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権力と十六階層

ダンジョン管理局


「行方不明者が二人もいるんだけど?」

「それが?」

「その行方不明者の最後の目撃情報が、貴女に転移させられたって、ものなのよ。」


私がなにかしたと、思ってるわけか…

まあ、転移させられて、行方不明ならまず私を疑うよね。


「加藤さんは、どんな変事が聞きたいんですか?」

「正直な返事ね。」


正直な返事か…


「二人はダンジョンにいるよ。」

「嘘ね。…いや、半分嘘ってところかしら?」


私が嘘をついてる?

それに、半分嘘ってどういうこと?

…もしかして

『スキル:真実の目』


「なるほど、加藤さんみたいなポンコツが、副長を任されてる理由が分かりました。」

「私は、ポンコツじゃない!!…と言いたいところだけど、あながち間違いじゃないのが悔しい。」


やっぱりね。

『真実の目:相手の目を見て会話したとき、その人が言っていることが、嘘か真か理解することが出来る。』

つまり、100%正解の嘘発見器って事だ。

この人に嘘はつけない。


「分かりました、正直に話しますよ。あの二人は、私が始末しました。」

「…本当に、そうみたいね。」


うん、困るよね。

だって、私のやったことは、普通に殺人だから。

そして、私は未来の昇華者。

ここで、私が殺人で捕まったら?この国にとっては、不利益でしかない。


「一人じゃないでしょ?」

「そうだね~。…三十人くらい殺したかな?」

「三十人…」


加藤さんが、頭を抱えてる。


「ダングレ共を皆殺しにしたせいで、数が増えただけですよ。もっとも、含めなくても6人くらいは殺してますけど…」

「…その中に、貴女の父親は含まれてる?」


私は、思わず目を丸くしてしまった。


「よく分かったね。私があのクソ親父を殺したって。」

「私、貴女のお父さんの死体を見たことがあってね。死因が明らかに人の手によるものだったからね。」

「それと、私との会話で?」

「ええ、父親の死因について聞いたとき、嘘をついてる事がスキルでわかったからね。」


なるほど…

そうだ、


「私が昇華者だって事は、何処まで知られてるの?」

「政治関係者は、大体知ってるわ。あと、警察上層部も。」


そこまで知られてるのか…それに、


「上層部の方々は、覗きをしても許されるの?」

「気付いてたの?」

「逆に、気付かないとでも?」


この部屋には、隠しカメラがつけられていて、現在進行系で監視されている。


「ライブ映像で、国会や内閣が見てるわ。もちろん、警察上層部もね。」

「ふ〜ん?で?私は捕まるの?」

「捕まるわけないでしょ?国が総力をあげて隠蔽にかかるわよ。」

「昇華者を失う事は、そこまでの損失なのね。まっ、当然か。」


国が隠蔽にかかるとは、昇華者の影響力は凄まじいね。

イメージとしては、こんな感じかな?


条例<政令<法律<憲法<昇華者


うん、個人が国家権力の上に立つってマジ?

三権分立もクソもないじゃん。

…あれ?


「昇華者ってさ、政治に口出せるの?」

「日本は、民主主義の国民主権だから、誰だって口出せるよ?」

「そうじゃなくて…」

「確かに、昇華者が本気でやれって言ったら、政府は従うだろうけど…やらないでね?」


うん、三権分立の意味。

昇華者に権力持たせすぎでしょ。

確かに、昇華者が居るだけで核以上の抑止力になるらしいからね。


「取り敢えず、派手なことはしないでね?まだ、諸外国にバレるわけにはいかないんだから。」

「分かりました。それなら、今から試練の界に行ってきます。」

「そうして。昇華者として、大々的に報道したほうが、政府の後始末も楽になるらしいからね。」


コソコソと隠すより、堂々と開き直った方が簡単ってことか…

行方不明扱いにするよりは、昇華者に馬鹿なことして殺されたって言い訳したほうが、政府も責任を昇華者に押し付けられるしね。


「ハァ…気を付けてね?」

「ヤバくなったら転移するから、大丈夫だよ。」


そう加藤さんに告げて、試練の界へ向った。
















内閣府庁舎


「ハァ…また厄介なことになりましたな。」

「我が国二人目の昇華者が、あそこまで危険な思想の持ち主とは…」

「彼女をそのままにしておけば、どんな災いを齎すか…」


天音の狂気に頭を抱えるのは、国の上層部も同じだった。

もし、天音が他国で人殺しすれば、最悪国際問題に発展する可能性もある。

そうでなくとも、天音の悪行を理由に、諸外国に付け入る隙きを与えてしまうかも知れない。


「彼女の思考をどうにかすべきだろうが、狂人の思考を一般人に理解することは出来ない。もしかすると、それが彼女の逆鱗に触れる事になるかも知れない。」

「では、そのままにしておくと?」

「目には目を歯には歯を。或いは、毒をもって毒を制すだ。昇華者には昇華者をぶつけるしかない。」

「緋神さんに押し付けると?」


緋神 彩(ひがみ あや)

