表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/93

洗脳

注意


今回は、私でも「は?」ってなるような話です。

話を進めようとして、無理矢理書いたので、色々とおかしな所があります。

後日、補足のための話を投稿するので、それを読んでから読むことをオススメします。


夜 唄屋


「天音…その…昼のことなんだけど…」


私が、個室に入ってくると、どう話していいのかわからないという雰囲気の彩がいた。

私は、何か話している彩を無視して、反対側の席に座ると、メニューを開く。


「もう何か頼んでたりしますか?」

「え?…まだだけど…」

「そうですか。だったら、このしゃぶしゃぶコースにしませんか?」

「あ、はい…」


私が、敬語で話しかけた事で、彩は一気にしおらしくなった。

結構効いてる。

私は、ベルを鳴らして店員を呼び、注文を済ませると更に追い打ちを掛けることにした。


「で、今度の模擬戦以降は、本格的に縁を切るということでいいですか?」

「それは…」

「私みたいなのとつるんでいると、緋神さんの評価にも影響しますよ?」

「…」


彩は、俯いて小刻みに震えている。


「沈黙は肯定と捉えますが…よろしいですか?」

「…」

「そうですか。では、この付き合いも模擬戦までに「待って」なんですか?」


私が話を進めようとすると、彩が待ったをかけてきた。


「私は…縁を切りたくない…」

「はあ?」

「好き勝手言っておいて、何を言ってるんだって思うかも知れないけど、私は…天音と縁を切りたくない!」


彩は、机を叩いて、私に迫ってくる。


「今更何を言ってるんですか?もう、知人程度の認識なんですけど?」

「そんな…いや、お願い。もう一度、やり直すチャンスを!」

「無理ですね。もう、貴女を知人以上の存在として思うことはないでしょう。諦めてください。」


それを言うと、彩は、声もなく膝から崩れていった。


「では、模擬戦のことなんですが。」

「もう、私の負けでいいです。」

「え?」

「私の負けでいいです。何をしてくれても構いません。だから…もう一度一緒に暮らしてほしい。また、同じ屋根の下で一緒に笑いたい。」


そう語る彩の声は、弱々しく震えていて、悲痛な叫びにも聞こえた。

私は、内心笑いが止まらなかった。

このまま行けば、彩を私の奴隷に出来る。

私のためだけに働いてくれる奴隷が手に入る。

しかも、手を汚すことなく、双方の合意のもので。


「それなら、私も模擬戦はしません。不戦勝なんて、何も面白くないですから。そのため、貴女の願いも聞けませんね。」

「嫌だ…私と一緒に居てほしいの。また一緒に笑いたい。」


彩は、すすり泣きながら、私に縋り付いてきた。

それどころか、勢い余って押し倒してきたのだ。

その時、


「失礼しまっ!?」


ちょうど、しゃぶしゃぶを持ってきた店員に見られてしまった。

店員から見れば、彩が私を押し倒し、抱きついている。

つまり、店でアツアツなことをしてる。

そう見えていただろう。


「嫌だ…お願い…」


しかし、すすり泣く彩を見てそうでないことを感じ取ったらしい。


「あー…今、私動けないので、申し訳ないですが準備をやってもらってもいいですか?」

「か、かしこまりました…」


動けない私の代わりに、店員さんが準備をしてくれた。

ちなみに、私は彩にがっちりホールドされていて、まったく動けない。


「緋神さん、そろそろ離れてくれませんか?」

「嫌だ…天音が一緒に居るって言ってくれないと離れない。」

「では、その話は最後にするとして、先にご飯を食べましょうよ。」


すると、少しだけホールドが緩んだ。


「絶対だからね?」

「わかってますよ。だから、離れてください。」

「忘れないでね?」


すると、彩は私から離れて、もと居た席に戻った。

その頃には、準備が終わっており、ほとんどを店員さんに任せてしまっていた。


「ありがとうございます。」

「いえいえ。お気になさらず。」


そう言って、店員さんは出ていった。


「さて、しゃぶしゃぶを食べましょうか。」

「ポン酢いる?」

「は?しゃぶしゃぶといえば、ゴマダレでしょう?」

「ちょっと何言ってるかわかんない。しゃぶしゃぶにはポン酢一択じゃないの?」


二人の間に、険悪な空気が流れる。

しかし、これ以上関係を悪くしないために、お互い手を引くことで解決した。

天音は、手を引いていなければ、計画が破綻すると考えて手を引いたが、彩は、天音とまた暮らしたいという、平和な理由だった。

そして、二人が肉を鍋に入れる。


「緋神さん…それはしゃぶしゃぶと言えるのですか?」

「それを言うなら、天音は短すぎない?」


彩は、しゃぶしゃぶとは言えはないほど長くつけおり、天音はしっかりとしゃぶしゃぶと言える時間しかつけていない。


「しゃぶしゃぶですよ?少しだけ付けるくらいだと思うんですけど?」

「病気になったら怖いでしょ?これくらいつけて、殺菌しないと。」


彩って、結構心配性な性格なのか…


「そもそも、昇華者が病気になったりするんですか?」

「前に、牡蠣を生で食べて、ノロウイルスにあたった事があったの。それ以降、食中毒には人一倍気を使ってる。」


まじか…

もしかして、この歳で酒とか煙草とかって、結構やばかったりする?

