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媚薬

浴室

アルビノと間違われるほど白い肌を持つ少女が、シャワーを浴びている。

そして、気を抜くと人化が解けて、すぐにクリーム色になる髪を丁寧に洗う。

少女がシャンプーを洗い流そうとした時、


「入るよー」

「…は?」


突然、浴室の外から声がかけられ、扉が開く。

そして、見た目は少女同い年ほどの、赤みがかった髪の少女が入ってきた。

天音と彩だ。
















私は今、彩にシャワーを浴びせてる。

彩は結界で防いでるけど…


「邪魔な結界だね。これさえなければ、氷点下のシャワーを掛けられたのに。」

「浴槽のお湯がどんどん冷えてるんだけど?」

「彩なら、すぐに温められるでしょ?」


私は少しだけ…そう、少しだけ怒っている。

少しだけだからね?

決して、キレてるわけじゃないからね?


「それで?どうして私が居るのに入ってきたの?」

「その…裸の付き合いって言うじゃない?」

「あれ、精神的に裸…つまり、ホンネで話すときに使う言葉だよ?それも、男同士で。物理的に裸で、女同士だとそっち系にしか聞こえないんだけど?」


彩には悪いけど、ちょっと疑ってしまった。

この悪魔、もしかしてそっち系の趣味なのか?って。

というか、めっちゃ顔真っ赤にしてるじゃん。


「あー、今すぐ出たほうがいい?」

「どっちでもいいよ。わざわざ外に出て、冷えたらあれだし。」

「氷点下のシャワーを掛けながらそれ言う?」

「なんのことやら?」


そう言いつつ、まだ氷点下のシャワーを掛け続ける私。

そのうち彩がキレて、水蒸発させそう。

…やってみるか。


「ねぇ、いつまで掛ける気?」

「彩が反省するまで。」

「私、だいぶ反省してると思うんだけど?」

「いいや、してないね。」


私は、シャワーの出力をあげて、更に浴槽の温度を下げる。


「足冷たいんだけど?」

「温めたら?」

「うん、喧嘩売ってるのかな?水に停止混ぜてるよね?」

「なんのことやら?」


私が肩をすくめてうっざいポーズを取ると、彩の額に青筋が見えた。

よしよし…この調子。


「そろそろキレるよ?」

「ふ〜ん?」

「いいんだね?」

「だから?」


うっぜー!

やってるの私だけど、超ウザい。

彩なんて、顔引き攣らせてピクピクしてるからね?

これは、かなりウザい。


「天音、最後の警告だよ?それを止めなさい。」

「ヤダって言ったら?」

「その胸を形が変わるまで何度も握る。」

「揉むじゃなくて?」

「揉むじゃないから。握るだから。」


絶対痛いやつじゃん…

握るっことは、手加減なしで掴んでくるって事でしょ?

絶対痛い…


「どうするの?」

「断る」

「あっそ。私は警告したからね?」


すると、加速まで使って、彩は私との距離を詰めてきた。

そして、私の胸をがっしり掴んで、そのまま引っ張る形で脱衣所に出る。

そして、そのまま吸水マットに押し倒される。

めっちゃ痛いんだけど…


「さて、謝るなら許すけど?」


やばい…目が完全に殺るときの目だ…

どうしよう…辞めたほうがいいかな?


「あ、謝ります。」

「よろしい。で?なんて謝るの?」

「ま、誠に申し訳ございませんでした!!」


私は、彩に胸を掴まれた状態で謝った。

あれ?

この状態不味くない?


「あの、この状態かなり「ああ?」いえ、なんでもっ!?」


その時、空間のゆらぎ…転移の気配を感じた。

私は、転移の気配を感じてかなり焦る。

ここに転移してくるのはアンナだけとは言え、見られるのは不味い。

だって、お互い素っ裸で、押し倒されてて、彩は私の胸を掴んでる。

完全にそれじゃん!!

やばいやばいやばいやばいやばい!!


