつけます。」

「そうだな。それでいい。よし。じゃあ行くぞ。」


キンダリー達はRBに帰還するべく、生存者を抱えて部屋を出ていった。

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