喧嘩
更新遅れました。
最近、リアルが忙しくてなかなか間に合わなくなってます。
香織が、私達の隣まで来て、ホイッスルを加えている。
そして、
『ピィーー!!』
香織がホイッスルを吹いた。
私は、バタフライで泳いでいるのに対して、アイナはイルカみたいな泳ぎ方をしている。
…わかってはいたけど、圧倒的過ぎる。
アイナには尾ヒレがあって、泳ぐための筋肉も発達してるから、そもそも身体の構造的に圧倒的に不利。
氷でフィンでも作るか?
でも、それは私のプライドが許さない。
私は、仕方なくそのまま泳ぐことにした。
『大丈夫?厳しかったら言ってね?』
『喧嘩売ってるの?』
アイナが、念話で話し掛けてきた。
その声は、どこか笑っているように感じて、私は沸点までかなり近付いてくる。
しかし、ぎりぎりで持ちこたえる。
『変なプライドで、喧嘩を買ったのが敗因だね。あっ、挑発に乗っただったねw』
『…人魚も冷凍保存すれば日本まで持って帰れるかな?』
『…私を刺身にしようとしてないよね?』
『人魚の刺身なんて、不味くて食えないでしょ?』
私は、さっきの明らかに煽っている発言に、仕返しをする形で、アイナを馬鹿にする。
すると、アイナは海流を操って私の妨害をしてきた。
これ、外からでもわかるでしょ…
『海中で私に喧嘩を売ったこと、あの世で後悔することね。』
『意外と短気ね。やっぱり人魚は人の姿をしただけの化け物ね。』
『殺す!!』
すると、アイナは明らかに攻撃姿勢を見せてきた。
私は、水に押し潰されそうになる。
流石にこれは不味いか…
なら!!
私は、十字剣を取り出して、海を凍り付かせる。
『この程度の氷で、私を止められると思うなよ!!』
声でわかる。
今のアイナはかなり怒ってる。
外に出てみると、この周辺だけ海が大荒れだった。
「ねえ、あれ大丈夫かな?」
大勢の観光客が見守る中、もうすぐで折り返しという所で、海が荒れてきた。
それもあの辺りだけ。
間違いなく人魚がなにかしたんだろう。
「もしかして、海の中で人魚を怒らせたのか?」
「まじかよ…海は人魚の領域だぞ?」
「やばいんじゃねえの?」
周りの人達が、不安そうに話し始める。
すると、
「おい!あれ見てみろよ!!」
なんと、海の一部が凍り付いていた。
白神先輩がやったんだ…
しかし、氷は波に飲まれて簡単に砕かれる。
「白神先輩、本当に大丈夫なのかな?」
「大丈夫だよ。天音も昇華者なんだから、簡単には死なないよ。」
すると、青白い魔力を放つ、白ワンピの白神先輩が空中に現れた。
周囲から、感嘆の声が聞こえてくる。
白神先輩は、辺りを飛び回って人魚の水の攻撃を回避している。
剣は持っているが、攻撃しようとはしていない。
「何してんだ?」
「反撃してないな…何か狙いがあるのか?」
「それとも、単純に暴れたくないだけか…」
確かに、ここはワイキキビーチ。
ハワイ屈指の観光スポットだ。
こんなところで暴れるわけにはいかない。
しかし、既に海は大荒れで、どうしようもない状態だ。
白神先輩が暴れてもそんなに変わらないような気が…
すると、新しい人影が現れた。
遠くで見えなかったが、すぐに何者かわかった。
「巨人…」
アメリカの昇華者、巨人のマイケル・ジョンソンだった。
流石に、アメリカで暴れるのは不味かったんだろう。
別の昇華者が仲裁に入った。
しかし、
「あれ?こっちに来てる?」
マイケルは、こっちへ向かって来ている。
「ちょっと道開けてくれ〜」
マイケルは、英語で呼びかけて道を開けてもらう。
そして、少し行ったところで、仁王立ちをして海の方を眺めいる。
すると、轟音とともに、海が凍り付いた。
「おい、嘘だろ…」
「ハワイの海が凍り付いてやがる…」
「写真撮っとけ!」
様々な意見があったが、そんなことが気にならない自体が起こる。
「た、戦い始めた!?」
なんと、二人が戦闘を始めたのだ。
しかし、巨人は見ているだけ。
ハワイの海が大変なことになるのに、放置して大丈夫なんだろうか?