「お風呂!早くお風呂入ろう!!それなら、変な目で見られないはず。」

「いいけど、あの冷水風呂には天音が入ってね?」

「いいよ?私、冷たいものは大丈夫だから。」


私には冷気無効がある。

氷点下の水風呂くらい大した事はない。

それよりも、アンナにこの状態を見られる方がよっぽど不味い。

私は、強引に彩を浴室に連れ込んだ。

その直後、アンナが転移してきたのがわかった。


「ふぅ…これで、アンナに変な目で見られないはず。」

「別にいいじゃん。私はカップリングされても問題無いけど?」

「…え?」


私は、彩から距離を取る。

まあ、狭い浴室じゃあたかが知れてるけど。

それよりも、彩がそっち系だったことに驚いてる。


「彩って…百合なの?」

「別に?天音が特別なだけだよ?」


そう言って、彩は私の頬に手を伸ばしてくる。

不思議と、不快感は感じなかったけど、アンナの気配が近付いてきているのを感じて、すぐに浴槽に入る。


「二人てお風呂に入ってるの?」


外から、アンナの声がかかる。

どうやら、中まで来る気はないみたい。


「うん。彩が途中で入ってきてね。それで、せっかくだからって事で一緒に入ってるの。」

「そっか。彩、頼まれてたお酒、用意できたよ?」

「ありがとう。後で血の入ったアップルパイを持ってくよ。」


血の入ったアップルパイ…美味しいのかな?

いや、アンナは吸血鬼だから、血が入ったものは美味しいと感じるのかも…

それと、頼まれてたお酒?

ヨーロッパの方で作られてる貴重なお酒なのかな?

まあ、お風呂をあがったらわかるか。


「じゃあ、私帰るね。」


そう言って、アンナは転移で去っていった。

さて、また二人だけになった訳だけど…


「私が特別って、どういうこと?」

「そりゃあ、天音は死ぬまでずーっと一緒に居てくれるんでしょ?それくらいの関係がないと、縁の鎖は壊れちゃうかな?って。」

「別に、そんなことしなくてもいいと思うけど…」


すると、彩が私の肩を掴んで、


「天音、ペットや奴隷には、しっかりと首輪とリードを付けておかないと、どっかに逃げちゃうよ?」

「彩…貴女がそんなことを言うなんて…」


私としては、嬉しい限りだ。

やっぱり、わざと追い詰めた甲斐があった。

あの時の彩は、精神的に瀕死で、今にも壊れそうだった。

傍から見れば、日本人にしては珍しく気の強いという印象を抱くだろう。

それに、手に負えないモンスターをすぐに倒しに来てくれて、慈善活動にも積極的。

誰もが、彩のことを強い昇華者だと思っていただろう。

しかし、実際はそうじゃない。


「ねえ、ずーっと一緒に居てくれるよね?」

「もちろん居るよ?だから、そんなに近付かないで。恥ずかしいから。」


別れが嫌で、奴隷になるというような条件でも飲んでしまうほど、彩は弱かった。

最近は、特にそれが顕著になってる。

彩は、普段から色々な所に行ってるから、色んな人と話して、多くの人に囲まれてる。

たとえ多くの人に囲まれていても、家に帰ってくると一人だ。

だが、最近は私がいる。

しかし、私と不仲になった時、ほんの短い時間だけど、一人になる苦痛を味わった。

アンナが居たから正気を保てたかも知れないけど、もしあの時アンナが居なかったら、彩がおかしくなってたかも知れない。


「彩、そろそろお風呂を温めてほしいな〜」

「どうしようかな〜?」

「私と一緒に、お風呂入りたくない?」

「今すぐ温めてあげるから待ってて。」


チョロい。

これ多分、私に愛に近い感情を持ってるね。

それか、恋してるか。

…流石にそれはないか。

どうしよう、香織と矢野ちゃんに百合カップル生活について、詳しいこと聞いておいた方がいいのかな?


「う〜ん、熱くない?」


私が少し考えている間に、お風呂の温度がどんどん上昇してる。

明らかに四十度以上ある。

そのうち沸騰し始めそう。


「熱いかな?」

「いや、熱いでしょ。」

 

確実に五十度ある。

さっき、四十度以上あるって言ってたけど訂正、五十度以上あるの間違いでした。


「止めてくれない?じゃないと、もう一回氷点下までさげるよ?」

「やってみたら?私の熱と天音の冷気、どっちが勝つかな?」


うわ〜不毛な戦いになりそ〜。

こんなの、私の近くは凍り付いて、彩の近くはどんどん蒸発するだけじゃん。


「不毛な戦いになるだけだからやらないよ?」

「ケチ」

「ケチじゃない。普通の判断。」


…彩って、こんなキャラだっけ?

