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コロシアムが完成したらしい

「え?もう完成したの?」

「らしいよ。あのエルフが念話を使って嬉しそうに伝えてきたから」


どうやら、コロシアムのセッティングが終わったらしい。

イタリアの昇華者である、サラの試練の界を借り、あのエルフことフレディがコロシアムを作っていた。

なんでも、サラとフレディは仲が良いらしく、二人で協力して作っていたらしい。


「私達が本気で暴れられるように、馬鹿みたいに硬い結界と、熱と冷気を遮断する結界を張ってるんだって。だから、遠慮なく焼き殺しに行くからね?」

「じゃあ私も氷漬けにして、凍死させてあげる。捕まったら終わりだって思ってね?」


お互い相手を挑発しているが、相手に敵意はカケラも見せてはいない。

むしろ、ピッタリとくっついてイチャついているまである。


「来たよ〜」

「ん?また血を吸いに来たの?アンナ」

「あまね〜」


二人でイチャイチャしていると、久しぶりにふわふわした口調のアンナが転移してきた。

まあ、アンナが転移してきた理由はなんとなく予想できる。


「血を吸いに来たのもあるけど〜、聞いたよ〜?コロシアムが完成したらしいね〜?」

「フレディが言ってたの?」

「そうだよ〜。念話で〜興奮気味に話してて気持ち悪かったなぁ〜」

「可哀想なフレディ…」


影でアンナに気持ち悪いって言われるフレディ。

別に大した接点は無いけど、私はそんな事を言ったりはしない。

…まあ、接点が無い分気分次第では悪く言うかも知れないけど。


「それと〜、今日の……こっちだったら依夜かな〜?夜の9時くらいに〜、集会を開くんだって〜」

「ああ、それね?丁度私のところにもチェンから念話が飛んできたよ」


彩にもチェンから念話が飛んできたのか。

でも、私には来てないんだよね。


「そう言えば、チェンとも接点が無かったね……あれ?もしかして私って浮いてる?」

「「え?今更?」」

「え…?」


マジ…?

私って、昇華者の中で浮いてるの?

そんなにヤバいことした覚えないんだけど?


「いや、だって天音は天使だし…」

「天使だからね〜」

「いや、天使だからって…」


「しかも、アイナと喧嘩してたし」

「してたね〜」

「確かにしたけど…」


「ハワイの件を考えれば、変に突かずある程度距離を保つ方が賢明じゃない?」

「じゃなぁ〜い?」

「そんな事は……あるのか」


言われてみれば、そんな気がしないでもない。

天使という種族の厄介さを知っている昇華者からすれば、天使になってからそう時間が経っていない時でさえ問題を起こした私を、警戒しないはずがない。

その事を考えれば、私が昇華者の中でも浮いているのは納得だ。


「……とりあえず、アンナとは念話を繋げられるようにはしておきたいんだけど?」

「良いよ〜?私は別に困らないしね〜」


ふわふわとした口調で話すアンナは、いつでも私と念話を繋げられるようにしてくれた。

これで少なくとも彩以外に話す人が居ないという状況にはならなくなる。

あとは、他にも交流の輪を広める必要があるんだけど…


「私と接点があるのって彩とアンナとアイナと…マイケルくらい?」

「だね〜。昇華者は十三人居るんだから〜、もっと他の人とも仲良くしたら〜?」

「仲良くって言っても……交流の輪を広めたいとは思ってるけど、そこまで他の人に興味がないんだよね」


別に、最低限彩が居ればそれでいい。

それに、彩が居なくても私は香織と矢野ちゃんが居るし、実家に帰ればお母さんも居る。

これ以上交流の輪を広める必要はあるんだろうか?


