沖縄旅行
海の家
「ヤケ食いは体に悪いよ?」
「ちょっとくらい太ってても、優花は可愛いよ?」
「衝撃の事実を聞かされて、こうしないとやってられないんで、んぐっ!?」
「大丈夫!?」
どうやら、喉に詰まったらしい。
そんな食べ方するから…
私は、3杯目のかき氷を食べきる。
「次、レモンで。」
「ゲホッ!ゲホッ!…白神先輩、お腹壊しますよ?」
「冷たいのには強いから大丈夫。」
「そうですか…それよりも、寒いんですけど?」
私は今、ずーっと暑いっていう、矢野ちゃんの為に、冷気を垂れ流してる。
温度計を見てみたら、十四度。
真夏の沖縄なのに、冷蔵庫みたいな温度だ。
「嬢ちゃん、そろそろ止めてくれないか?」
「はいはい。…止めましたよ?」
「そうか…まだ、寒いんだが?」
「熱とか炎とかは使えないので、自然に温まるのを待たないといけませんよ?」
沖縄なら、これくらいすぐに元に戻るでしょ?
取り敢えず、4杯目のかき氷に手を付ける。
「嬢ちゃんがいたら、夏場はエアコンいらずだな。」
「確かに…白神先輩、私の家でエアコンになってくれませんか?」
「普通にエアコン使えばいいじゃん。」
人の事を、空調家電か何かだと勘違いしてるんじゃないの?
でも、家のエアコン代が浮くから、お母さんとかに喜ばれるかも。
夏は、私が一番活躍する時期なんじゃないかな?
「白神先輩、ホントにお腹壊しますよ?」
「じゃあ、これが最後。」
「そうして下さい。」
矢野ちゃんに止められて、私はこれ以上かき氷を食べのはやめた。
それでも4杯目は食べてるんだけどね。
「さて、腹ごしらえもしたし、今度こそ泳ぎに行くよ!」
「「オー!!」」
私達は、人が少ない場所を選んで、海に入る。
海は、温水プールほどではないけど、結構暖かかった。
「せんぱーい、何処まで泳げるか勝負しません?」
「いいね、圧勝してあげるよ。」
この私に、競争を持ちかけるなんて…いい度胸じゃん。
身体能力の差、って物を見せてあげるよ。
「よ〜い…スタート!!」
香織の合図で、二人共泳ぎだした。
私は、こう見えて水泳が得意で、基本的にどんな泳ぎ方もできる。
今回は、平泳ぎでやろうかな?
矢野ちゃんは…バタフライか。
せっかくだし、矢野ちゃんに合わせて泳ごうかな?
私は、矢野ちゃんと同じ速度で泳ぐことにした。
(結構速いね…もしかして、ダンジョンに行ってるのかな?だとしたら、レベルの影響で身体能力が上がってるのかな?)
矢野ちゃんは、水泳選手並の速度で、バタフライをしてる。
そう言えば、アスリートってダンジョンにいけないんだっけ?
レベルアップは、ドーピングと同じ扱いを受けるはず。
(そのせいで、冒険者のイメージが悪くなった事もあるんだけどね。)
今は、理解されてるとはいえ、矢野ちゃんの様子を見てると、レベルアップが、ドーピング扱いされるのも納得だね。
一般人が、アスリート並のパフォーマンスが出来るんだもん。
(さ~て、何処まで泳げるかな?)
3分後
「ぷはっ!」
矢野ちゃんが限界を迎えて、海面に上がってきた。
「私の勝ちだね。」
「さ、流石に無謀でした…」
私は、息切れしてる矢野ちゃんを回収して、転移で浜まで戻る。
すると、
「いい加減にしてくれる!?私は行かないつってるでしょ!」
香織の怒鳴り声が聞こえてきた。
また絡まれてる。
「香織、大丈夫!?」
「優花!」
矢野ちゃんが、香織の元に駆け寄った。
これは、面倒くさいし威圧して追い払うか…
「うおっ!?」
「私の親友が何か?」
「いや、その…」
「用が無いなら帰ってもらえる?せっかくの旅行が台無しだから。」
「あ、ハイ」
男は、そそくさと去っていった。
「やっぱり親友が冒険者だと、こういうときに頼れるからいいよね~」
「しばらく、ぐーたらしてるから電話で呼べるだろうけど、普段はダンジョンにいるからね?」
「分かってる、じゃあしばらくは問題が起きたら、天音に助けてもらおうかな?」
下らない事で呼ばれないといいな〜
まあ、デートの財布兼荷物持ちとして呼ばれるだろうけど。
「せっかくだし、明日学校サボって沖縄観光しない?」
いや、それはまずいでしょ。
「いいですね!一日くらい休んでも、成績には響きませんしね。」
「じゃあ、親に電話して、状況を説明しよう。」
「ハァ…私はホテルの予約しとくね。」
「「お願い(します)」」
大丈夫かな?この二人。
この調子だと、簡単に学校サボるようになりそうで怖い。
そのうち高校辞めるとか言い出しそう…