もしかして、私のせい?

いや、私が彩を壊した事に変わりないんだけど…


「あー…私もう上がっていい?」

「いいよ?上がったもお酒は飲まないでね?」

「飲まないよ。彩が上がってくるまで待ってるから。」


はあ、今日になって急に彩がおかしくなってた気がする。

変なものでも食べたかな?

一回、家の中にある食べ物を全部調べてみよう。

私は、髪についた水を凍らせて、魔力で砕く。

こうすると、一瞬で髪を乾かす事が出来るのだ。

…髪にどれくらいダメージがあるか知らないけど。


「ドライヤー代が浮くとは言え、髪へのダメージが未知数なら辞めたほうがいいのかな?」


しかし、今日もこれで乾かしたので、もう手遅れだ。

明日から辞めよう…あれ?昨日も同じこと言ってた気が…

…うん、深く考えないようにしよう。

















キッチン


「媚薬入りチョコ?」


私は、彩が変なものを食べてないか確認するためにキッチンに来ていたけど、まさか本当に変なものを食べてたとは…


「一体どこからこんなものを…アンナか?」


微かにだけど、血の臭いを感じた私は、アンナのしわざかどうか疑う。

私は、3つの空の箱をゴミ箱に捨てる。

そして、残りも回収しておいた。

もしかして、私に使う前に、お試しで自分に使ってたとか?

こんなのがなくても、私は彩しか見てないのに…

まったく、天使を何だと思ってるんだか…


「天音?」

「あっ、上がってきてたんだね。」


振り返ると、いつの間にかパジャマ姿の彩が近くまで来ていた。


「その…これは…」

「気にしないで。別に怒ってないし。」

「ほんとに?」

「でも、ちょっとがっかりしたかな?」


すると、彩が悲しそうな顔をする。

どうしよう、泣きそうな彩がすごく可愛く見えてきた。


「私は天使だよ?こんなのなくても、大切な身内を見捨てたりしないよ。」

「………」

「彩?」

「身内は…嫌だ…」


ん?

…ああ、まだ媚薬の効果が残ってるのか。

まったく、今度から変なものを食べないように見張っとかないと。


「天音はさ、私のことを愛してる?」

「愛してる…ん〜、愛してはいないけど、友達…いや、親友以上の存在だとは思ってるよ?」

「それは…私のことを恋人だと思ってるってこと?」

「恋人…ではないかな。恋心とか、愛とかを向けてないから。でも、恋人くらい大切に思ってるよ?」


天使は、本当に仲のいい相手には、恋心を抱かなくとも、恋人と同じくらい大切にする。

それこそ、家族や最愛の人に向けるのと同じくらいの感情を。

だから、新婚夫婦が他の異性と仲良くしてると言うのは、天使の間では普通のことだ。

まあ、浮気したらガチギレられるけどね。


「それ、どっちなの?」

「恋人ではない。まあ、天使はこういう関係が普通のことだから。」

「…浮気しないでね。」


付き合ってもいないのに、浮気なんて、しようがないでしょうに…

将来的に、束縛の強い彼女みたいになりそう。

…本当に束縛してるのは私だけどね?


「それとさ、机に置かれてたお酒から、この媚薬入りチョコと似たようなニオイがしたんだけど?」

「…気のせいじゃない?」

「ふ〜ん?で?本当のところは?」

「…媚薬入りです。」


やっぱりか…


「素直でよろしい。」

「せっかく、天音に媚薬入りのお酒飲ませようと思ってたのに…」

「計画を成功させたかったなら、媚薬入りチョコを食べてなかったら騙されてたかもね?」

「味見なんてするんじゃなかった…」


…なんか可哀想だし、ちょっとくらい飲んであげようかな?

私は、コップに媚薬入りのお酒を注いで飲んでみる。

うわっ!?なにこれ?

媚薬入りのお酒は、びっくりするほど甘ったるくて、思わず顔を顰める程だった。


「それ、炭酸割りする前提のお酒なんだけど…」

「もしかして…原液?早く…言って…よ…?」


あれ〜?

なんか…頭の回転が遅くなったような〜


「お楽しみはこれからだね。」


彩の言ったその言葉を最後に、私の記憶は途切れている。


二度と、媚薬関連の話は書きません。

ただの恋愛小説になっちゃうから。

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