「う〜ん?そこで交流の輪を広めようとしない辺り〜」

「天使って感じ…」

「それな〜」


元々人と関わるのが苦手だった私だけど、天使化で更に悪化した。

進んで他種族と関わろうとせず、積極的に他種族との接触を拒む天使の性格は、ある意味とても私と相性が良かった。

そんな理由からも、私には他者と交流する気が無く、ひたすら彩とアンナの3人で仲良くする日々が続いている。

もちろん、私には今の生活に対する不満はない。

むしろ今くらいが丁度いいまである。


「まあ私が交流の輪を広めるとして、誰なら受け入れてくれそうだと思う?」

「ん〜?サラはいけるんじゃな〜い?」

「確かに、サラなら受け入れてくれそうだね」


私が誰となら交流できそうか聞くと、二人してまずはサラだと言った。

サラとは特に接点はないし、話したこともないけど…確かに、女同士という事で仲良くしてくれそうだ。

…アイナとは上手く行かなかったけど。


「次いでアイナかな〜?土下座して謝って〜、あの日のことは水に流してもらえればいけるんじゃな〜い?」

「アイナ…そんな事で許してくれるかな?」


土下座くらいで許してくれるなら苦労はしない。

誠心誠意謝罪したところで、あれだけ喧嘩すれば許されるとは思えないんだけど…


しかし、アンナはそうは思わないらしい。


「許してくれるんじゃな〜い?まあ〜、アイナが許してくれるかより〜?天音が侮辱に耐えられるかだけどね〜」


土下座くらいでは許してもらえないと考えている私とは反対に、アンナは許してもらえると思っているらしい。

そして、肝心なのはアイナが許してくれるかではなく、私が侮辱に耐えられるかだと。


「侮辱に耐えられるか、ね…?確かに、天音の―――天使の性格上、耐えられるとは思えないね」

「仕方ないよ〜。天音は天使だも〜ん」


……いい加減、私が天使だからって理由で話を進めるのは辞めてほしい。

私は別に天使の中でも異質な方だし、天使はみんながみんなそうって訳じゃない。

彩やアンナからすれば、悪魔ってだけで悪者認定されたり、吸血鬼ってだけで忌み嫌われるようなもの。

本当、あんまり私の事を天使だからって言わないでほしいね。


「まあそこは頑張って耐えてみるよ」

「耐えられるのかな〜?」

「じゃあ、私は耐えられないに100ドル賭ける」

「じゃあ〜、私は耐えれるに100ドル〜。天音は〜?」


何故か始まった賭けに、彩とアンナが100ドル賭けてる。

しかも、私までやる空気になってるし。


「私?私は……耐えられないに、かな?」

「天音がそんな事言ってどうするのさ〜」

「だって、あいつ性格悪いもん」

「そうかな〜?単に〜、天音の事が嫌いなだけじゃないの〜?」

「それはそれでちょっと傷付くなぁ…」


まあ、確かにアイナは私のことが嫌いだろうけど…あの性格の悪さは私のことが嫌いだからって理由なら、流石にちょっとは傷つく。

私って、嫌われてるんだな〜って。


「…そう言えば、アンナって誰にも嫌われてないよね?」

「ん〜?そうだね〜、別に〜嫌われてないね〜」

「あれってどうしてなの?」

「そりゃあ〜、私が人畜無害だからだよ〜」


度々血を吸いにくるのは普通に有害……いや待てよ?

アンナって基本的に女性からしか血を吸わない。

男共からすれば人畜無害だし、女からしても誰とでも分け隔てなく接するアンナは、多少血を吸われても許せるのかも。

私だって、血を吸いにくることは許してるし。


「まあ〜?私も誰かと険悪にならないように気を付けてるし〜?そういう意味でも〜、私は嫌われてないんだよ〜」

「ふ〜ん?じゃあ、私とアイナか選べって言われたら、どっちを取る?」

「アイナ」

「は?」


いや…え?

そんな速攻で私が捨てられるとは思わなかった。

アンナにとって、アイナの何処が良いんだろう?


「だって〜天音には彩が居るでしょ〜?なら〜、別に私が居なくても良いじゃ〜ん?」

「確かに…」

「それに〜、アイナはよく美味しい魚をくれるからね〜。血だけ飲ませて、それ以外に何もしてくれない彩と天音は〜、ね〜?」

「「うっ…」」


なるほどね…

そうやってアンナを釣るのか…

私達は、とりあえず血を飲ませれば良いってスタンスだったけど…他にも何かあげたほうがいいのか。


「まあ〜?ここに来ると確実に昇華者二人分の血を吸えるから〜、悪くはないけどね〜?」

「そっか…アンナ、ワインいる?」

「いらな〜い。ワインはサラの所に行くと〜、いくらでも貰えるからね〜」


サラってよくワインをあげるんだ? 

……ワインってイタリアだっけ?

でも、確かにフランスとイタリアで作られてそうなイメージはあるね。

サラから血を吸う時に、ワインを貰ってるのかな?


「まあ〜、二人が用意してくれるナニカを楽しみにしてるよ〜」


そう言って、アンナは彩の首に噛み付いて血を吸ったあと、私の血も吸った。

その間、何か無いか二人で探し、たまたまあった羊羹を渡して帰ってもらった。


「…西洋人ってあんこあんまり好きじゃないらしいよ?」

「仕方ないじゃん。日本のお菓子がそれしか無かったんだから」


私達は、次までに日本のお菓子を用意しておこうと考えて、久しぶりに色々なパンフレットを開いた。


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