沖縄旅行2
「えーっと?邪魔したかな?」
私が、転移でジュースを買って帰ってきたら、矢野ちゃんが香織を押し倒してた。
「違うんです!!私がコケて、それを香織先輩が支えようとして!!」
「ごゆっくり…」
「違うんですぅーーー!!」
高級ホテルのスイートルームに、矢野ちゃんの悲鳴が響き渡った。
天音がジュースを買いに行ってから数分
「もういいの?」
「ずっと先輩に甘えるのも良くないと思って…」
さっきのは、照れ隠しの嘘です。
本当は、膝枕してもらってるこの体勢が恥ずかしくなって、起き上がっただけなんです。
そして、立ち上がろうとした時、
「きゃっ!?」
「優花!?」
私は、足を滑らせてしまいました。
そして、香織の方へ倒れてしまいました。
「ぎゃん!?」
「いたっ!?」
私が倒れてきた事で、香織に私の全体重がのしかかります。
また、本能的に地面との衝突を回避しようとしたことにより、私の腕が香織の腹に突き刺さってしまいました。
「大丈夫ですか!?」
私は、悲鳴のような声で香織に確認を取ります。
「私は平気…優花は?」
「私は…香織がクッションになってくれたので、何とも…」
申し訳なさすぎて、恥ずかしい。
「良かった。ごめんなさい、支えてあげられなくて。」
「大丈夫ですよ。それよりも、今は自分の身のことを心配してください!」
そこで、気が付きました。
私は今、香織の顔の横に手を置いて、のしかかっている事に。
それは、傍から見れば押し倒しているように見えることに。
私は、恥ずかしく顔を真っ赤にしながら離れようとしました。
早くしないと、白神先輩が帰ってくる。
しかし、時既に遅し。
「えーっと?邪魔したかな?」
ジュースを買ってきた白神先輩が、転移で帰ってきていました。
「違うんです!!私がコケて、それを香織先輩が支えようとして!!」
パニックになった私は、恋人同士になってからほとんど付けてこなかった、先輩呼びをするほど焦っていました。
「ごゆっくり…」
先輩が、ジュースを置いて転移しようとします。
「違うんですぅーーー!!」
私が、悲鳴のような声を上げたことで、白神先輩は止まってくれました。
ふぅ…これから誤解を解かないと…
誤解ってなかなか解けないんだよね〜
「えーっと?つまり、甘えるのが恥ずかしくなって、立ち上がろうとしたらコケたと?」
「そうです!それで、コケた先でさっきみたいな体勢になったんです!!」
「ラブコメみたいなシチュエーションね…」
「ですね…」
そんな都合のいい話が本当にあるとは思わなかった。
そのうち、夜景を見ながらキスシーンとか起こりそう。
…いや、この二人なら、それくらいやってるか。
「で?私はソファーで寝たほうがいい?」
「そこまでしなくてもいいよ。天音の前なら添い寝するのは恥ずかしくないからね。」
「確かに、白神先輩の前なら恥ずかしくないですね。」
「なにそれ?私ならって、どういうこと?」
「信用してるんですよ。」
う〜ん、そうは聞こえないんだけど…
なんか、バカにされてるみたいな気が…
私は、なんとも言えない気分になりながら、ベットに倒れ込んだ。
今日は疲れたし、また明日から頑張ろう。
翌朝
「見てくださよ、このオムレツ。トロトロですよ!!」
「流石高級ホテルね。最高の朝食になってる。」
「ホテルのお味噌汁って、何故か病みつきになるよね。」
「「わかる」」
二人が、ザ・洋風な朝ごはんを食べてる中、私は一汁三菜の和食を楽しんでいた。
特に、味噌汁は何回もお替わりして、一人で結構な量の味噌汁を飲んでいた。
「そういえば、このホテルって、お土産としてケーキが美味しいらしいですよ?」
「ホテルでケーキ?お土産に?」
「欲しいなら買うよ?」
「じゃあ、お願いします。」
矢野ちゃんが、遠慮なく頼むようになった。
高級ホテルで寝泊まりしたことで、金銭感覚が狂ったかな?
それとも、私に奢ってもらうって状態が、普通に感じられるようになったか…
「沖縄観光をするって言ってたけど、どこに行くの?」
「そうですね…首里城は行きたいですね〜。」
「後は、水族館とか、琉球ガラスを買いたいね。」
「私、ひめゆりの塔に行きたいんですけど…」
「ひめゆりの塔?どうしてそこに?」
ひめゆりの塔とは、大戦末期に沖縄で活動していた、ひめゆり学徒隊という女子学生達の慰霊碑の事だ。
「お父さんのご先祖さまの一人に、そのひめゆり学徒隊だった人がいるんです。その人は、生還したそうなんですが、もしかしたらその人の友人が眠ってるんじゃないかって。」
「それで…」
「じゃあ、旅の締めくくりとして、最後にそこに行きましょう。ちょっとくらい遅くなっても、転移なら船や飛行機の時間を気にする必要はないからね。」
私達は、ホテルをチェックアウトすると、まずは首里城に向った。
首里城
「これが首里城なんですね…」
「2019年10月の、沖縄スタンピードで焼け落ちて以来、復元工事が進められて、去年元の首里城に近い状態まで復元出来たらしいね。」
「ですね〜。スタンピード前の首里城を見たことはないですけど、世界遺産って凄いですよね~」
完全にカップルで旅行に来てる雰囲気をだす二人を、後ろから見守りながら、私も沖縄観光を楽しんでいた。
首里城か…本当に赤いんだね。
う〜ん?
