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火山のダンジョン

「これで、麓の街の人は全員かな?」

「はい。残りは外出中か、車で既に…」

「外出中はいいとして、車の人は諦めましょう。もしもの時は…ね?」


こういった災害のとき、車という物はクソほど役に立たない。

あっという間に渋滞で動かなくなる。

自分の足で、走って逃げたほうがいい。

まあ、今は私が転移で連れて行くけど。


「避難用の道具は揃ってる?」

「はい。問題ありません。」

「じゃあ、転移するよ。」


私は、転移でさっきの避難所まで飛ぶ。

すると、避難所には結構な数の人が集まっていた。


「これは…もうすぐ埋まりそうじゃない。」


私が絶句していると、転移の気配を感じた。


「彩。ここはもうダメそう。」

「もうそんなに集まったの?」

「うん。見てこれ。」


彩も私と同じように、絶句している。


「どうしよう…他に知ってる避難所とかは?」

「この感じだと、他の避難所も埋まってそうじゃない?」

「確かに…」


どうしようかと頭を抱えていると、強力な気配を、火山の方から感じた。

この気配は…


「マイケルだ。」

「このタイミングで来たって事は、噴火関連で何か頼まれたんじゃない?」

「取り敢えず、火山まで行こう。避難者どうすればいいか教えてくれるかもよ?」


アメリカのことは、アメリカの昇華者に聞けばいい。

避難者達をどうするか、マイケルに聞いてみるとしよう。


「ちょっと、詳しい話を聞いてくるので、ここで待っててくださいね。」


それだけ言って、返事を待たずに転移した。


















「ん?来たか。」

「ええ。ここで何してるの?」

「火山の噴火止められないかと言われて来たんだが…」

「もう、手遅れでしょ?あんなところまで溶岩が来てるんだよ?溢れ出すのは時間の問題だよ?」


転移してすぐに、彩がマイケルに質問する。

そして、ある程度予想通りの答えが返ってきた。


「取り敢えず、民間人の避難を優先しましょう。天音も協力してくれるらしいから。」

「こいつが?…天使が人助けとは、どういう風の吹き回しだ?」

「好感度上げだけど?」

「それなら納得だな。」


変なことで納得しやがって…

こっちだって、そんな言い方されたら傷つくのよ!!

はぁ…やめようかな?救助活動。


「悪かったって。そんな、あからさまに嫌そうな顔するなよ。」

「じゃあ、お前は巨人が天使みたいなことするなんて、どういう風の吹き回しだ?なんて言われたら嫌でしょ?」

「まあ…そりゃあ。」

「なら、謝り方が違うんじゃない?」


我ながら、面倒くさい奴だと思う。

ちょっとしたことで、ネチネチネチネチネチネチと…

自分でも鬱陶しいと思う。

まあ、嫌がらせとして続けるけどね!!


「面倒くせえなあ…」

「あ?お前、まともに謝罪も出来ないの?生まれる所からやり直す?そこで、ママに1から教えてもらったら?」

「うっざ」

「へえ?それが謝罪なんだ?ふーん?ママにそう教わったの?」


うん、めっちゃウザい

でも、嫌いなやつをボロクソに言うの楽しいー!!

ストレスが凄い勢いで消えていくこの快感!!

ん~~!!最&高!!


「もう無視しなさい。普通に謝っても、何か言われるだけだから。」

「そうだな。」


あー…

もうちょっと煽りたかったのにな〜

彩が余計なことするから〜

…今度は顔に出さないようにしよっと。

だって、彩だもん。

怒らせると、追い出されそうで怖い。


「私が余計なこと言った時は、何もしないのね?」

「彩を怒らせると、ヒモ生活が満喫出来ないからね。これからも、彩に媚びを売り続けるよ。」

「見てよ。これが、天音の本来の姿だよ?悪魔に媚びる堕ちた天使。」

「なんと言うか…哀れ(?)だな。」


哀れ?

今の私は幸せだし、気楽で、働かなくてもいいから、むしろ、羨望されそうな生活してるんだけどな〜


「最近は、本格的に私の家に住み始めて、私のソファーを独占してたり…」

「彩…お前、苦労してるんだな…」

「わかってくれる?疲れて帰ってきたら、何もしないヒモニートが、ゴロゴロしてて、それを見て殺意が湧いてくる私の気持ちが。ご飯は作ってくれるけど、片付けを一切しないから、結局疲れるっていう苦労が。お風呂を羽根だらけにして、排水口が詰まってそれを掃除しないといけない私の気持ちが。人の酒を勝手に飲んだ挙げ句、ろくに反省しない奴の世話をする私の気持ちが。勝手に冷蔵庫に…」

「なあ、いつまで続くんだ?」

「さあ?」


彩の私への不満が爆発してる。

これは…帰ったらガチギレされそう。

私がいったい何をしたって言うんだ!!