彩、許せん…


「あと、前に酒の飲み過ぎで医者に怒られた事があったね。」

「…それをわかって私にお酒と煙草教えました?」

「ごめん、忘れてた。」


彩、マジ許せん…

それから、なんだかんだ二人でしゃぶしゃぶを楽しんだ。






















「お会計はどうしますか?」

「私が出すよ?」


せっかくだし、彩のお言葉に甘えるか…

あ…


「あの、しゃぶしゃぶに集中しすぎて、大切な話を忘れてる気が…」

「あ…」


すると、みるみる彩の顔色が悪くなっていく。


「今日も、なんだかんだ楽しんでたし、また一緒に…」

「無理です」

「…」


さっきまでが、楽しい時間だったために、現実との落差でかなりダメージを受けただろう。

でも、楽しい時間で精神が回復しているだろうから、少しは粘って…


「どうして…駄目なの…?」


前言撤回

かなりダメージを受けるどころか、急所にクリティカルヒットしてる


「さっきも言いましたけど、貴女に対しては、もう知人程度の認識しか持ってません。」

「嫌だ…」


すると、今度は涙を流しながら泣き始めた。

私を振り向かせたいのか、彩が私にこだわる理由を嗚咽混じりに語ってくれた。


「私ね、誰かと話すのが大好きなの。でも、昇華者になってからは、かなり立場が変わってね。これまで仲良くしてくれた人達が、揃いも揃って私から距離を取るようになった。」

「相手は、国家権力に勝る、昇華者ですからね。相当話しかけづらいでしょうね。」

「ええ。それでね、昇華者になって、金も、権力も、地位も、名声も、人が欲しがるものはほとんど手に入れた。でもね、親しくしてくれる人は減っていく一方。私は、どんどん一人になっていった。」


それは、仕方ない事だろう。

私は、元々友達が少なかったからあんまり…というよりは、ほとんど影響を受けてないけど、話しかけづらい雰囲気を纏ってる。

そのせいか、話しかけられる機会がますます少なくなった。


「それに、昇華者同士で話し合うのは…難しかった。」

「でしょうね。」

「いよいよ私は一人になる。そんな時、貴女が新しい昇華者として昇華してくれた。嬉しかったよ。日本人の昇華者だもん。他の昇華者よりは話しやすいって思ったからね。」

「蓋を開けてみたら、どうでしたか?」


すると、彩は「ふふっ」と、笑って、


「碌に働かないし、家事も手伝ってくれないし、勝手に人のお酒を飲むし。とんでもないやつだなって思ったよ。」

「そうですか。」


特に、怒る理由はないし、何も言わないでおこう。


「でも、一緒に居てくれたし、笑ってくれたし、あの漫才みたいなやり取りが好きだった。だから…」


彩は、私の肩を掴んで、


「また、貴女と一緒にいたい!」


そう、私に訴えかける彩は、滝のように涙を流していた。

そろそろかな?

私は、優しく彩の頬に触れると、


「じゃあ、少しだけなら一緒にいてもいいよ?」


敬語を辞めて、いつもの口調で話しかける。


「ほんとに!?」

「もちろん。そうだね…一週間くらいかな?一週間経って、まだ一緒にいたいと思えるなら、ずっと一緒に居てあげる。」


私は、今尚流れる涙を拭き取ってあげる。

出来るだけ優しく、彩が私を求めてくれるように。


「ほんとに…本当に一緒にいてくれるの?」

「私は天使だよ?大切な人を見捨てたりはしない。距離を置いたりしない。何かあったら、必ず相談に乗ってあげる。今まで、彩を見捨ててきた奴らと私は違う。」

「…」


…言い方が不味かったかな?


「天音…」

「何?」

「もし、“あの時”が来たら…貴女はどうするの?」

「それは…その時決めましょう。今は今、“あの時”のことは、後で考えればいい。」


私と、別れる事になるのが怖いのか…

私が居なくなれば、彩はまた一人になる。

それどころか…いや、この事はまた今度考えよう。


「大丈夫。世界の理なんて捻じ曲げて一緒に居る。だって、彩に全部任せて、ぐうたらしてたいからね。」

「はぁ…私の感動を返してくれない?」

「ふふっ、これからも、私のために働いてね?」

「はいはい。」


面倒くさそうに返事をする彩は、どこか嬉しそうだった。

…洗脳できたかな?

出来てるといいな〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