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蟹売ってちょうだい

7月

蟹を倒してから約一ヶ月。

ようやく買いたいという所が見つかった。


「長かった…レベルが五十以上あがってるよ。」


これなら、試練の界十五階層も行けるんじゃないかな?

まぁ、今は蟹を売ることに集中しないと。

組合の会議室を借りる事になってる。

私は今、モモ姐さんと一緒に買い取りに来てくれる人を待っている。


「失礼します」


ドアがノックされ、スーツ姿の三十代くらいの男性が入ってくる。


「はじめまして、『大山ダンジョン食品』の北坂です。」

「はじめまして、冒険者の白神天音です。」

「組合受付嬢のモモよ、よろしく。」

「受付嬢…?」


そうだよね、最初は目を疑うよね。

だって、ゴリマッチョのオカマだもん。

でも、受付嬢何だよね。

まぁ、別にオカマから受付嬢やってても不思議じゃないけどね。


「それで、そちらはいくらで買い取ってくれる予定なんですかね?」

「そうですね、一億でどうでしょう?」

「一億ねぇ?」


こっちを試してるのか、本気で一億しか出さない気なのか…


「ずいぶん少ないですね?」

「そうですか?」

「傷だらけのものですら、一億したそうですね?」

「確かにそうですね。」

「私は氷魔法を扱うんですけど、蟹を冷凍して倒したんですよね。」

「つまり、傷がない状態で冷凍保存されてると?」

「ええ」


これでも一億から変えないようなら、売るつもりはない。

さぁ、どうする?


「なるほど、では六億でどうでしょう?」

「六億ですね?」


私がモモ姐さんの方を見ると、小さく頷いてくれた。


「分かりました、二億で買い取ってくれるのなら、売りましょう。」

「え!?」

「二億!?」

「ただし、」


私は、空間収納を半分だけ発動して、蟹をひょっこり出す。

それは一匹だけではなかった。


「同じ状態のが、二十匹居るんです。これを全て買い取ってくれるなら、二億で構いませんよ?」

「…は?」


実は、定期的に蟹と遭遇して、そのつど冷凍保存しておいた。

すると、いつの間にか二十匹まで増えていた。

正直、空間収納を圧迫して邪魔だった。

全部六億でも良かったんだけど、それだと買い取ってくれないかも知れないから、在庫処分を兼ねて、三分の一の二億で買い取ってもらうことにした。


「少し、相談したいのでお時間をいただけると…」

「構いませんよ?」

「ありがとうございます!」


そう言って、北坂さんは出ていった。

すると、モモ姐さんが、


「良かったの?」

「はい、どうせ空間収納を圧迫して、邪魔なだけなんで。」

「よくそれだけの量の蟹を捕まえたわね。」


物欲センサーかな?

正直、三体目くらいから、もう要らないと思い始めていた。

しかし、それから急に出会う頻度が上がった気がする。

大金が手に入る事は分かったけど、もう要らない。

買い取って貰えるか分かんないんだもん。

使い道がなかったら、ただの生ゴミでしかない。

あ、魔石だけ回収しておかないと。

やっぱり、物欲センサーは存在するに違いない。

そんなことを考えてると、電話を終えた北坂さんが帰ってきた。


「お待たせしました、そちらの条件で買い取る事にいたしました。」

「一応、言っておきますけど、魔石は回収させて貰いますからね?」

「はい、構いませんよ。魔石までは、うちではやってないので。」


もとから返す予定だったのか。

まぁ、魔石が手元に来るならそれでいいけど。

さて、どうやって渡せばいいんだろう?


「どうやって渡せばいいですかね?」

「うちの冷蔵庫まで来ていただけると…」

「分かりました、日付と場所を教えてもらえれば、いつでも。」


これで、輸送問題も解決した。


「支払いは、後日振り込みという事でよろしいでしょうか?」

「構いませんよ。」


支払い方法も決まった、あとは持っていくだけ。

私が場所を聞くと、以外な所だった。


「ここって…」

「はい、ダンジョン工業地区です。」


ダンジョン工業地区

時折、どこまでも平原が広がっているダンジョンが現れる事がある。

しかも、中にはモンスターが出現しない物もある。

そういうダンジョンに工場建てて、工業地区にするという動きが、全世界で進められている。

日本には、福岡と群馬にダンジョン工業地区がある。

工場で使う原料は、自然地形のダンジョンで取れる事がある。

有名なのは、石川の山岳ダンジョンだろう。

レアメタルが取れるという、夢のようなダンジョンらしい。

しかも、掘った地形は少しずつ再生していくので、実質無限にレアメタルが掘れるのだ。

話がそれだけど、とにかくダンジョンの産業利用が進んでいるという事を知っておいて欲しい。


「時間は、明日でいいですか?」

「明日ですか?こちらとしては、早く納品してもらった方が嬉しいのですが…そんなに早くていいんですか?」

「用事があるので、早めに済ませたいんです。早朝に行きますね。」


試練の界十五階層の攻略を早くしたいからね。

早朝のうちに、さっさと終わらせて試練の界に行きたいんだ。

いや、今から行ってもいいんだけど、時間がかかるかも知れないから、今からだと帰るのが深夜になるかも知れない。

それくらいなら、明日の朝早くから行きたい。

何故か、試練の界へは転移魔法が使えないからね。

ボス部屋へ直行とかが出来ないんだよね。

転移魔法も万能じゃないんだな〜


「それじゃあ、明日の早朝に行きますね。」


私は、それだけ言ってお母さんの実家に飛んだ。

ちなみに、お母さんは既に仕事を辞めて、家も引き払って、実家でニート生活を満喫してる。

私は、自分で布団をひいて、そのまま寝た。



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