「派手にやってるね。」
「いくら海の近くとはいえ、水と氷だと氷のほうが強いのか…」
私は、変なところに関心していた。
正直、逆な気もするけど気にしない。
だって、白神先輩は人魚の水の攻撃を全て凍らせてるから。
けれど、先輩は自分から攻撃を仕掛けていない。
常に防御しているのだ。
「白神先輩、あそこからどうやって攻めるんだろう?」
「さあ?そもそも戦う気がないんじゃない?」
戦う気がない…
確かにそうかも知れない。
いったい、どうしてこんなことになったのやら…
「クソッ!!」
「何度やっても無駄だよ。本気を出さない限りはね?」
「そう?じゃあ、貴女から本気を出してよ。」
「海産物に指図はされたくないね。」
「なんですって!?」
さっき、マイケルがやってきて、『あんまりやりすぎるなよ?』と釘を差された。
本気を出せば、マイケルが飛んでくるだろう。
「あんたみたいな、白い羽虫に侮辱されるなんてね。一生の恥だわ。」
「羽虫ですって?天使に向かってそんなこと言うなんて、ずいぶんと肝が座ってるんだね。」
「海で人魚を馬鹿にする貴女も大概だけどね?」
確かに…
アウェーで相手に喧嘩を売るなんて、よくやったわね。
「さてと、これ以上するとマイケルに怒られるよ?」
「じゃあ、氷を解きなさいよ。」
「はいはい。」
私は、氷に魔力を流し込み、形状を操ることで氷を粉々に砕く。
すると、大量の水が、圧縮されて私へ水圧カッターのように飛んできた。
魔力が込められているから、当たれば昇華者でも重傷を負う。
「騙したな魚介類!!」
「はっ!騙されるほうが悪いのよ!この性悪ガガンボ!!」
「チッ!天氷!!」
私は、久しぶりに単体で天氷を使うと、近くの海を凍らせる。
しかし、規模が小さいせいで、簡単に壊されてしまう。
クソッ!!雨まで降ってきた!!
…雨?
さっきまで、太陽が地を焼く日本晴れだったはず。
それなのに、今は空を雲が覆い、大雨が降ってきている。
「マイケルに殺されるよ?」
「ちゃんと力は抑えてるよ。もしかして、ガガンボちゃんは、そんなこともできないの?」
「黙れ。力を抑えてるから、簡単に氷を砕けたんでしょ?魚程度の知能じゃあ、これは理解できなかったかな?」
マイケルのせいで、お互い本気を出せない以上、相手を罵って力を使わせるよう誘導しているのだ。
相手が先に本気を出せば、マイケルがこっちの味方になってくれる。
そう、思ってたんだけど…
「何してるのかな〜?」
「うわっ!?アンナ!?」
「そうだよ〜、みんなのアイドル、アンナちゃんだよ〜」
昼間にも関わらず、アンナがやってきた。
そうか、アイナが雲を作ったから、日光がほとんど遮られてるんだ。
「あ〜、アイナじゃん〜。また、血吸ってもいい〜?」
「駄目に決まってるでしょ?それに、今はそのガガンボと殺し合ってるんだから、邪魔しないで。」
「喧嘩は良くないよ〜?」
アンナは、いつも呑気そうだ。
でも、彩曰く、夜は狩人になるらしい。
そっちのアンナも一度見ていたい。
まあ、愛らしさがあって、こっちのほうがいいけど。
「あれ〜?マイケルもいるじゃん~。何してるの〜?」
「こいつらが暴れすぎないように、見張ってるんだよ。」
「なるほどね〜」
すると、凄まじい速度で私との距離を詰めて、首筋に噛み付こうとしてくる。
私は、それを間一髪で回避して、追撃を出来ないように十字剣を構える。
「うわ〜、十字剣〜。こわい〜」
「まったく怖がっているようには見えないんだけど?」
「ヤダな〜怖がってるよ〜?」
でも、近付こうとしない感じ、効果はあるのかな?
