表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/93

ボスとその他色々

十六階層 ボス部屋


「トリプルボスラッシュですか…」


今回のボスは、四つ腕巨人が3体いた。

しかも、一体一体がグモラよりも強い。

何なら、私よりも強いかも。


「これは…いけるのか?」


戦う前から不安になってきた。

でも、取り敢えず記録氷の中身だけ見よ。

私は、いつものように記録氷に触れる。

すると、いつものように記録氷から光が溢れ出し、私を包み込んだ。

















「これは…」


私の目の前に出てきたのは、十五階層のような巨大な樹の森だった。

そこに、天使が編隊を組んで飛んでいるのが見えた。


「自分で飛べってことか。」


今回は、憑依していない。

つまり、自分で飛ばないといけない。

私は、飛行の術を使って天使の編隊に着いていく。

すると、


「これは…巨人の集落?」


そこには、鐘を鳴らす巨人の集落があった。

中には子供もいた。

そこへ、天使は容赦なく襲いかかる。


「天使を攻撃したんだから、これくらい普通だよね?」


巨人の女子供が殺されているが、そんなことはどうでもいい。

天使を攻撃したんだ、当然の結果だ。

もし、この場に他の人間がいれば、天使のことを批難していただろう。

天使とはいえ、これはただの虐殺行為。

当然批難するはずだ。

それなのに、天音はこれを当然だと言っている。

何故なら、天音の思考は完全に天使のものになっている。

天使は、想像するような慈悲深い存在ではない。

では、実際の天使とはどんなものだろうか?

天使とは、残虐で冷酷で排他的な、閉鎖種族なのだ。

他種族との交流を断ち、自分達だけで生活する。

危害を加えられなければ何もしないが、たった一人でも傷付けられれば、種族全体で報復を行う。


「あ、また子供が殺られた。」


敵が、老若男女何であれ殺す。

そこに、慈悲などというものはない。

あるのは、敵を殲滅するという意志だけ。

そのため、天使は絶対に手を出してはいけない種族の代表でもある。

手を出せば、待っているのは周囲を巻き込んでの破滅だから。


「これで、この集落は全滅かな?…いや、何体か逃げてるね。」


天使達は、逃げ出した巨人を殺すべく、散開して巨人の殲滅に向った。


















「この記録氷は、何が言いたかっんだろう?」


戻ってきた天音の言葉はそれだった。

この記録氷は、昇華者候補が何処まで天使に近付いたかを確認するためのものだった。

少しでも、可哀想と思う意志があれば、天使へはまだ遠いということ。

天使の思考が順応していくまでの時間稼ぎとして、試練の界が広くなっていた。

しかし、


「これ、殺したら復活するのかな?」


天音の思考は、天使の思考へ変わっていた。

これなら、階層を増やす必要がない。

天音が試練を超えるまでもう少し。

十六階層で、候補者を鍛える試練は終わり。

これからは、昇華者としてふさわしかどうかの試験になる。


「さ~て、実験開始だ!!」


そんなことはつゆ知らず、天音は三体の巨人に向って飛び出しだ。
















「まずは、一体。」


私は、腕を全て切り落とし、まともに攻撃出来なくなった巨人の首をはねた。

この調子で行けば、余裕で勝てる。

アーツオーブで手に入れた、気配感知。

これのおかげで、攻撃を回避しやすくなった。


「遅い…そして、甘い。」


八本の腕による連携プレイが飛んできたけど、今の私なら容易く避けられる。

ついでに、一番近くの手を切り落としておいた。


「攻撃力、速度、感知、技。どれも、十字剣を手に入れた時とは、比べ物にならないほど強くなった。」


ついでに、天使の思考へ変化したことで、殺しを何とも思わないと強固な精神力も手に入れた。

心技体。

今の天音には、それが揃っていた。


「もう直接首をはねた方が早いね。」


二体目の巨人の首を切り落とす。

所詮、十六階層までのモンスターは、候補者の生贄。

候補者を鍛える(レベルアップする)ための養分(経験値)でしかない。

そして、


「これで、最後ね。」


天音は、デザートを完食した。

















十七階層


「ん?石板?」


『ここまで辿り着いた候補者よ。』


「…誰?」


石板を覗き込むと同時に、声が頭の中には響いてきた。


『これより先は、真なる試練。』


「真なる試練?今までは試練じゃあなかったの?」


だとしたら、あれは何だったのよ。

私、何回か死にかけてるよ?


