すずめの戸締り 映画の感想・考察
すずめの戸締りを見ました。
・岩戸一族について
鈴芽の苗字は岩戸で、岩戸鈴芽という名前です。岩戸隠れを連想することができ、おそらくアメノウズメの子孫という設定だと思います。
基本的に古事記、日本書紀といった日本神話をモチーフにしているのかもしれません。
・岩戸一族と宗像一族について
宗像一族は閉じ師のため、緩んだ封印を閉じる技術があります。対して鈴芽は、要石の封印を解いたり(ダイジン、猫は無理と言っていた草太さん)、扉を開いてとこよへ行ったりと開ける技術を持っています。
対の関係とみれば、表の岩戸一族(伊勢神社)、裏の宗像一族(宗像神社)となりますが、明らかに鈴芽の方が草太さんより能力の幅があります。
鈴芽は封印を解くだけでなく、封印をする能力も持ち合わせています。むしろ作中では封印の能力の方がフォーカスされていますが。
映画の描写で、何度も鍵のシーンがありますが、鈴芽は鍵を閉める描写と鍵を開ける描写(自転車、草太さんのアパートなど)があります。
これは鈴芽が、封印と解放の能力の双方を持っている表れです。
二つの一族に優劣はなく、宗像一族が封印に特化した一族と見ることもできます。
しかしながら、岩戸一族の方が宗像一族に比べて上位の一族だったと見る方が自然です。
・猫について
ダイジンは鈴芽が好きで、草太さんへは意地悪です。
黒白どちらの猫も人柱であり、分別があるサダイジンは使命に忠実です。
幼稚なあるいは自我の強い白のダイジンは、自分の役割が嫌で、解放してくれる主の岩戸家が好きで、封印のみで強いる下位の宗像家には悪感情を持っています。
草太さんが要石になった際は気にしませんが、鈴芽が身を挺して人柱となる決断をしたときは、ああいった選択になりました。
・猫について② 序列
白のダイジンが岩戸一族の式神、黒のサダイジンが宗像一族の式神と見るとお互いが懐いていた理由や、黒のサダイジンが草太さんをほったらかしにしようとした叔母さんに憑依したことへの説明もつきます。
しかし、その場合、ダイジンが、ウダイジンでないことが疑問に残ります。
左大臣と右大臣では、左大臣の方が偉く、幼稚なダイジンと使命に忠実なサダイジンとの二匹でみれば、その序列も理解できます。
しかし敢えてウダイジンとしないからには理由があるのでしょう。
そもそも上位の岩戸家の式神が宗像家の式神より下なことは不自然です。草太さんのおじいさんもダイジンへは敬意を払っていました。
ダイジンは右大臣ではなく太政大臣なのかもしれません。
・猫について③ 人間も含めた序列
猫のダイジン、サダイジンにもう少し考えを広げます。
ダイジンもサダイジンも両方とも岩戸家の式神という考え方です。
つまり序列は岩戸家>式神>宗像家です。草太さんの祖父がダイジンに敬語だった理由かもしれません。
鈴芽が苗字を名乗っていたら、どんな対応だったのでしょうか。
・草太さんとの関係
鈴芽が初めて会ったはずの草太さんに既視感を感じたのは、とこよで、過去に会ったことがあったからです。
ただこれ以外に、深い関係性の一族同士で惹かれたと見ることもできます。
過去の記憶だけだと、学校をサボり廃墟までわざわざ足を運ぶには理由が弱いです。同じ使命を持った一族の邂逅と見る方が納得できます。
過剰反応をした鈴芽に対して草太さんが運命を感じていないのは、過去の記憶がないだけでなく、能力が低いことも原因かもしれません。
先に探していたのにも関わらず、後ろ戸の発見が鈴芽より大分遅かったことからも、幅だけでなく能力値も鈴芽の方が上です。
・母親について
叔母の話から、娘の鈴芽に大金を残していることが分かります。シングルマザーであることを考えると多額の生命保険に入っていたと考えるのはおかしくありません。
ただ、生命保険を姉のお金と表現することには違和感があります。
鈴芽の母親は岩戸家、アメノウズメの子孫の一族の長だったのでしょう。
シングルマザーであった理由も、岩戸一族の長で、役目があったため旦那と一緒には暮らせなかった。要石の近くで暮らす必要があった。
なんなら、この人がいなくなったので、ミミズの封印が緩んだのかもしれません。
母親は東日本大震災のときに亡くなっていますが、もしかしたら順番が逆で、この人が亡くなったせいで封印が弱まり、ミミズの出現、震災へと繋がる。
それが同じ日に起こったため、震災で亡くなったとみなされていただけだった。
サダイジンが要石をしていなかった理由はこれかもしれません。
・対の関係について
この作品は封印解放、鍵の開け閉め、男と女、黒と白など対の関係を度々表現しています。
岩戸家は女系の家系で、母子家庭で、友達も助けてくれるのも女性。宗像家はおじいさんと暮らし、友人も男性。
ただし対等な関係ではありません。
封印と解放ですが、草太さんは封印しかできず、鈴芽は両方できます。
鈴芽は、女性だけでなく、おじいさん、芹澤など草太さんの人間関係からも協力を得られます。
黒と白は、白が太政大臣で黒が左大臣
優劣のあるペアの物語です。
・黒塗りについて
草太さんのもつ古文書に黒塗りが見受けられます。
みみずの封印地が黒塗りになっており、作中では要石を見つけられず困ってしまいます。
だれか第三者に封印が解かれないように、場所を隠したのでしょうか。
この作品は封印解放、対の関係が多い作品です。
古文書の描写と対になるのは鈴芽の日記です。母親がいなくなってしまったとき、絵日記を黒塗りで消しています。
閉じ師が、要石を封印する場合、なにかしらを人柱にする必要があります。その悲しさを表しているのではないでしょうか。
そして対の関係に優劣をつけるため、悲しみ以外にも、加えるのであれば。
古文書の内容は悲しみだけでなく、自分がそこへ訪れて封印を解いてしまうことを危惧したのかもしません。
第三者ではなく自身が訪れないようにするために。
ただ、その場合いつも上位である鈴芽側が宗像一族より単純になります。
他の要素があるのかもしれません。
・沖縄、北海道がない理由
古事記、日本書紀の時代において日本ではないからではないでしょうか。
物語は九州から始まり、震災のあった兵庫、東京、宮城へと移動していきます。沖縄北海道は最近日本になったからでしょう。
・みみずについて
どう見ても龍です。ただ、モチーフがわかりません。ヤマタノオロチ、日本列島の形、ナマズ。
これはなんでしょうか、教えて欲しいです。
・静岡が飛ばされたわけ
地震、火山といえば静岡です。草太さんの持つ古文書には、東京でみみずが覚醒した姿と同じ描写がありますが、過去の富士山の噴火とも見えます。
過去大災害が起こって富士山ができた。東京であのまま人柱の要石をささなければ、富士山の隆起と同じだけの災害が起こったのかもしれません。
逆に過去、完全な形での災害があった富士山のある静岡は、やることがなかったのではとも思います。
・後ろ戸について
後ろ戸が廃墟に発生する理由は、最後に明らかになりました。ただ、それだけでしょうか。
この作品は作中の人物のセリフがミスリードのときがあります。非常にそれっぽいのですがどうでしょうか。