高収入
誤字、脱字がありましたら報告していただけると幸いです。
「天氷!」
一撃で倒せる事は分かっている。
なら、単純計算で三十回天氷を使えば勝てる。
はずだった…
「一発で、八体も消し飛んだんだけど…」
密集している所を狙えば一気に倒せる。
というか、眩しい!!
レベルアップの光が鬱陶しい!
「なんか、ムカついてきた…ストレス発散じゃぁ!天氷!!」
天氷を十体くらいかたまってる所に放つ。
すると、十二体消し飛んだ。
うひょ~キモティー!
あっそろそろ光る。
私は、後ろに飛んで目を瞑る。
「よし、これで眩しくない。」
私が、目を見開くと、アンデット達は、ゆっくり近づいて来ていた。
「ゾンビの動きが遅いのは定番だからね、それじゃあ、さようなら。」
私は、大量の魔力を注ぎ込み、天氷を発動する。
すると、かなりの広範囲で天氷が現れ、巨人を氷漬けにする。
「あ〜、戻れなくなりそう。」
やってる事は、すぐに課金を勧めてくる無双系のソシャゲと変わらない。
しかし、これは現実。
強いスキル、強い武器を手に入れた奴が、成功するのも納得がいく。
「換金すればいくらになるかな?」
私は、ルンルン気分で、次の部屋に向かった。
「キッズの次は、ペアレンツですか…」
道中、大人の巨人にしか出会わなかった事を考えると納得できる。
「だとしてもこれは多すぎない?」
絶対百はいる、うん絶対。
魔力が持つだろうか?
私は、生まれながらに魔力が多かった。
それでも、天氷は魔力の消耗が激しい。
「魔力が切れたら全力疾走すればいいか…」
私は、あえて前に出る。
すると、気付いた死体巨人達が向かってくる。
「そうだよ、よしよしおいで。」
私は、後ろに下がりなかながら、天氷の準備をする。
そして、死体巨人を釣り続けて、通路をしばらく進んだとき。
「フフ、バーカ!一直線に並んだのが運の尽き!くらえ!天氷!!」
私は、剣を、“縦に”振る。
今までは、横に振っていた。
だから、弧を描くように氷が現れた。
しかし、今回は縦に振った。
つまり、天氷は直線状に奥まで進む。
「全滅は流石に無理か…でも、4割くらい減ったかな?」
私は、天氷を解除して前に進む。
巨人の前まで来ると、また天氷を使う。
「このやり方なら効率よく倒せるね。」
魔力を心配しなくて良さそうだ。
そして、全ての巨人を倒した時、
「あ!空間収納が使える!」
私は、空間収納が使えるようになった。
「天音ちゃん、今日はずいぶん稼いだわね〜」
「ええ、モモ姐さん。ただ、このことは黙っててもらえると…」
「ええ、分かったわ〜乙女の、『ひ☆み☆つ』よ〜」
この、モモ姐さんという人は、ゴリマッチョのオカマという、男性達からドン引きされている人物だ。
しかし、女性からは、『モモ姐さん』の愛称で呼ばれ、信頼厚いオカマだ。
女心を分かってくれる上に、柄の悪い男に絡まれた時は、すぐに助けてくれる。
私もよくお世話になっている。
何より、約束や秘密を守ってくれる、とても律儀な人だ。
だから、女性から信頼厚いオカマなのだ。
「はい、これが今回の報酬よ〜」
そうやって渡された、金額は何と三十万円。
「こ、こんなに…」
「天音ちゃん、ジャックポットを当てたわね?」
「ええ、それはもう。」
笑いが止まらない。
こんな金額見たことない。
「良かったわね。でも、もうすぐ8時よ?」
「え!?」
「大丈夫なの?」
「ぜ、全然大丈夫じゃない!ありがとうございましたー!」
私は、走って家に帰った。
「た、ただいまー!!」
しかし、返事は帰ってこない。
「あれ?……………今日は遅くなる、か…」
スマホに届いていた、L○NEを見て、肩を竦める。
「今日も、の間違いでしょ、お母さん。」
私の頬を水が流れる。
その時、
「オイ!ババア!!」
ドアが無理矢理開けられる。
「あん?ど、どうした!?」
入って来たガラの悪い男が心配そうな声を上げる。
「お母さんは、今日も、遅いです…」
「そうか…また今度にするか…オイ嬢ちゃん。」
ガラの悪い男は帰る前に、
「これで、寿司でも注文しな。」
一万円札を渡して帰っていった。
私は、渡されたお札を見て呆然とした。
でも、すぐに我に返り、家の電話に向かった。
『はい、天狗寿司です。』
「ファミリーセット一つお願いします。場所は…」
私は、お寿司を注文した。
深夜
「ただいま〜」
一人の女性が帰ってくる。
机の上に置かれた食べかけのお寿司と茶封筒、手紙を見て、固まる。
そして、手紙を開く。
『お母さんへ
ダンジョンで成功する方法を手に入れました。
借金が返済できたら、私の稼ぎで高級ホテルで、高級なお寿司でも食べようね。
天音 』
茶封筒を開いて中を見てみると、一万円札が三十枚入っていた。
女性は、ぐっすり眠っている娘を見る。
大雨が降る中、冷たくなったお寿司を、雷が落ちぬよう静かに食べた。
皆さんのお母さんは、どんな人ですか?
どんな事を言われても、無償の愛を注いでくれるお母さんに、感謝を伝えることは大切なことですよ?