『今までは、候補者を鍛えるためのものだった。そして、汝は十分な力を身に着けた。』


「なるほど。RRGでも、レベル1から始まるもんね。いきなり、魔王城に飛ばされて、勝てるか!!って、話だもんね。」


つまり、今までの試練の界は、レベルアップ用の訓練場だったってわけか。

そして、これから私が昇華者としてふさわしか決めるってわけね?


『汝の力を示せ。』


「…それだけ?」


もっとこう、『汝が新たなる昇華者へ至ることを願っているぞ。』とか、なかったの?

………

本当にないんだ…


「取り敢えず、一旦帰って準備しないと。」


私は、転移で家に帰った。

















帰ってくると、ちょうど十二時で、お昼ごはんの時間だった。


「おかえり。うどんと蕎麦、どっちがいい?」


お婆ちゃんがお昼ごはんをどうするか聞いてきた。

そうだね~、蕎麦というよりは、うどんの方が食べたい。


「私、冷たいうどんが食べたい。」

「うどんね。ちょっと待っててね。」


お婆ちゃんは台所に、うどんを茹でに行った。

チリーンチリーン

風が吹いてきて、軒下に吊るされた風鈴が鳴る。

暑い…

いや、私は冷気を出せば夏の暑さなんてどうにでもなるんだけど…

加減が難しいんだよね〜、冷気の放出って。

いつの間にか、家が冷凍庫になってた、って事もあり得るからね。


『続いてのニュースです。アメリカのマシュー大統領暗殺未遂事件に進展がありました。』


大統領暗殺未遂ねえ?

そういえば、一時期凄い話題になってたね。


『世界的犯罪組織、〘新世界連盟〙の構成員による犯行であった事が分かりました。』


新世界連盟…確か、ダンジョンが出現した後、ダンジョンによる新世界の創造を望む集団だったはず。

そう言えば、昇華者は新世界の神として、連盟の間では崇拝対象だったはず。


「あら?犯人がわかったの?」

「新世界連盟がやったんだって。」

「新世界連盟だって?あの犯罪組織の?」


世界中でテロを起こしてるだけあって、お婆ちゃんでも知ってるらしい。

日本だと、『東大寺焼き討ち事件』が有名かな?

