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噴火後

ん?

なにか来る?


「うわっ!?」 


突然、私目掛けて光線が飛んできた。

それは、溶岩の中から放たれたものであり、犯人がどこに居るか目では見ることが出来ない。

だって、溶岩だもん。

水と違って、透明じゃないんだから、見えるわけないっての。


「見えなくても、魔力の位置でまるわかり。そこでしょ?」


私は、魔力を感じた位置に、光線を打ち返す。

すると、確かな感触と魔力が私の中に流れ込んでくる感覚があった。 


「光線一発で倒せるとは…やっぱり雑魚だったか。」


はぁ…

雑魚のくせに私に突っかかってきやがって。

これだから、手応えのないダンジョンは嫌いなんだよ。

早くスタンピードの主を潰そう。


「あれ?天音?」


私は、天音の気配を感じて、振り返る。 

後ろから、あの駄天使の気配を感じたからだ。

しかし、当然あいつはいない。

その代わりに…


「何…あいつ…」


明らかに異常な気配を放つ、ナニカが近付いて来ている。

光線で倒すか?

しかし、敵性存在かどうかわからない以上、こっちから攻撃をしていいのか…

すると、


「っ!?やばっ!!」


後ろから、極大の魔力収束を感じて、私は回避行動をとる。

それは正解だったようで、凄まじい魔力の余波がここまで飛んできた。

おそらくは、光線型放射攻撃を放ったんだろう。

そして、魔力が収まると、溶岩が魔力を感じた方に流れていく。 

 

「光線で溶岩が消えたのか?なんて破壊力をしてるのよ…」


おそらく、光線で溶岩を奥まで押し込んだんだろう。

だとしても、凄まじい破壊力だ。

昇華者でも、あのレベルの攻撃は切り札に当たる。

だが、あいつはそれを平然とやってのけた…


「世界は広いわね…」


そして、あいつの気配は、いつの間にか消えていた。


















「「っ!?」」


私達は、火山の中から、彩のものではない謎の極大の魔力を感じて、同時に振り返る。

ナニカがとんでもない攻撃をした。

それも、私達昇華者が、切り札として使うレベルの力を持った攻撃。


「彩…ではないな…」

「火山の中に何かが居る…それも、私達と同格かそれ以上の何かが…」


すると、


『天音。聞こえる?』

『彩?今、そっちで凄い魔力を感じたけど、大丈夫?』


彩から、念話が飛んできた。


『大丈夫だよ。でも、あれが何か分からなかったけどね…』

『そっか…取り敢えず、そっちの様子はどう?』

『様子?…今、ちょうどスタンピードの主を見つけたところだよ。』


この感じだと、話している最中に見つけたという感じだろう。


『主は強そう?』

『いや、簡単に倒せるような雑魚だよ。ちょうど、串刺しにしたところだし。』

『そ、そう…』


片手間で瞬殺されるスタンピードの主…

可哀想に…


『天音も、余計なことしたら同じ目にあわせるからね?』

『肝に銘じておきます!!』

『よろしい。あ、帰ったらカードが停止するまで酒の飲むから。』

『はあ!?』

『よろしくね~』


どうしてまた私が奢らないといけないのよ…

今朝、高級寿司屋奢ってあげたばかっかりなのに…

十数万消費してきたんだよ?

ほぼ、パチンコに溶かしてたみたいだけど…


『せめて、理由教えてくれない?』

『はあ?』

『いや、はあ?って言いたいのはこっち何だけど…』


カードを停止させるって、どんだけ飲む気だよ…

そもそも、突然そんな事を言い出して、『はいそうですか』ってなるわけないじゃん。


『どうして、私が溶岩遊泳することになったんだろうね?』

『それは…』

『んん〜?』

『…嫌なら、他に出来そうな奴連れてくればよかったじゃん。』


私は、正論っぽい事を言って、彩に反論する。

まあ、彩の他に溶岩遊泳が出来そうな奴って誰?って話だけど…


『それは………とにかく!天音が言い出してなければ、こんな事にはなってなかったの!!だから、酒の一本や二本くらい奢れよ!!』

『えぇ…』


事実を前面に出して、ゴリ押しで私に迫ってきた。

なんと言うか…彩って、結構面倒くさい性格してるね…

わがままというよりは、相手の悪いところを見つけて、それを前面に出して何かを要求する。

…性格悪すぎない?


『はぁ…わかったよ。カードは好きに使ってくれればいいから。』

『え?』

『それに、もう先に休んでていいよ。溶岩遊泳して疲れてるだろうし、ゆっくり休んできて。』

『いや…途中で帰るわけにはいかないでしょ…』


私的にはさっさと帰ってほしい。

また、何か要求されるかも知れないからね。


『別に、避難は私とマイケルだけで十分だから、帰ってくれても問題無いよ。それに、私的には帰ってくれたほうが嬉しいんだけど?』

『…』

『人間の気配を調べた感じ、大体の人は避難が終わってるみたいだし、彩が噴火の原因を取り除いてくれたから、これ以上噴火は強つくなったりしないと思うよ?なら、別に居ても居なくても変わらないしね。』

