香織をデートに誘おう!(矢野)
一応、今回の主役は香織と矢野ちゃんのつもりです。
「どうでした?」
「何とかなった。」
「マジですか…」
お昼休み、矢野ちゃんと一緒にお弁当を食べていた。
香織は、委員会に行っているので、いない。
「香織とは、うまく行ってる?」
「はい、優しくしてもらってます。というか、今日学校に来たら先輩の方から来てくれて…」
私が倒れたのを見て、怖くなったのかな?
「今ならデートの誘い、オッケーしてくれるんじゃない?」
「え?本当ですか!?」
「今、矢野ちゃんに甘くなってるんでしょ?普段よりは確率は高いんじゃないの?」
買い物デートくらいなら、してくれそうだけど…
「何したらいいでしょう?」
「取り敢えず、オッケーしてくれそうなものにして、許可取っておけば?ボーナスタイムは、いつまで続くか分からないからね。」
「そうですね、じゃあ今流行りのダンジョンデートに誘ってみようかな?」
ダンジョンデート?
デートスポットとしては、最悪じゃない?
戦場に恋人連れて行く様なものだよ?
「ふふ、ダンジョンデートっていうのは、自分の力を恋人にアピールするデートのことです。吊り橋効果ってやつです。」
「あー、なんとなく分かったよ。でも、ずいぶん命懸けのデートだね…」
「まぁ、死傷者多数ですから…でも、恋人を命懸けで守った事で、大怪我することになったけど、オッケー貰えたって話もあるそうですよ?」
恋人を庇ってねぇ…確かに、惚れそうなシチュエーションだね。
体を張らないといけないけど、確かにデートスポットに使えそうね。
「そうだ、縁起でもない話しだけど、私が昇華者になって、大金を手に入れたら私の方に来る?」
「もうすぐ、プロポーズしようと思ってるのに…とんでもない話ですね。」
「もしもだよ。まぁ、昇華者になるってのはありそうだけど。」
「ありそうというか、確定じゃないですか?」
どうだろう?でも、調べた感じ試練の界で間違いなさそうなんだよね〜。
「まぁ、玉の輿を狙うなら白神先輩ですね。」
確かに、昇華者の年収やばかったかな〜。
「それに、その頃の白神先輩はかなり強くなってるでしょうし、守ってもらえる、という点でも白神先輩ですね。」
昇華者は、一人で国と戦えるんだっけ?実質国に守られてる様なものだね。
「そう?じゃあ香織じゃなくて、私を選ぶの?」
「はい」
え?
え?
世界から色が消えたって表現の仕方はよく聞く。でも、まさか自分に起こるとは思わなかった。
優花は、天音の方がいい?
そんな…
でも、私が天音に勝てる事なんてない。
今は、財産で勝っていても、天音が昇華者になれば、大金を得るだろう。
実力で勝てるはずがない。
愛、母親の為に高校入学と同時に冒険者になった天音。母親の事を思っての行為だ。
身内への愛は強いだろう。私みたいに、下心で接してるわけじゃない、相手のためを思っての…
権力、国を黙らせる程の発言力がある昇華者だ、下手したら、いや普通に総理大臣よりも、権力を持っているだろう。
地位、総理大臣並の地位を手に入れるはずだ。中小企業の社長令嬢如きが、敵う訳が無い。
駄目だ、勝てない…
そんな…また私は、大切な人に見放されるの?
「嘘に決まってるじゃないですか。」
え?
「少し前の私なら、白神先輩を選んでいたかもしれません。でも…そうですね、白神先輩は私の告白、受け入れてくれますか?」
天音…
「んー、断るでしょうね、私は同性愛者じゃないし。」
「ですよね。でも、柊先輩は受け入れてくれるはずです。だってあの人は私のことが好きだから。」
私は、優花の事が、好き?
「恥ずかしいのか、すぐにいじめてきますけど、まぁ、照れ隠しでしょうし。」
照れ隠し…
「それに、私も先輩の事が好きなので。白神先輩、貴女とは付き合えません。」
「良かった、ちゃんと両思いなんだね。」
「はい!」
優花は、私のことが好きなんだ…優花は…
不思議と涙が出てきた。
そして、声も出てしまう。
「ん?もしかして、香織?」
「え?」
やばい、天音に気付かれた!