…その時は、仕事が見つかるまで私が資金援助するか。
私は、二人が親に電話している横で、今日泊まるホテルを探した。
「予約してた白神です。」
「三名様でお泊りの、白神様ですね?こちらへどうぞ。」
私達は、受付の人に案内されて、ある部屋に向かう。
そして、矢野ちゃんが看板を見て驚愕していた。
「先輩…どこ予約したんですか?」
「スイートルームだよ?」
「「…は?」」
「スイートルームだよ?」
「…スイートルームですか?…私の勘違いじゃなければ、ここって沖縄でも、屈指の高級ホテルのはずなんですけど?」
「そうだよ?」
それを聞いた香織が、頬を引き攣らせる。
「一泊いくらなの?」
「一人、五十万くらい?」
「…金遣い荒くなったね。」
一泊3人で百五十万。
昔の私からすれば、あり得ないお金の使い方だね。
余裕が出来たと考えるか、金遣いが荒くなったと考えるか…
どっちにしても、お金に余裕が出来たからこそ出来ることだね。
お金があるっていいな〜
「本当にいいんですか?」
「手元に、キャッシュで3億くらいあって、口座には二十億以上あるからさ。遠慮しなくてもいいよ?」
「二十億…」
「どこでそんなに手に入れたのよ…」
「ダンジョン?」
そんな話をしてると、
「冒険者って、やっぱり儲かるんですか?」
受付の人が話しかけてきた。
「まあ、儲かりますね。こっちは入場料に命払ってるんで。」
「命…ですか?」
「はい、冒険者は常に危険と隣り合わせです。ちょっとしたミスが命に関わります。」
「それで、入場料が命ですか。」
もしかして、冒険者になりたいとか考えてるのかな?
止めたほうがいいかな?
「引きこもりだった弟が、冒険者になるって言い出して…」
「すぐに止めたほうがいいですね。」
「やっぱりですか?」
「言い方はアレかもしれないですけど、引きこもりが冒険者になって成功することは、殆ど無いです。それで成功出来るのは、ラノベの世界だけですよ。」
夢を壊すようで悪いけど、ニートが冒険者になって成功した試しなんて、聞いたことない。
だいたいの奴が、死亡者統計の数を増やすだけになる。
「どうして、急にそんなことを言い出したのか分からなくて…」
「何か、変わったことは?」
「ダンジョンで手に入れたという、短剣?を見せて来ましたね。弟は魔剣だ!!って叫んでましたけど。」
「魔剣か…」
強さによっては、この二人のプレゼントにするために、そいつから奪うのもいいかもね。
それか、千代田ダンジョンで探すか。
「魔剣があるなら、低難易度のダンジョンに行かせて、レベルを上げるよう言ってあげてください。レベルを上げないと、いくら魔剣があっても、危険なことに変わりはないので。」
「分かりました。すいません、急に声を掛けてしまって。」
「別にいいですよ。」
もし、その魔剣がダングレに奪われてたら、楽なんだけどね~
ダングレを始末して、奪い取ればいいだけだから。
「こちらが白神様のお部屋です。」
私は、鍵を受け取ると部屋の中に入った。
「凄い…広いですね…」
「高そうな備品ばっかりね。全部でいくらかかるんだろう?」
「流石スイートルームだね。高級感が違う。」
大金を出してまで泊まる価値があるね。
今度から沖縄に来るときは、ここに泊まろう。
「それじゃあ、私はベランダにいるから、二人は好きなだけイチャついてていいよ?」
「白神先輩…それが目的でここを選びました?」
「社長令嬢の恋人とはいえ、こういう所に来ることは滅多にないでしょ?何なら、私はソファーで寝るから、二人で夜を楽しんでもいいんだよ?」
すると、矢野ちゃんが恥ずかしそうに顔を真っ赤にする。
おやおや〜?これはいけるのでは?
「そういう事は、初めはそういう所でやるべきだと思うんですけど…」
「優花が嫌らなら別にいいんだよ?私は優花に合わさるから。」
「ごめんなさい、こんなヘタレで…」
「優花は、ちょっと奥手なだけだよ。ずっと一緒に居るから、いつでも言ってね?」
矢野ちゃんは、香織に甘えるように膝枕をしてもらう。
私は、その場からスッと離れてベランダに向った。
百合の花が咲き誇る、あまーい空間は、私には少し刺激が強かった。
矢野ちゃんって、結構甘えん坊なのかな?
それとも、落ち込んでるせいで、受けに回ってるだけなのか。
「どちらにせよ、私には甘過ぎるね。」
私は、口直しと言わんばかりに、ペットボトルコーヒーを一気に飲み干した。
ボスのカフェラテにハマってます。
皆さんも是非飲んでみてください。