すると、急に強烈な殺気が飛んできた。


「な、何?」

「いや?余計なこと考えてるんじゃないかな?って。」

「別になにも…」


いや、勘鋭すぎでしょ。

もはや心読術レベルじゃん…

…もしかして、ほんとに心読術を持ってたりして…まさかね。


「それよりも、民間人をどうするかだが…どうする?」

「いや、こっちが聞きたいんだけど?国からなにも言われてないの?」

「火山をどうにかしてくれとしか…」

「はぁ…今から聞いて。」


何故だろう、彩の機嫌がすこぶる悪い。

いったいどうしてこんな事に…


「天音」

「っ!?な、何?」

「停止の力で、溶岩を止められないの?」

「止められ無くはないけど、あの規模で停止を使うと、副次効果で周辺の気温が凄いことになるけど?」

「取り敢えずやってみて。」


えぇ…

やりたくないな〜


「…責任は彩が取ってくれるならやるけど。」

「わかったから、取り敢えずやって。」

「はいはい」


私は、十字剣を取り出して、魔力を大量です込める。

次に、停止の力を乗せて、出来るだけ中央部を狙う。

そして、


「『海凍』」


つい先日作った技の試し打ちも兼ねて、冷気の光線を放つ。

これは、対アイナを想定して作った技だ。

効果は名前の通り、海を凍らせる為に作った技で、液体を停止させて固体にするという効果がある。


「凄えな、溶岩が全部凍りついてるぞ…」

「これかなり良くないと思う。何処かに穴を開けないと。」

「側面の、薄いところから出てくるかもってこと?」

「そう。一旦穴を開けるよ?」


私は、真ん中辺りで剣を振り下ろして、岩を砕く。

すると、三十秒も経たずに溶岩が吹き出してきた。


「どうする?噴火の原因は、内部のダンジョンだと思うけど…」

「内部に行くのか?」

「かなり深い所にあるんだよ?溶岩だらけで、入ったら焼け死ぬっての。耐性があれば別だけど、それができるのは…」


私とマイケルの視線が、彩に向く。


「私に、溶岩の中に突っ込めと?」

「うん、行ってらしゃい。」

「入るときは、親指を立てながら潜ってくれよ。」

「えぇ…」


無慈悲な、溶岩遊泳宣告がなされた。

頼まれると断れない性格の彩が、二人からこう言われて断るはずがない。

散々愚痴を言いながら、火口に向かっていった。


「行ったな。」

「親指立ててくれるかな?」

「どうだろうな?」


すると、一回私達の方へ振り返って、


「あれは…最終確認を取ってるのかな?」

「しつこいな。ほら、さっさと行け!」

「無慈悲…」

「お前が言うか?」


マイケルに、身振り手振りで行けと言われたことに気付いたのか、肩を落としながら火口へ飛び込んで行った。


「ああ、可哀想に…」

「それ、お前が言うか?」

「何?私が悪いみたいな言い方ね?」


天使は、仲間思いな種族なんだよ?

この私が、彩に何をしたって言うんだよ。


「お前、真っ先に飛び込めって言ってたよな?」

「そうだっかな?」

「それに、彩が飛び込む事を提案したのもお前だったよな?」

「そんなこと言ったかな?」

「…高性能な脳だな。」


私が彩にそんな酷いことをするわけないじゃないか。

どうして、真っ先に飛び込めだとか、そもそも飛び込む事を提案するとか、そんな事を言うはずない!!


「取り敢えず、早く政府に連絡しろよ。じゃないと、私動けないんだけど?」

「はいはい」

「なにその返事。噴火の原因はマイケルだって、虚偽の情報流すよ?」

「それだけはヤメロ。」


私達は、そんな感じで戯れながら、アメリカ政府の判断を待った。



















溶岩の中


「熱い…」


いくら炎熱無効があるとは言え、溶岩遊泳をすれば流石に熱い。

感覚としては、お風呂を泳いでるみたいな感じ。

あれもこれも、天音が私に溶岩遊泳をしろって言ったのが悪いんだ。


「帰ったら、天音のカードが停止するまで、酒飲んでやろ。」


そう考えると、急にやる気が湧いてきた。

私は、全力で泳ぐ。

しかし、溶岩は水と違って、かなり粘り気が強い。

そのせいで、かなり泳ぎづらくなっている。

使うか…加速


「最初からこうすればよかった…『支援加速』」


この技は、移動速度を上昇させる技だ。

少しでも移動していれば、そこに加速の効果が乗って、どんどん速度が上昇していく。


「凄い楽。ほんとに最初からこうすればよかった…」


私は、どうして加速を使わなかったのかと、過去の自分を恨みながら、どんどん深くへ潜っていく。

しかし、ダンジョンまではまだまだ遠い。

加速の出力を上げるか…

私は、今の倍の出力にまで加速を強化する。


「うん、これならすぐに着きそう。」


私は、溶岩の中を、新幹線並の速度で移動する。

これなら、1キロ先の溶岩溜まりにも、1分も掛からずに着くだろう。


「待ってろよダンジョン。私が最速で攻略して、天音のカードを破壊してやるからな!!」


ここだけ聞くと、天音がとばっちりを受けているように聞こえるけど、ここは溶岩で、その中を泳ぐきっかけを作ったのは天音だ。

これは、当然の報いなのだ。

そして、私の予想通り、1分も掛からずにダンジョンに着いた。


「チッ!やっぱり中も溶岩だらけ。攻略させる気無いでしょ!!」


こんなの、人間が来るような場所じゃない。

これが攻略できるのは私くらいだ。

まったく、どの道私がやるしかなかったのか…


「はぁ…早く帰りたい。」


今になって、天音の旅行について行くんじゃなかったと、後悔した。

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