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天使と巨人と能力

今日から五千字にしてみました。

時間、大丈夫かな?

「お前、今天使って言ったか?」


やっぱりこうなるか…


「…言った。」

「そうか…」


マイケルが殺気立つのが分かった。

いや、隠そうとしてるのは分かるけど、もう少し抑えられなかったかな?


「一応聞いておくが、お前は巨人についてどう思う?」

「巨人について?」


それはつまり、私が巨人を虐殺するような奴か調べたいのか?

これは、どう答えるのが正解なのか…


「…」

「そんなに考えるか?」

「ええ、だって何も感じないもの。」


私は、率直な意見を述べた。

これが、紛れもない私の本音。


「そうか…」


マイケルの殺気が小さくなった。

怒りが引いた訳ではないだろう。

ただ、自分が殺気立っていることに気付き、それを取り繕うという気になったからだろう。

元から隠そうとはしていたが、ほとんど隠せていなかった。

さっきよりは隠せているものの、やはり殺気が漏れ出している。


「そんなに天使が嫌い?」


火に油を注ぐようなことをしている自覚はある。

こんなことを聞けば、確実にこの巨人はキレる。

でも、これくらいのことは耐えてほしい。


「そうだな…俺は天使が嫌いだ。ブチ殺したいくらいに。」


案外耐えられてるのかな?

なら、もう少しくらい煽っても問題ないか…


「それは、私に向けて?」

「そうだな。天使は見つけ次第殺すって決めてるからな。」


分かりやすい殺害予告。

ほんとう、いつになっても巨人の相手は疲れるな…


「天使に仲間を殺された?」

「ああ…目の前でな。」


口調は穏便だが、明らかに憎悪が乗っている。

ここまで天使を悪く言われると、こっちも腹が立ってくる。

それなら、


「私も、一緒に飛ぶ練習をした天使が、目の前で踏み潰されたよ。」


それだけじゃない。

集中しろと、自分に言い聞かせることで耐えてきたが、あの戦場で一体どれほどの天使の犠牲を見てきたか…

急所を突かれて死ぬ巨人にし対して、天使の死に様は無惨なものだ。


「巨人は幸せだよね。」

「何だと?」

「死んだとき、そいつが誰なのか判断してもらえて。」


ずいぶん嫌味を言った気がする。

皮肉かも知れないけど…

『巨人は死んでも、図体がデカいから、体がそのまま残って本人確認がしやすくていいな。』

そう言ってみたけど、こいつの反応はどうなるか…


「お前…そんなに死にたきゃ殺してやる。前に出ろ。」


そうだよね、私が似たようなこと言われたら、間違いなく斬り掛かってる。

あいつだって、大切な仲間を馬鹿にされて、黙ってるような腰抜けではない。

正直、いつ襲ってくるか分からない。

けど、直接手を出す事はしない。


「何だ?来ないのか?天使の羽は、チキンの羽だったのか?」

「ジョークが好きなのね?」


よく堪えた。

自分をそう褒めたい。

天使にとって、純白の羽は魅力の一つだ。

男も女も、純白の羽の手入れは欠かさない。

それを馬鹿にされるのは、『お前、ブスだなww』と言われているようなもの。

我ながら、よく堪えたと思う。


「で?結局、お前はチキンか?」

「臆病なことは恥ずかしい事ではないわ。なんとでも言って。」


マイケルは分かりやすく顔を歪めた。

私には皮肉が効かない。

そう、思っているんだろう。

実際はそんなことないんだけど、ポーカーチェイスは重要だ。

それに、感情的にならないようにするためにも、ここで馬鹿にされても怒ったりしない。


「それかくらいにしたら〜?」


吸血鬼に昇華した人物、アンナが、転移で私の横に来ていた。


「天使の血って〜、どんな味がするんだろうね〜?」

「…吸わないでね?」


この吸血鬼、明らかに私の事を狙っている。

主に、捕食対象として…


「ちょっとだけ〜、ちょっとだけだから〜」


吸血鬼にしては、喋り方がフワフワしてる。

元からこうだったのか、昇華したときの精神歪曲でズレたか…

どちらにせよ、私の血を狙う危険な存在であることに、変わりはない。


「じゃあ、いただきま〜す。」


フワフワしながら私の後ろに回ったアンナは、私の首目掛けて

牙を突き立てようとしてきた。

しかし、


「あぎ?なにこれ〜?」


寸でのところで、私が十字剣で止めた。

氷で止めても良かったけど、相手は吸血鬼だ。


「うわ〜、十字架の剣〜」


やっぱりフワフワしているものの、アンナは嫌がっている.