新世界連盟にも派閥があって、その中に、昇華者を神として崇める狂信者の集団がいる。

そいつらが、世界の宗教施設を破壊して回ってる。

東大寺も、その標的にされて、奴らの襲撃で破壊された。

それが『東大寺焼き討ち事件』だ。


「天音ちゃんも、怪しい人がいたら気を付けるのよ?」

「大丈夫だよ。私は強いから。」


新世界…人ではなく、昇華者による支配が行われている世界。

それが、連盟が望む新世界。


「馬鹿馬鹿しい。昇華者がそんなこと望むわけないでしょう。」


人間の欲望を一方的に押し付けて…

人間如きが、昇華者を動かせると思ったら大間違いだ。


「うどんできたよ。」

「ありがとう、お婆ちゃん。いただきます。」


水で締めたうどんは、ツルツルで美味しかった。














「うわっ!?」


私は今、十七階層の攻略に備えて、千代田ダンジョンにやってきていた。

もちろん、転移で。

そして、転移先でびっくりしたような声が聞こえた。


「ん?…マスコミ?」


ここは、八十階層のはず。

護衛の冒険者も、上級って感じじゃなさそう。


「あの!転移トラップでここまで飛ばされたんです!!助けてください!!」

「…なるほどね。助けたいけど、ちょっと遅かったみたい。」

「え?」


すると、護衛の冒険者の一人が、急に苦しみ始めた。

それも、全身を掻きむしって。


「何が…」

「ここは、八十階層。食人植物の跋扈する階層だよ。」

「まさか…胞子ですか?」

「そう。」


八十階層の魔物の一種である、キラーマッシュルームは、胞子を吸った生物を凶暴化させる効果がある。 

そして、その胞子は回復魔法ではどうすることも出来ない。


「アアアアアアアアアアアア!!」

「ひぃ!?」


そして、胞子にやられた冒険者が襲い掛かってきた。

私は、冒険者の首を一瞬ではねた。


「こ、殺したんですか?」

「凶暴化した人間は、既に死亡しているようなものです。脳が完全にやられてしまってるので、薬も回復魔法も効きません。もはや、魔物と大差ありません。」

「だからって!!」

「ここは、ダンジョンですよ?」


その一言で、マスコミは黙った。


「これ以上、犠牲者を出さないためにも、転移で帰りますよ。そして、すぐに胞子を殺す薬を処方してもらってください。」

「彼の、ご遺体は?」

「…」

「どうしたんですか?」

「胞子が外に持ち出されないように、ここに放置するか、持ち帰ってすぐに骨も残さず焼却処分するかの二択です。」


誰もが絶句した。

そもそも帰れないか、帰れたとして骨すら残さず焼却処分されるか。

あまりにも救いがなさ過ぎる。

でも、これが正しいやり方なのだ。

…いや、もう一つ方法があった。


「もう一つ、方法がありました。」 

「それは、彼をご家族の元に帰すことができますか?」

「できます。」

「じゃあ、それでお願いします。」


私は、彼の頭を拾うと、切断した首と繋いだ。

そして、そのまま氷漬けにした。


「氷を砕くようなことをしなければ、このまま持ち帰っても、問題は無いでしょう。しかし、最終的には、焼却処分です。」

「でも、ご家族の元帰すことが出来るんですよね?」

「できますね。」


私は、冒険者の遺体を氷ごと収納する。

そして、全員に手を繋ぐように言い、そのまま転移した。


「帰ってきたんですか…?」

「見てわかりませんか?」


その後、私に関する評価は綺麗に分かれた。

容赦なく首をはねた姿を見て、倫理観に欠けているという声。

あれは、仕方のない事だったと、擁護する声。


「正直、周りの声なんてどうでもいいけど。」


それよりも、家の前に集まったマスコミが鬱陶しい。

ちょっとくらい話して来るか。


「白神さん、小沼さんの首をはねた時の気持ちをお聞かせください!」

「人を殺したことについて、何かございますか?」

「あれは、必要な事だったのでしょうか?」


あー…うるさい。


「なにも感じません。それと、あの殺人胞子を外に出さないためにも、あれは必要なことです。」

「なにも感じない?人を殺したのにですか!?」

「彼は、胞子に侵されて、もはや人と呼べる存在ではありませんでした。むしろ、モンスターと呼んだほうが合っているほどに。」

「息子を、息子をモンスターだと言うのですか!?」


あいつの母親か?


「なら、私はこういった方が良かったですか?『息子さんを殺したのは私だ』って。」

「そんなことを聞きたいんじゃありません!!私は、どうして息子を殺したか聞きたいのです!!」

「どうして?あの状況で息子さんを救う方法はありません。あのままにしておけば、周囲の人に胞子をばら撒き、被害を拡大する危険人物になります。」


それは、もはやモンスターと大差ない。


「それに、意識があるかは分かりませんが、もし意識があるなら息子さんはずっと苦しみ続ける事になりますよ?」

「だから、だから博司を殺したんですか?」

「はい。博司さんの為です。」


すると、母親は俯いて帰っていった。

ハァ…面倒くさ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