日本にいる昇華者であり、『悪魔』に昇華している。

炎と邪属性を扱う、天音と対をなす存在だ。


「彼女は、天使に昇華するんだろう?暴走する天使を止めるのが悪魔とは…」

「普通逆ですよね?」

「二人は、入る試練の界を間違えたのでは?」


天使に昇華するはずの天音のほうが、よっぽど悪魔の所業をしている。

逆に、彩は慈善活動に積極的で、人間にやらせるには荷が重いモンスターの相手は率先して引き受ける、まさに天使のようなことをしている。


「慈悲深い悪魔と、残虐な天使。我が国の評価はどうなることやら…」


だが、世界もすぐに理解するだろう。

天使という種族がどんなものか。

想像するような慈悲深い存在ではないことを。

それは、天音が天使へ昇華してから、しばらく後になるだろう。

















試練の界 十六階層


「相変わらず巨人ですか…」


私を取り囲むようにして、三体の比較的小さい巨人がいた。

子供という程ではないが、大人にしては小さい。

それか、生まれながらに背が低いか…


「過去視の試練で、かなりレベルが上がったけど、こいつら十五階層よりも遥かに強そうなんだけど?」


私が強くなるにつれて、巨人の強さも上がるのか?

だとしたら、いつまで経っても力の差が出来なさそう。


「取り敢えず、こいつらを倒さないと………ふぅ~、囲めば私に勝てると思ってるのか知らないけど…」


十字剣に力を込める。


「全方位攻撃も出来るのよ!!氷華剣・吹雪舞!!」


私は、フィギュアスケーターのように回転すると、冷気と共に斬撃が舞う。

まるで、つむじ風のようにいくつもの、回転する無数の斬撃が舞う。

 

「あらら、威力が強すぎて悲鳴が聞き取れないや。」


私の耳には、風の音と床が斬撃で削れる音しか聞こえなかった。

まぁ、下手に口を開けば冷気が流れ込んでくるから、叫ばない方がいいけどね。

最悪、斬撃が口の中に飛んでくるし。


「うわっ、細切れになってるよ…」


当然である。

つむじ風に乗って、無数の斬撃が飛んでくるのだ。

あっという間に細切れになるだろう。

技は、氷華剣の一つだが、やっている事は死氷剣と似ている。


「ん?」


細切れになった巨人の肉山の中から、光る玉が見えた。


「アーツオーブ!?」


まさか、こんなところにアーツオーブがあるなんて…

最近、なんとなくだけどアーツオーブとスキルオーブの違いがわかるようになってきた。

アーツオーブは純粋に力が詰まってる感じで、スキルオーブは特有の力が詰まってる。

まぁ、スキルって能力のことだし。

アーツは技術のことだからね。


「これは…剣術のオーブかな?」


前に、魔力操作のオーブを手に入れたばかりだから、また魔法関連のオーブとは考えにくい。

となると、剣術かその他の技術。

剣術だったら嬉しいんだけど…


「お願い!剣術のオーブであって!!」 


私は、オーブを使用して、オーブの技術を取り込む。

すると、いつものように情報が流れ込んできた。

ただ、前のように痛くなかった。

昇華者に近づいた事で、情報処理能力が上がったかな?

そして、流れ込んできた技術は、剣術の技術だった。

しかし、


「剣術…ほとんど無いじゃん。これは…気配感知?」


剣術のことについては、カスほどしか無かったけど、代わりに気配感知などの、感知系の技術が詰まっていた。

けど、これはこれでいい技術を手に入れた。

感知系の技術が向上すれば、相手の動きを読み取りやすくなる。

すると、相手の攻撃を躱しやすくなる。

もちろん、相手の動きに合わせて動けるので、こちらの攻撃は当てやすくなる。

更に、エネルギーの動きを感知しやすくなった。

これにより、相手が魔法を使おうとすると、魔力の流れを感知して事前に魔法の発動を予知することが出来るようになった。

更に更に、空間感知能力も向上したから、転移からの奇襲にも対応出来るようになった。まぁ、それだけが空間感知じゃないんだけど…


「感知系の技術、数が多すぎて分かんなくなってきた。」


他にも…一纏めにするなら、色々感知出来るようになったかな?

うん、めっちゃざっくりしてる。


「実験台は…いたね。」


感知技術が上がったって事は、私の気配探知範囲と制度が向上してる。

これで、索敵はもちろん、奇襲への対応も格段にしやすくなった。

だから、さっきまで感知出来なかった巨人達も、感知出来るようになった。


「あーそーぼ」


そう言って、奴の背中を切り裂いた。

もちろん、聖属性がたっぷり乗った剣でね。

すると、当然巨人はブチ切れて襲いかかってくる。


「遅い」


凄いね、目を瞑ってても動きがわかる。

それも、スローモーションで。

これじゃあ、今の私に攻撃を当てることは出来ないね。


「実験に付き合ってくれてありがとう。お礼に優しく殺してあげるよ。」

「天使…コロス…マケナイ…」

「へぇ?自我が残ってたのかな?」


にしても、巨人が日本語を話すなんて…自動翻訳でも、働いてるのかな?

それで、巨人の言葉が日本語として聞こえたのかも。


「まあ、別にどうでもいいけど。じゃあね。」

 

私は、巨人の首を一撃ではねた。

















ボス部屋前


「十五階層のときは、ここで苦戦…負けて逃げたけど。今回はどうなるか…」


一発クリア目指したい。

けど、無理はしない。

自分の命が最優先だからね。


「よし、行こう。」


私は、ボス部屋の扉を開いた。

いい忘れてましたけど、十六階層は遺跡タイプです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 天使が悪魔で、悪魔が天使か。だんだん狂ってきていい感じです(*´ω`*) [気になる点] 条例>政令>法律>憲法>昇華者 のところですが、< に変えた方が分かりやすいと感じました。 [一言…
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