「十字架に〜、冷気と〜、聖属性〜。私の苦手なものばっかり〜」


冷気って、吸血鬼の弱点だっけ?

そもそも、アンデッド系には冷気が効きづらいはずなんだけど…


「にしても〜、見た目は綺麗な剣だね〜」


水晶か何か出できた刀身と、美しい十字架のレイピア。

見た目が、最高の剣だ。

その時、


「その剣は!」


どうやら、マイケルは十字剣に見覚えがあるらしい。

もしかして、戦場とかで見たのか?


「お前…あいつから受け継いだのか?」

「あいつ?…ラフィエルのこと?」

「名前は知らねえ。だが、その剣を二本持った女天使だ。」

「この剣はラフィエルの物だから。きっと、その天使はラフィエルでしょうね。」


巨人にとって、ラフィエルは最大の怨敵だろうね。

個人で何千もの巨人を倒してる。

それどころか、強襲班の隊長をやってた事もあったらしいからね。

何度も巨人の集落を襲撃してるはず。


「そいつは…巨人の集落を襲撃してた奴か?」

「…」


言えば、絶対に良くない事になる。

しかし、『沈黙は肯定』とも言う。

いつ攻撃されても良いように、停止結界の準備をしておこう。


「そうか…その天使は、お前から見てどうだった?」

「?」

「主観的でいい。お前ら天使から見てどうだった?」


私達、天使から見て…


「天使の切り札。」

「切り札か…」

「けど、ラフィエルは天使を滅ぼした。」

「?…あれか?」

 

どうやら、マイケルも心当たりがあるらしい。

となると、天界襲撃に参加してたのか…


「ラフィエルは、大切な人を殺された激情で、デタラメに魔力を放出して、天界を氷漬けにした。」

「…」

「その時に、天界にいた全ての存在が凍り付いた。巨人も天使も。」


ハルトエルが殺されていなければ、天使は助かったかも知れない。

けれど、現実はそんなに甘くはない。

ラフィエルは、銀世界を使って全てを氷漬けにした。

そのことに変わりはない。


「ラフィエルは、確かに多くの巨人を殺してきた。貴方の言う通り、巨人の集落を襲撃していた。」

「やっぱりか…」

「けどね、ラフィエルだって好きであんな事してない。ラフィエルはこれ以上天使の犠牲が出ないようにと、仲間のために行動した。その結果は、よく分かってるでしょう?」

「そうだな。」


仲間のために、他を切り捨てる。

天使では当たり前のことだ。

他の種族では、理解し難いことかも知れないが、天使は仲間意識の強い種族。

ラフィエルの行動は、天使として“普通”の行動をしたまでだ。


「私は、巨人を悪く言ったりしない。あの戦争は、お互いの勘違いと先入観が生んだ悲劇。どちらも悪いと言えるから。」

「そうだな、すまなかった。」

「私のことを悪く言ったこと?」

「そうだ。俺は、深く考えずに感覚だけでお前を敵にしてた。」


本当に、先入観というものは恐ろしい。

ラフィエルと私を重ねて判断したことで、危うく冷戦状態になるところだった。


「私を悪く言うのは好きにすればいい。でも、ラフィエルをや他の天使を悪く言えば、私も容赦はしない。」

「分かった。気を付けておこう。」


その時、首に痛みが走った。

私は、なんとか平静を保っていたけど、口から心臓が飛び出そうなほど驚いていた。


「離れてくれない?」

「ひはは〜」


アンナが私の首に噛み付いていたのだ。

そして、チュウチュウと私の血を啜っている。


「おいひ〜」

「そう、じゃあ離れてくれないかな?」

「…」


無視しやがった…

私は、吸われている血に冷気を乗せてみる。

すると、


「あ〜!頭が〜!!」


かき氷を一気に食べたとき、頭がキーンとなるあれと同じで、アンナは私の冷たい血を飲みすぎて、頭痛になっている。


「もしかして〜、天音ちゃんって、氷使い〜?」

「下の名前で…」

「いいじゃん~、私達、同じ昇華者なんだから〜」


仲良くしよう、って言いたいのか?

