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歩く災害

眠い

翌日


「う〜…二日酔いだ〜」

「先輩…テンションおかしくないですか?」

「お酒を飲んだ後は、ちょっとおかしくなるんだよ。」


あ〜…頭痛い

昨日飲みすぎたからな〜

度の低いお酒しか飲んでないんだけど…流石に飲みすぎたかな?


「天音〜、生きてる〜?」

「アンナ…今、二日酔いで頭が痛い…」

「それは大変だね〜。彩から血を吸いすぎて怒られたから〜、こっちに来たんだけど〜」

「まだ早いよ。アイナの所に行ってきて。」

「アイナは魚臭いからいや〜」


人魚だからね。

魚臭いのは納得いくかな?

…今度から、魚臭い女って呼ぼう。

絶対ブチ切れるだろうな〜

うへへ、アイナの怒る顔を想像すると、笑いが止まらない…


「先輩…急にニヤニヤして、気持ち悪いです。」

「正直、気持ち悪いよ?」

「美女の顔も、崩れるものなんだね〜」

「…ひどくない?」


確かに、目の前の奴がニヤニヤしだしたら気持ち悪いけど…

だからって、本人の前で言う?

ねえ、ひどくない?

すると、転移の気配を感じた。

彩だ。


「天音、大じょ…アンナ。」

「あわわわ〜!私帰るね〜」


彩は、転移してアンナを見つけると、殺意を出しながら睨みつけてきた。

それに気圧されて、アンナは逃げ出す。

きっと、血を吸われすぎて怒ってるんだろう。


「で、二日酔いは大丈夫?」

「頭痛が痛い…」

「あっそ。いつも通りみたいね。」


彩は、この展開になれているので、簡単にあしらわれる。

私、『頭痛が痛い』って言ったのに、彩は無視だからね?

香織と矢野ちゃんも、彩が適当にあしらっているせいで、なんと言っていいのかわからなくなってる。


「それと、カード貸してくれない?」

「え?」

「いや、昨日はタダでお酒飲めたでしょ?だから、借りは返せてないよ?」

「えぇ…」


まあ、彩だから使い過ぎる事はないだろうけど、他人にカードを渡すのは怖い。

でも、私は彩を信用してるし、借りを返さないといけないから、カードは渡しておくけど…

私は、空間収納からカードを取り出して、彩に手渡す。


「必要になったら電話するから、転移でホテルまで来て。」

「はいはい。じゃあ、私は銀座の高級寿司屋に行ってくるね。」

「ちょっと!?食べすぎないでよ!?」

「わかってるよ~」

 

そう言って、彩は転移していった。

…不安だ。

ものすごく不安だ。

いくら彩でも、そんな所に行かれると、結構浪費するはず…

不安だな〜

カード停止されないよね?

されたら、私どうやって旅行代払うのよ…


「大丈夫?」

「うん、大丈夫じゃない。」

「銀座の高級寿司屋に行くって言ってましたね。」

「マグロを腹いっぱい食べてるんだろうな~…胃が痛くなってきた。」


彩の胃は満たされるだろうけど、私の胃はキリキリ痛む。

不安だ…

電車に乗ってる時に、家の鍵を締め忘れてないか気になるのと、同じくらい不安だ。


「まあ、天音もホテルの朝食を食べに行こうよ。きっと、フワッフワのオムレツが待ってるよ。」

「あの沖縄の高級ホテルのオムレツ、美味しかったですよね〜」

「ね〜。また、高級ホテルのオムレツが食べられると考えると、凄くワクワクしてきたね。」


私は、まったくワクワク出来ないけどね。

なんか、私のことを嘲笑いながら、彩が寿司食ってる所を想像したら、凄い腹立ってきた。

…ヤケ食いするか!


「よし!オムレツ食い尽くして、ホテルの卵全部使い切らせよ!!」

「それ、普通に迷惑ですよ?」

「迷惑行為で、つまみ出されるんじゃないの?」

「じゃあ、ケーキを食べ尽くす。」


それは胃もたれしそうだけどね。

まあいっか!

私は、ホテルのケーキを食べ尽くしに、レストランに向かった。


















「彩さん、こんなに寿司食って大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ。お金は、天音からカードをぶん取ってきたから。」

「何してるんですか…」


私は、宣言通り銀座の高級寿司屋に来ている。

人の金で食う飯はうまい。

…でも、天音は高級ホテルの美味しい朝食を、食べてるんだよね?


「明日は、天音の所でホテルの朝食を食べよ。」

「そう言えば、ニュースになってましたね。確か、天音さんと…「アイナ?」そうそう、人魚のアイナさんが喧嘩したって。」

「ええ。昇華者が集まって、話し合う事になったからね。世間じゃ大事件になってるんじゃないの?」


昇華者の間でさえ話題になったのに、世間で注目されないはずがない。

まあ、平気で気候とか環境を書き換える存在が喧嘩したら、普通に考えて大問題だけどさ。

実際、さっきまで晴れだったのに突然大雨になったり、ハワイの海が凍り付いたり、溶けるのに時間がかかるであるろう氷を、私が全て溶かしたり。

昇華者は色々と規格外だ。

でも、あの二人を会わせると、すぐに喧嘩しそうだから、そのうち普通になるかも?


