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ハチミツ狩りのクマキラー  作者: 花庭ソウ
第1章 赤い靴団
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アーメットのお誘い

手持ち無沙汰になってしまった。


ダウリンは団長室の椅子に座って外を眺めながらぼーっとしていた。


準備をしようと言ったものの、あの後すぐにシュクナから雷通が来たのでリリに取り次いだら、やる事がなくなってしまったのだ。

シュクナから依頼の詳細を聞いたリリは作戦プランを練り始めたが、ダウリンが副艦長席でその様子を見ていたら、そこにいたら邪魔だからと早々にブリッジから追い出され、他に行くところもないので団長室に戻って暇を持て余しているという訳である。


海は見飽きたし、散歩でもするかな。

あーまだ椅子と机が出しっぱなしだから、それを片付けるか。


そんな事を思いつつ団長室から出ようとしたところで、シーバから元気な声が聞こえた。


『団長ー!いるー?暇だよねー?』


ランナだ。

どうせお前は暇だろうとわかっているが故の、ストレートな質問だ。

普通の熊狩団の団長はこういう時は暇ではないのだが、事実、自分は暇である。

少し悔しいが、そのまま返事をすることにした。


『今は暇だよ。どうした?』

『よし!じゃあ団長!5分後に砂浜集合ね!』


ランナの急な召集に嫌な予感を覚える。

彼女が主催するもので、まともだったものは少ない。


『何?何する気なの?』

『だいじょぶ、だいじょぶ!簡単なお仕事だから!もうね、団長はそこにいるだけでいいから!ね!』


怪しすぎる。というか怖い。

なんなら言い方が、街の女の子を勧誘する怪しいおっさんみたいになっている。


『あー。ちょっとごめん。用事を思い出した。』

『えぇぇー!?』


今度は甲高い悲鳴のような声になった。

ランナには悪いが、身の危険は早めに回避しておくに限る。


『だんちょーう!そこを何とかー!お願いしますよぉー!』

『ランナ先輩、まじで誘うの下手すぎっす。』


ランナの怪しい勧誘にイコリスが突っ込んだ。


『団長。今からアーメットのミニゲームをやるんすけど、人数が足らないんで、入ってもらえないっすか?』


イコリスの誘いは簡潔で、怪しいところは全くない。

むしろ、ランナの誘い方が独特すぎるだけだった。

しかし、アーメットか。


ダウリンはすぐの返答をためらった。

なぜなら、アーメットはダウリンが最も苦手とするスポーツだからだ。


『それだったら、いつも見たいにロイド達を呼んで・・・って、そうか。アルビーが寝てるから無理なのか。』

『そうなんすよ。』


赤い靴団は人数が少ない分、今のように人手が足りない場面がよくある。

その時は大抵、ロイドと呼ぶ、機械で出来た人形をアルビーが操って不足分を補ってくれている。


アルビーが寝てると色々と不便なもんだな。

ダウリンはそう思いながら、誘いを受けるか考える。


『他に誰が参加するの?』

『えっと、俺、ナーシャ、ランナ先輩、ヤミロ先輩。あと、隊長です。』


5人。確かにもう1人いないとゲームのバランスが悪い。

それでもって、アーメットをやれそうな人間は残りのメンバーだと、レネかジョーリンくらいだが、2人とも今は忙しい。

そうなると必然的にダウリンに白羽の矢が立つことになる。


これは、しょうがないか。


ダウリンは覚悟を決めた。


ただ、あまりに下手すぎるので、予防線は張っておこう。


『わかった。ちなみに俺さ、アーメットめちゃくちゃ苦手でたぶん足引っ張ると思うけど、大丈夫?』

『大丈夫っすよ。ヤミロ先輩も同じこと言ってましたけど。2人は守護者をしてもらえればいいんで。』


ダウリンの次に苦手なのはヤミロだろうと思っていたが、予想は当たっていたようだ。

ヤミロも積極的にアーメットをやるタイプではないが、どうせランナに首根っこでも捕まえられて強制的に参加させられたに違いない。


『わかった。じゃあ着替えて砂浜に行くよ。』

『ありがとうございます!』


アーメット自体やるのは数年ぶりだが、うまくやれるだろうか。

ダウリンは不安を抱えながら、着替えるために寝室の方へと向かった。




ダウリンがTシャツに膝丈のパンツ、サンダルという格好で砂浜に行くと、先ほどまで何もなかった砂浜に横が50メトル、幅が20メトル、高さが10メトルくらいの簡易的なアーメット場ができていた。


アーメットは世界的に有名なスポーツで、人気も高い。

そのせいか、どこでもアーメットができるように持ち運び可能なキットというものが売られている。

もちろん、赤い靴団もそのキットを持っていて、暇があればアーメット場を作り、主にウルフ隊のメンバーがミニゲームをしている。


ちなみに正式なアーメットは7対7で戦う。

アーメットは簡単にいうと、空中に浮かぶ板にのり、円盤をパスしながら相手陣地まで進み、相手の籠に円盤を入れれば1点が入るというゲームである。


アーメット場の四隅には背の高い棒が立っていて、そこから放出されるマナにより、薄いマナの層が幾重にも貼った状態になる。

ここにコーハと呼ばれるマナに浮かぶ楕円状の板を浮かべ、マナの層に乗ることで選手は空中に浮く事ができる。


円盤はクリッツと呼ばれていて、金属を特殊加工した軽い材質が使われているが、これもマナの力を受けていて、握り方、投げ方等でスピードや軌道の変化がつけやすくなっている。

また、クリッツは3秒しか持てないというルールがあり、3秒たつと自動的にフィールド中央に転移するような機能もある。


このクリッツの3秒ルールのおかげで、アーメットの試合展開はかなり早い。

その為、いかにクリッツをチームで素早く回しつつ、ゴルカという円形の籠にクリッツを投げ入れるかがゲームの鍵となる。


ちなみに、アーメットの上手さはコーハの扱いでほぼ決まると言われている。

裏を返すと、それくらいコーハは扱いが難しいのだ。


コーハは両足を広げた形で乗るのがホームポジションで、この時、自分の体の左側が進行方向になる。

右足に体重を乗せると加速し、左足に体重を乗せると減速する仕組みになっていて、さらに足の親指のところにはそれぞれ押し込めるボタンがあり、右親指ボタンを押し込むと上昇、左親指のボタンを押し込むと下降するようにできている。

コーハの左右の動きは体の重心を使い、コーハの端のエッジと呼ばれる部分を立てながら曲がる。


これらの動きの組み合わせで、選手は自由にアーメット場を飛び回れることができる、と言われている。

ただ、ダウリンにとっては飛ぶことはおろか、コーハの上に立つことすら難しい。

コーハはマナの上では氷のように滑るので、上手くバランスを取らないとすぐに滑って落ちてしまうのだ。


果たして、コーハに上手く乗れるんだろうか、俺は。


ダウリンは陰鬱な気持ちになりながら、アーメット場へと向かった。

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