…まあ、ほどほどになら別に大丈夫かな?


「私の扱う属性は、氷ですね。」

「やっぱり〜?じゃあ、わざと血を冷たくしたでしょ〜?」

「しましたね。離れてと言っても聞いてもらえないので。」


次噛み付いて来たら、無理矢理引き剥がす。

しかし、フラグというものは、私にも舞い降りて来るらしい。


「はむはむ」


またもやアンナが噛み付いて来た。

私は、牙が到達する前に停止結界で止める。


「あれ〜?なにこれ〜?」


体に纏うように停止結界を張っている。

これなら、首に噛み付かれることはない。

しかし、


「あ〜、結界か〜」

「そんな!?」 


なんと、力が吸い取られる感触と共に、停止結界が貫かれた。 

しかし、アンナは私から離れて、顔を覗き込んできた。


「さっき〜、変な感覚があったんだけど〜、あれって天音の力〜?」

「…そうね。」

「やっぱり〜?なかなか吸い取れないな〜、って思ってさ〜」


簡単に言ってくるが、すぐに破壊できない加工をしてある停止結界を、こうも簡単に砕かれるとは…

ラフィエルですら、この結界を破壊するには数回攻撃しないといけないのに…


「私ね~、能力を持ってるの〜。『吸魔』って言うんだけどね〜。魔法とか〜、能力とかを吸収できるんだよ〜?」

「それ、教えて良かったの?」

「別に〜?ちょっと能力を見れば、性質が分かるから〜、問題ないよ〜」


そんなに簡単に教えて良いものじゃないと思うんだけど…


「天音の能力は〜、防御系〜?」


そんなに簡単に聞かないでほしい。

普通、教えるようなものじゃないんだから…

そして、能力の話になった途端空気が一変した。

新人の使う能力について知っておきたい、という考えなのだろう。


「防御系ではないけど、どちらかというと、防御系に近い能力に間違いないね。」

「そうなんだ~。じゃあ、これは防げる〜?」


すると、先程までのフワフワとした空気が嘘のように吹き飛び、強烈な殺気が叩きつけられる。

その姿は、闇夜に紛れて獲物に襲いかかる、吸血鬼そのものだった。


「ワ〜オ!まさか、一歩も動かないなんて〜」 


停止結界を張って防御しただけで、特に変わったことはしていない。

停止は、対策さえされなければどんな攻撃も防御できる。

はずだった…


「あれ?意外と簡単に壊せたね。」


どうやら、昇華者に停止結界は意味をなさないらしい。

停止結界は、緋神彩の攻撃によって、簡単に破壊された。


「なるほどね…」


それどころか、何か感づかれたらしい。

しかし、私もなんとなく緋神の能力が分かった気がする。

アンナに貫かれた時は、吸い取られるような感触があった。

緋神に破壊された時は、まるで停止していた結界が動き出すような感触あった。

停止を動かす。

それは、停止の反対の能力である『加速』だろう。

つまり、緋神彩の能力は加速。

或いは、私のように能力の本質が加速なのか…


「俺も、やってみようかな。」


そう、声を掛けられた時には戦鎚を構えたマイケルが、すぐそこまで来ていた。

冷静に停止結界を張るが、何か背中にゾワッとするものを感じ、十字剣を構える。


「オラァ!!」


マイケルは、私に当たるような位置に、戦鎚を振り下ろしてきた。

すると、いともたやすく停止結界は破壊され、そのまま私に向かってくる。

私は、準備していた十字剣を、戦鎚へ向けて置く。

すると、


「なっ!?」


剣先が戦鎚に触れると同時に、戦鎚が止まる。

私は、一切手を動かしていない。

そう、十字剣にめいっぱい停止の力を込めていたのだ。

そうすれば、能力も無理矢理停止させられる。

…つまり、ゴリ押しだ。

ついでに、マイケルの能力も分かった。

おそらく『破壊』

理由はびっくりするほど簡単。

だって、停止が結界ごと粉々に砕け散ったからね。


「ずいぶんと変わった能力だな。防御系…にしては簡単に突破出来たんだが…」


そんなに大きな声で分析しないでほしい。

やっぱり、こいつ嫌いかも。

後三時間で、もう一回五千字書かないといけないのか…

…時間、足りるかな?

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