「あの二人は仲が悪いのですか?」

「個人的に嫌い合ってるね。会議でも、普通に喧嘩し始めたし。」

「そんなところでも喧嘩してるのですか…仲悪すぎませんか?」

「犬猿の仲という言葉がよく当てはまる二人だよ。」


というか、よくあそこで手を出さなかったと思う。

あそこまで仲の悪い姿を見せてたら、普通に殺し合いを始めてもおかしくはないと思うんだけど…


「あの二人なら、いつか本気で殺し合ってそう。」

「怖いこと言わないでくださいよ。」

「そうだね。でも、もしそうなったら、国際問題になりそう。」


今や昇華者は、外交のカードの一つになってる。

つまり、核兵器と同じような扱いだ。

それくらい、昇華者の個人の力というものは強い。

例えを出すなら、天音がいいだろう。

天音は、本気出せば地球に氷河期を到来させられる。

やり方は簡単で、世界中の海を凍らせる。

すると、海が氷で覆われる。

氷は、よく太陽の光を弾くから、地球の温度が下がる。

温度が下がると、氷が溶けにくくなり、新しい氷もできやすくなる。

後は、それの繰り返し。

こうすれば、天音は地球に氷河期を到来させられる。


「昇華者は、うまくやれば人類を滅ぼせる力があるからね。」

「そうなんですか?」

「例えば、私なら山火事を起こしまくって、地球温暖化を進めれば、そのうち人間は住めなくなるよ?」

「そんなの、歩く災害じゃないですか。」

「そうだよ。アイナは津波を自在に起こせるし、マイケルは地震を起こせる。天音は氷河期を到来させられるし、チェンなら天変地異で人類を滅ぼせる。」


最後だけ、規模が違う気もするけど、あまり気にしない。

それよりも、昇華者が生ける災害ということが、わかればいいのだから。


「昇華者というのは、恐ろしい存在ですね。」

「それ、昇華者の前で言う?」

「彩さんは、そんなことしないでしょ?」

「まあね。人類を滅ぼすほど、人類に呆れてないからね。」


しかし、どうしょうもなく、救いようがなかったら見捨てるかも知れない。

それは、昇華者全員が同じ事を言うだろう。

人類の興亡は、人類の行いにかかってる。

人類がどうしょうもないクズなら、私達昇華者は人類を見捨てる。

そうでないなら、最大限守ってあげる。


「まあ、最近の人類は、昇華者に頼りすぎてるから、厳しくしよう、って風潮もあるけどね。」

「昇華者に頼りすぎている?」

「『黒』を筆頭に、強力なモンスターの討伐は誰がしてるの?」

「昇華者です。」

「でしょ?せめて、吸血鬼型の『黒』を倒せるくらいには、強くなってほしいんだけどね。」


それが出来るようになるかどうかは、人間次第だけどさ。

まあ、善意で守ってあげる時間は終わり。

これからは、自立してもらわないと。


「ところで、お会計が凄いことになりそうですけど…」

「天音のカードで払うから大丈夫。」

「後で怒られても、私は責任取りませんからね?」

「わかってるよ。私は今、貸し一だから。このカードはそれでも借りてるものなんだよ。」


さてと、上限に引っかかったら、天音の旅行が台無しになるから、これくらいにしておくか。

やっぱり、私って優しいよね。


「そうだ。今度は、天音も連れてくるね。」

「店の中で暴れないように言っておいてくださいね?」

「天音はそこまで乱暴じゃないから、大丈夫だよ。」


少なくとも、嫌いな奴さえ居なければ、基本的におとなしい性格だから。

あと、自堕落で不真面目。

まったく、天使の名前が泣いてるよ。

…もしかしたら、前に感じた黒い気配が原因か?

でも、天音は天使だからそれはあり得ない。


「まあ、何かあっても暴れないように言っておくよ。私が怒られそうだけど。」

「ありがとうございます。」


私は、最後にしめ鯖を頼むと、天音のカードを取り出した。

うん、やっぱり罪悪感を感じる。

天音にも言われたんだよね、私には悪魔は似合わないって。


「カードで。」


私は、優しすぎる。

お人好しとは言わないけど、それに近いくらい優しい。

そのせいで、ダングレでもなかなか殺せない。

…天音は、次から次へと殺していくけどね?


「ありがとうございましたー」


でも、天使になれるとも思えない。

天使は、排他的故に、他種族に対しては残虐で冷酷で非道だ。

老若男女問わず、敵の勢力の存在ならすべて殺す。

女を殺す前に楽しむこともない。

ただひたすらに、自分達の敵を切り裂き、すべて殺していく。

その様は、まるで殺戮マシーンのようだった。


「けど、天使ってかなり仲間思いなんだよね…」


天使は、排他的には代わりに、仲間意識が非常に強い。

天音曰く、親友は家族と変わらないらしく、家に居てもまったく気にならないらしい。

つまり、親友になれば相手の家に勝手に入っても問題ないというわけだ

それくらい、仲間意識が強い。


「…もしかして、天音は私のことを親友だと思ってるのかな?」


ただ居候してるだけかと思ったけど、親友が相手の家に勝手に入ることが当たり前なら、天音のあれは親友の証なんだろうか?

だとしたら、天音のことをもっと大切にしたい。


「…後で、半分くらいは返しておくか。」


私は、少し使いすぎた天音のカードを見つめる。

せっかくの親友、一生の宝にしたい。

私は、こんなことを考えながら、転移でホテルに飛んだ。

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