リベンジマッチ?
早朝
「白神様ですね?こちらへどうぞ。」
私は、眠そうな係員の人に連れられて、巨大な冷凍庫にやってきた。
中はひんやりしていて、とても私服で入るような場所じゃない。
「あの、ほんとにダウンジャケットは要らないんですか?」
「私は、氷魔法使いよ?冷凍庫なんて、ちょっと涼しいくらいよ。」
「凄いですね…」
実際、全然寒くないしね。
それよりも、どこに置けばいいのやら。
私は、しばらく係員の人の後をついて行った。
「ここです。ここに置いてもらえませんか?」
「ここね?重ねた方がいい?」
「いえ、大丈夫です。」
そうして、案内された場所に二十匹の蟹を並べて、空間収納から出す。
一応、天火は壊しておく。
強度がイカれてるからね。
壊せるか分からないし、壊せないって、苦情が来ても嫌だし。
「はい、二十匹出したよ?」
「ありがとうございます、暖かいココアでも飲んでいきますか?」
「寒くないから、別に大丈夫よ。」
ココアか…コーヒーの方が飲みたいな。
それかミルクティー。
自動販売機で缶コーヒーでも買おうかな?
「コーヒーってある?」
「ありますよ?入りますか?」
「じゃあ、事務所まで転移するから。」
「はい?」
私は、係員の人の手を掴んで、転移を発動する。
「あれ?暖かい。」
「付きましたよ。」
「…転移魔法って便利ですね。」
「遅刻しないからね。」
まぁ、学校行ってないけど。
しばらくソファーに座って待ってると、インスタントのコーヒーを持ってきてくれた。
スティックタイプのやつだね。
あれ、結構好きなんだよね。
「あのカニどう使われるんでしょうね。」
「さあ?もうすぐ、創立十五周年のお祝いがあるので、そこで使われるんじゃないですか?」
「なるほどね、お祝いの料理に使うには、最高の食材ね。」
迫力満点のカニ料理が出来そう。
でも、あれだけ大きいと料理も大変そう。
いったいどうやって調理するつもりなんだろうか?
「さて、じゃあ私は帰るね。」
「はい、ありがとうございました。」
そして、転移でゴブリンダンジョンまで飛んだ。
久しぶりに行くな、試練の界。
「せい!!」
私の力は、この一ヶ月で大きく上がった。
あそこに着くまでの、雑魚サイクロプスなら、簡単に首を切り落とせる。
まるで、大木を切り倒してるみたいな作業と化してる。
「さてと、グモラはどこだったかな?」
ここに来てからも、何度かレベルアップしてる。
今ならグモラもそんなに苦労せずに倒せるんじゃないかな?
そんなことを考えながら、ボス部屋へ着いた。
「さぁ、リベンジマッチだ。」
私は、ボス部屋へ一歩踏み込んだ。
転移魔法は…使えるね。
一応、脱出は出来る。
万が一のことがあれば、転移魔法で逃げる。
「よし、じゃあ私から行かせてもらおうかな?」
私は、地面を強く蹴って、グモラとの距離を詰める。
そして、やつの足元まで来ると、一気にその体を駆け上がる。
当然、グモラは体をよじったり、手ではらったり。
私の妨害をしてくる。
けど、その程度で私を止めることは出来ない。
すると、グモラは首を守るように、手を首当てている。
「なら、その手から切り落とさせてもらおうかな!!」
まずは、右手。
前なら、絶対に切れなかった右手、今ならどうかな?
十字剣が、グモラの右手首に当たる。
「いける!!」
こんにゃくを切る程度の抵抗しか、感じなかった。
ただ、大きすぎて一回では切りきれない。
なら、何度も切ればいいだけの話。
「このままだと、お前も大木を切り倒してるみたいな作業と化すぞ?グモラ!」
だが、グモラが反撃出来るとは思えない。
レベルが五十近く上がった事で、以前とは比較にならないほど速くなってる。
今なら、グモラの攻撃なんて簡単に躱せる。
「グオオオオォォォ!!」
グモラが、右手で私を弾こうとするが、
「遅いな〜」
まるで、亀みたいな速度だ。
全然遅い、遅すぎる。
しかも、単調な動きだし。
それどころか、グモラは盛大にやらかした。
「首がガラ空きなんだよ!!」
こうなれば後は私のターンだ。
十字剣に魔力を収束させて、剣を肩まで振り上げる。
この日の為に練ってきた、対巨人用の新技。
今こそ使う時だ!!
「『氷華剣・木枯らし』!!」
魔法と剣を同時に使えるようにしたい。
そういう考えのもと、考案した魔法剣術『氷華剣』
木枯らしは、剣を横薙ぎに振るう事で、強烈な冷気持つ斬撃を飛ばす技だ。
触れたものを切り裂き、凍てつかせる。
ダンジョンの壁すら破壊した技だ、グモラが耐えられる訳が無い。
「あれ?腕まで切れてる…最初からこうすれば良かったかも。」
万が一のことを考えて、首が顕になってからにしてたけど、これなら最初から木枯らしを放っていれば、一撃で倒せてたのかも。
「技の大切さが分かるね。これからも色んな技を開発しよう。」
取り敢えず、グモラの体を浄化して、魔石を回収しよう。
にしても、呆気なかった。
あれかな?ゲームでボスに勝てなくて、レベルを上げまくったせいで、めっちゃ簡単にボスを倒せてたってやつ。
まさにそれだね。
レベル上げしないと、ボスには勝てないってことかな?
「お、魔石と…技能玉かな?」
剣術のオーブだったら嬉しいな、技術は純粋な力を凌駕するからね。
そんな期待を持ちながら、オーブを使用すると、
「これは…飛行の術?」
剣術ではなく、空を飛ぶ方法を手に入れた。
それに、擬似的な翼も出せるようになった。
試しに出してみると、
「天使の羽だね…完全に。」
天使が持っていそうな、純白の翼が出てきた。
翼は飛行の術の媒体として使うらしい。
無くても飛べるけど、魔力の消費と効率が良くないらしい。
「空を飛べるのか…でも、余計に目立つよね?」
外では使わないようにしよう。
私は、一度十六階層に降りて、転送装置を使って帰るねことにした。
…転移魔法使えるんだった。