それしか感じないね。
やっぱり私って薄情なのかな?
まぁ、人殺して何も感じない時点で、かなり薄情なんだけど…
「もっと、美味しいものとかにお金使いたいな〜」
何処かに、美味しいゴーヤチャンプルが食べられるお店ないかな?
ゴーヤって、苦手な人多いけど、私は結構好きなんだよね~
後は、サーターアンダギーも食べたい。
甘いものも大好きだからね。
にんじんシリシリって、沖縄の料理だっけ?
あ!シークヮーサージュース売ってる!!
私は、香織の服に魔力を発する氷を付けて、ジュースを買いに行った。
あの氷が、発信機の役割を果たしてくれるから、二人を見失う事は無いはず。
「シークヮーサージュース一つ下さい。」
「あいよ!」
私が、近くのベンチでジュースを飲みながら、魔力を練ってると、氷が近付いてきた。
「白神先輩、こんなところにいたんですか?」
「ごめんごめん。ジュース買ってたら見失ってさ。二人共楽しそうだったから電話かけるわけにもいかなくて…」
息を吐くように嘘を付く私。
やっぱり、よく言われてるサイコパスってやつなのかな?
「次はどこに行く?」
「琉球ガラスを見に行きたいな〜」
「じゃあ、私も行きます!!」
そんな感じで、琉球ガラスを買いに行くことになった。
「凄い…綺麗ですね。」
「ほんとね…どれを買おうか迷うね。」
「綺麗…」
琉球ガラスのガラス細工は、とても美しくて、すっかり見とれてしまった。
私は、氷使いらしくこういう、宝石のような物が大好きなのだ。
宝石か…今度、宝石が採れるダンジョンにでも行こうかな?
それか、噂のジュエルスライムを探すか。
ジュエルスライムは、魔力を流し込むと逃げるときに宝石を置いて逃げるという、それはそれは素晴らしい性質を持っている。
生け捕りにすると、とんでもない大金が貰えるんだとか…
そりゃあそうだよね。
魔力を流し込むだけで宝石が手に入るんだもん。誰だって欲しいに決まってる。
「これは…」
そんなことを考えていたとき、一つのガラス細工が目に止まった。
そのガラス細工は、透明なガラスの珠の中に、水と赤と青のガラス玉が入っているという物だ。
私は、それに一目惚れして、そのままレジへ持っていっていた。
値段は気にならない。
とにかく、これが欲しかった。
「こちらの商品は、非売品でして…」
「一億出すわ。売ってくれないかしら?」
私は、空間収納からキャッシュの一億を取り出してみせる。
店員や、周りの人が目を見開いている。
すると、
「代金はいらん。持ってけ。」
髪の白い、いかにも頑固そうな爺さんが出てきた。
「あの、渡しちゃっていいんですか?」
「一億出してまでして欲しがってるんだ、譲ってやれ。」
「分かりました…梱包は…」
「手厚いのをお願い。」
「かしこまりた。」
私は、一億を空間収納に戻す。
その時には、爺さんはいなくなっていた。
不思議な人だ。
そして、箱を持った店員さんが戻ってきた。
「これでよろしかったでしょうか?」
中には、私の欲しかったガラス細工が、ベッドの上に寝かされていた。
「ありがとう。」
私は店員さんから箱を受け取ると、百万円を手渡した。
「一応貰って置いて。」
「は、はい…」
百万円が入って、分厚くなった茶封筒を見て、店員さんがビクビクしていた。
私は、受け取った箱を、大事に空間収納に保管する。
そして、空間収納内でも、他の物体が近づかないようにした。
「…」
私が静かになった事で、周りも静かになる。
スマホを持ち出してる奴もいる。
私が昇華者になったら、この店は有名になるだろうね。
「二人は決まった?」
「え?あ、はい。決まりましたよ。」
「なるほどね、お揃いのグラスね?」
如何にもカップルって感じがする。
次は、水族館か…
二人だけにしてあげようかな?
私は、二人の分の会計も済ませると、二人を連れて水族館へ向った。
水族館前
「水族館といえば、デートスポットでしょ?」
「そうですね?」
「だからね、代金は出すから、二人で存分に楽しんできてね。」
香織は、私の言いたい事がすぐに分かったみたいだけど、矢野ちゃんは、わかってないらしい。
エスコートは、香織がしててくれるでしょ?
「はい、好きなだけ使っていいから。後、この氷は取らないでね?」
私は、カードを香織に渡すと、すぐにフードコートへ向った。
二人には、水族館デートを楽しんでもらおう。