だけど、昇華者ほどの吸血鬼が、十字架を恐れるのかな?
もしかして、ちょっと不快程度なんじゃないの?
「ねえ〜。どっちでもいいからさ〜、血を吸わせてよ~」
「「いや」」
「そんな、声を揃えなくても〜」
どうして私達が血を吸わせてあげないといけないんだか…
「血なら、マイケルがいるじゃん。そこで吸ってきたらいいじゃん。」
「私はねえ〜、かわいい女の子からしか〜、血を吸わないって決めてるの〜。野郎の血を吸うのは〜、本気でやばい時だけにしてるんだよね〜」
「なにそのこだわり。」
というか、それで私のことを狙ってるのか…
水着姿でアンナの前に立ったら、襲われるのかな?
「それでさ〜、天音のお友達の血を吸わせてよ〜。」
「絶対駄目だから。勝手なことしたら、八つ裂きにするぞ?」
「お〜怖い怖い。やっはり天使は仲間意識が強いな〜。」
う〜ん…良くないな~
昇華者に敵を作りすぎてる。
アイナは、確実に私を敵視してるし、マイケルはまだ恨んでるはず。
アンナは…何考えてるかわかんないから、中間にでもしておこう。
彩は、一応味方してくれてるけど、いつか喧嘩しそうで怖い。
あとは…特に関わりがないから、大丈夫のはず。
「っ!?」
「ちょっと油断しすぎじゃない?」
私の心臓が、突然なにかに貫かれた。
いや、声でわかる。
「アイナ…」
私が、アンナと話している隙きに、私を狙撃してきたのだ。
アイナが攻撃姿勢を取っていることはわかっていた。
しかし、本当に攻撃してくるとは思わなかった。
人が話している中に横槍を入れるなんて、どうかと思う。
だから、アイナが攻撃してこないと思ってた。
「まだ続ける?」
「私の負けだよ。でも、殺しに来るなら私も抵抗する。」
「別に、殺そうとは思ってないよ。でも、二度と余計なことを言わないようにね?」
これ以上続けても良いことはない。
心臓を貫かれたのは、いい機会だった。
殺し合いを終わらせるのにふさわしいと思う。
「あとで洗わないと…」
「ねえ、体舐めていい?」
「…キモ」
「うわ〜ん!天音が酷いよ〜!」
言ってしまった…
どうしようかと悩んでいると、急にアイナが噛み付いてきた。
「ハムッ!」
「…」
これで落ち着いてくれるなら…
私は、そんな気持ちで、抵抗しなかった。
それがいけなかった。
傷を癒やしたころ、急にくらっとしてきたのだ。
「アンナ、離れて。」
「…」
「アンナ?」
よく見てみると、アンナはうっとりした表情で少しずつ血を啜っていた。
無理矢理引き剥がすと、アンナは不機嫌になるだろう。
けど、それ以外に方法がない。
「ごめんなさい。」
「ぷはっ!?」
私は、アンナを無理矢理引き剥がした。
すると、アンナは最初こそ不満そうだったけど、すぐに普通に戻った。
「もっと飲みたいな〜」
「駄目。今、血を吸われすぎて、貧血気味だから。」
私が不満気に言うと、アンナは私から離れてアイナの方に向かった。
「海が悲惨なことに…」
これ、自然解凍されないよね?
私は、仕方なく氷を砕く。
そして、雲を吹き飛ばして太陽の光が降り注ぐようにする。
あっ
「うわ〜!?天音、何してくれてるの〜!!」
アンナが、大慌てで日傘を取り出して、日光を防ぐ。
そして、恨めしそうに私のことを睨んできた。
「ごめんなさい!アンナがいること忘れてたの!!」
「…今度、お詫びとして血を吸わせてね?」
「わかったよ、吸わせてあげるから。」
アンナは、まだ不満そうだけど、一応納得してくれたらしい。
どうしよう、アンナにも嫌われたかな?
いつか、そこら中敵だらけの、四面楚歌状態になりそうで怖い…
そうならないように、彩だけは大切にしないと。