『…』

『彩?』


私が一通り意見を述べたあと、彩は急に黙り込んでしまった。

念話越しに、彩の様子がおかしい事がわかった。


『帰る…』

『え?別にいいけど?』

『…』


すると、乱雑に念話を切られた。

よくわからないけど、怒ってるらしい。

いったい、何が彩の気に触れたんだか…


「取り敢えず、彩がスタンピードの主を倒してくれたみたい。噴火の勢いは収まるだろうし、近隣住民の避難もだいぶ終わってるみたいだから、政府には、やっぱりなんとかなりそうって言っておいて。」

「安心しろ。もう言ってある。」

「…盗聴してたの?」

「いや、あんなバレバレの念話してたら気になるだろ…」

「最低…」


女子同士の会話を盗み聞きするなんて…

見損なったわ〜


「これ…やっぱり俺が悪いのか?」

「倫理的以前に、人間なら普通に犯罪だからね?」

「あー…」


マイケルは、自分のしたことのヤバさに気付いたらしい。

それから、頭を少し掻いたあと、


「すまん。俺が悪かった。」

「いや、別に私もそこまできにしてないんだけど…」

「それもどうかと思うがな…」


その後、なんとも言えない空気中で、私とマイケルに、アメリカ政府からしてほしいことリストが送られてきた。

ちなみに、私はアメリカ政府の要望で、避難所に物資を送る事になった。

















ある避難所にて


「これが、およそ三百人の一週間分の水と食料です。」

「ありがとうございます!!」

「いえいえ、お気になさらず。」


私は、営業スマイル…のような何かで、好印象をばら撒きながら各地の避難所に水と食料を中心とした、生活必需品を配給して回っていた。

私が忙しくなりそうという事と、ハワイの状態がそれどころじゃないという事で、ハワイ旅行は中断になった。

代わりに、冬にオーストラリアに行かないか?という話が出てきている。


「夏に、ハワイで楽しめなかった分を、冬にオーストラリアで楽しむって訳か…」


オーストラリアは南半球にあるから、北半球とは季節が真逆になっている。

そのため、冬にオーストラリアに行かば、あっちは夏ということになる。

ハワイの代わりになるかはわからないけど、きっと楽しくなるだろう。


「今から楽しみだけど、今はハワイの支援に協力しないと。…私の好感度上げの為にね?」


正直、人間が苦しんだところでどうとも思わないけど、好感度を上げて、『人助けに積極的ないい天使』の、イメージを定着させておきたい。

そうなると、色々と都合の良い事が沢山あるからね。

そのためにも、一人でも多くの人に、いいところを見せておかないと。


「さてと…次は、どこだったかな〜?」

「張り切ってるね~」

「アンナ…どうやってそんな急に現れたの?」


空間の揺らぎを感じなかったから、転移ではない。

わざわざ、飛んで来たのか?


「日本から〜、ハワイまで〜、本気で飛んできたんだ〜。凄いでしょ〜」

「凄い…のかな?」


昇華者レベルになると、音速飛行とか平気で出来る。

ちなみに、私はマッハ2までなら出せる。

ジェット戦闘機と追いかけっこが出来るくらいの速度のはず。

となると、マッハ2が680m/sくらいのはずで、日本とハワイの距離が約6600キロだから…二時間半くらいでつくのか…


「よくもまあ二時間半も飛び続けたね。」

「でしょ〜。やっぱり、私って凄いでしょ〜?」

「で?ホントのところは?」

「…ハワイの近くまで転移で来ました〜」

「素直でよろしい。」


やっぱりね。

あの、いつもふわふわしているアンナが、急に二時間半も飛んだりしない。

絶対にどっかで楽してると思ったよ。

私が、一人で納得していると、


「そう言えば〜、彩と喧嘩したの〜?」

「喧嘩?私が?」

「彩が落ち込んでたよ〜?」


落ち込む?そんな、彩をがっかりさせるような事はしてないんだけど…


「気付いてないの〜?」

「うん…全然心当たりがないんだもん。」

「ふ〜ん?」


謎だ…

私は、彩を落ち込ませるような事はしてないし、言ってないと思うんだけど…


「まあ、そんな事よりも、今は支援に協力したいから、また後でね。」


私は、それだけ言って、次の避難所に運ぶ物資の回収に向かった。




「だって〜。どんまい〜、彩〜」


私は、ポケットからスピーカで通話中のスマホを取り出す。

通話相手は、もちろん彩。

私と天音の会話は、彩に筒抜けになっいた。


『ありがとう、アンナ。もう切るね。』


そう言って、彩は電話を切った。

その声は、どこか寂しそうに聞こえた。


「可哀想に〜。無意識ってのが〜、これまた救いがないね〜」


天音は、無意識に彩を傷つけた。

彩は、そのことでかなり落ち込んでるけど、天音は気にも止めてない。

これは、ひたすら彩が可哀想だ。

でもまあ、天音は天使だし、ある意味仕方ないのかもね。


「さてと〜。天音は〜、彩との関係を修復できるのかな〜?」


私は、クスクスと笑いながら、日が出てくる前に、真っ暗な私の屋敷に戻った。





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