私は、走って逃げた。
「ーーーー!!」
何か、聞こえた気がした。でも、私はそのまま走ってトイレに駆け込んだ。
そして、涙を拭いたあと、教室に戻った。
その途中、
「盗み聞きしてたよね?」
天音に出会った。
「…うん。」
怒られるかな?
「良かったね、矢野ちゃん…優花ちゃんに好きだって、言ってもらえて。」
「…うん。」
その時、チャイムが鳴る。
「あらら、あとは二人で話してね?」
そう言うと、天音は教室に向かった。
私も、教室に戻った。
放課後
校門の前で優花を待っていると、後ろが騒がしくなった。
「何事?」
私が見に行くと、優花が不良達に絡まれていた。
私は、後先考えずに走り出す。
「何してるの!?」
不良共に向かって怒鳴る。
不良共の注意がこっちに向いたすきに、優花が私の元に走って来る。
「なんだよ、俺はちょっと遊ぼうぜって言ってるだけだぜ?」
「優花どうなの?」
優花は、首を横に振る。
「どういうこと?」
「んだよ、うぜぇなぁ!どけよ!」
私は、不良Aを睨みつける。
「ああん?女だからって殴らねぇとでも思って、ギヤァァァ!!」
不良Aは、後ろから股間を蹴り上げられる。
「何してくれてんの?」
天音だ。
しかも、一般人でもわかるくらい魔力を放ってる。
そして、不良共に向き直り、
「私の親友に何してくれてんの?」
不良共は、顔を青くしている。
「何?死にたいの?」
天音は、手を変に伸ばしたかと思えば、空間が歪み、中から剣を取り出す。
「これでも、ゴブリン討伐だけで、十万は稼いでるの。ゴブリン一匹で、五百円、いったい私は何体のゴブリンを倒してるでしょうか?」
一匹五百円だから…二百体!?
「人型のモンスターとの戦闘経験は結構あるの。どうやったら一撃で殺せるとか、どうやったら沢山痛めつけられるか、よーく知ってるの。」
やばい、天音が捕まる。
「はぁ、なんか答えろよ、馬鹿共がよぉ!」
天音は、近くにいた不良に剣を振り下ろす。
「ぎゃあああ…あれ?」
「偽物に決まってるでしょ?」
それを聞いて、この場の全員が安心する。
「もちろん、本物も持ってるけど。」
しかし、この言葉で再び空気が凍りつく。
「大丈夫、回復魔法は得意だから。沢山苦しめるよ?」
そう言って、股間を蹴り上げられ、倒れている不良に回復魔法を使う天音。
「どうする?お前ら程度、一方的にボコボコにできるくらい私は強けど。」
そう言って睨むと、不良の一人が悲鳴を上げて逃げ出した。
それを引き金に、不良共は逃げ出した。
「大丈夫だった?」
「掴まれた腕が赤くなったくらいです。」
「見せて。」
確かに、優花の右腕が赤くなっている。
天音は回復魔法を使う。
すると、腕はすぐに元に戻った。
「ありがとうございます!」
「速く帰るよ、先生に呼び止められる前に。」
そう言って、天音は走って行った。
そして、私達が校門を出たくらいで、先生達が出てきた。
「白神先輩、大丈夫ですか?」
「停学、退学なんて怖くないわ。昇華者として、未来は保証されてるからね。」
「確かに…白神先輩が退学になれば、むしろ攻略が進むので、いいくらいですね。」
多少の問題なら、昇華者になればもみ消せるだろう。
「ねぇ、3人でダンジョンに行かない?」
「「え?」」
「香織と矢野ちゃんのダンジョンデートも兼ねてさ。」
ダンジョンデート…
「行きましょう、柊先輩…いや、香織先輩!」
優花は私を本気で惚れさせたいらしい。
「いいよ、行こうよ、ダンジョンデート。」
私は、優花のデートの誘いに乗った。
次回、香織と優花ちゃんのデートです。