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ハチミツ狩りのクマキラー  作者: 花庭ソウ
第1章 赤い靴団
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艦長の違和感

熊を皆が倒した後、リリに呼ばれてダウリンがブリッジに行くと、リリが艦長席で地図と何かの紙とを見比べながら、悩んでいた。


「リリ、話ってなんだい?」


ダウリンはそう言いながら、副艦長席に座る。

すると、シーバからヤミロの声が聞こえた。


『アウル隊、これから船の捜索を開始します。』


ダウリンはシーバに向かって「了解」とだけ返事をした。

現在RBは救難信号が最後に途絶えたポイントに到着し、これからアウルのレーダーで沈没船の捜索を始めるところだ。


「さっき倒した熊のことなんだけど。」


リリは地図と紙から目線を離して、ダウリンの方へ向く。


「なんかおかしいんだよね。」

「おかしい?どういうこと?」

「熊がさ、思った以上に若い熊だったんだよね。」


そう言って、リリは先ほど睨めっこしていた紙をダウリンに渡す。

紙に書かれているのは、熊協が出しているこの辺りの縄張り図を写したものようだ。


「この縄張りを見るとさ、この辺りは縄張り同士が密集してて、隙間がほとんどないんだよ。」


確かに紙には黒い線で囲まれた縄張りがいくつもあるが、それぞれの線が隣の縄張りと重なっている。


「それで、さっきの熊が出たところは、ちょうどその印の所。縄張りの隙間ではあるんだけど、そこに辿り着くには東西南北どの方向から来ても、3つの縄張りは最低越えないといけないの。」


紙に一箇所だけ赤いペンでバツ印が書かれているが、これが先ほど熊が出た場所のようだ。

ダウリンはリリの言いたいことがわかってきた。


熊は縄張りを一度作ると、縄張りを広げるようなことはしない。

だから、基本的に縄張りが固定化した熊同士の縄張り争いというのは起きない。

ただ、たまに縄張りがまだ確定していない若い熊が縄張りに侵入すると、そこで初めて熊同士の争いが起こる。

熊同士の争いというのは、正面から互いにぶつかる真っ向勝負で、お互いが相手を傷つけながら、どちらかが逃げるかまたは力尽きるまで続く。

だから、縄張り争いの経験がある熊は、その体に争いの傷跡が残っているのが普通だ。

しかし、先ほどの熊は、そんな死闘を潜り抜けたような感じではなかった。


「なるほど。3つの縄張りを越えている割には、体には傷もなくて、動きも戦い慣れしていなくて稚拙だったな。」

「そうなの。普通はあんな若い熊、一歩でも縄張りに侵入したら、他の熊に八つ裂きにされると思うんだよね。」

「まぁ、それはそうだな。じゃあ、何故そんな弱い熊があそこにいる事ができたのか・・・。つまり、あの熊は縄張り争いをせずにあそこまで来れたということか。」


リリはコクリと頷いた。


「そう考えるのが自然だと思う。」

「でも、それってつまり・・・。」

「熊の縄張りが変わっている可能性が高いということね。」


熊の縄張りは固定化すると、余程のことがない限り変わらない。長年熊の動向を調査してきた熊協の資料がそれを裏付けていて、100年、200年と縄張りが変わらないというのは当たり前の話である。

裏を返すと、その縄張りが変わったということは、余程のことが起きたということだ。


「もちろん、これは予想だけどね。そもそも、ここの地域はほとんど人が入っていないから、縄張り図も20年くらい前から更新されていないし。実は昔から縄張りが変わっていた可能性もあるわ。」


確かに、紙の上にある更新日付を見ると19年前の日付だった。

19年の間に、縄張りが変わるような何かがあったと言うのは十分に考えられる。

ただその場合、気持ち悪いほどに日々熊を追いかけていることで定評のある熊協の調査団が動いていないのは何となく解せない。

この縄張りの変化は最近起きて、まだここの調査ができていないといった方が、まだ理解はできる。


「しかし、そうなると厄介だな。この縄張りの地図が当てにならないとなると、今いるこの場所も縄張りの外じゃなくて、どっかの熊の縄張りに入っているかもしれないってことだろ?」

「そういうこと。一応、ランナ達に一度周囲を調査飛行してもらって、熊の反応はなかったから、当面は大丈夫だと思うけど。ただ、かなり警戒しておいた方がいいと思う。」


リリの言うことはもっともだ。

熊の縄張りに入ったか可能性がある時は常に警戒を怠らないのが、熊狩団という生業をしながら長生きするコツだ。

一瞬の油断が命取りになる。

本来ならこういった不可解な事象が発生した場合、その時点で一度撤退をして作戦の立て直しをするのだが、今は時間がない。

ぐずぐずしていると帝国の急進派の息のかかった船と遭遇して、より危険な状況になるとも限らない。

であれば、作戦はこのまま。

すぐに対応できるように注意しておくしかない。


「縄張りが変わっているとしたら、やっぱりあれが関係してるのかな。」


リリの問いにダウリンは顎に手を当てて少し考える。


「恐らくね。俺の知る限り、あれ以外で縄張りを変える事ができるものは知らないな。」

「じゃあ尚更、船を早く見つけて情報を掴まなくちゃいけなくなったね。」


リリはそう言って睨めっこでガチガチに固まった体を伸ばすように背伸びをする。


するとアウルからシーバに連絡が入った。


『こちらアウル。レーダーに反応ありました。恐らく沈没した船だと思います。ポイント送ります。』

『RB了解。』


ヤミロの声にリリが答えながら、操作卓のスイッチを切り替える。

数字のカウンターが大量に並ぶ計器装置と操作パネルを見ながら、送られてきた座標と今の座標から位置を割り出す。


「ここから800メトルくらい先か。意外と近かったわ。」


リリはそう呟くとシーバに向かって指示をする。


『アウルはそのままポイントで待機。RBを500メトル先まで進めます。』

『了解。』

『ウルフ隊は私の合図でポイントに向かって。キンダリーとイコリスは潜樹装備の最終チェック忘れずに。』


了解とシーバから団員達の声が聞こえる。


「俺も出るよ。」


ダウリンは副艦長席から立ちながら、リリに声をかける。

リリは団長の方を向くと、頷きで返した。


『俺も行くよ。』


ダウリンはシーバに声をかけながら、ブリッジの出口に向かった。

皆さんお久し振りです。

お待たせしました。

これから章の終わりまで、1時間おきに投稿をしていきます。

ダウリン達がどうなっていくのか。

最後までお読み頂けると嬉しいです。


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